第九十八天 五神武ッ!真の宿命が今始まるッ!
「さぁさ、入っておくれ」
おキヨは竜牙たちを喜んで招きいれて、囲炉裏を囲んだ。
「皆さま、夕飯は?」
「いえ、わたしたちは下・・・」
「食べるッ!」
朝霧をさえぎって、明江が言った。
「え~ッ!」
「だって、お腹すいたもんッ!」
「若い子は元気だねぇ」
キヨはわらった。
「フン・・・なら、俺もいただくとするぜ」
「大聖天様も食べられるのですか?」
「まあ・・・な」
と、竜牙はなにか考えるようだった。
味噌汁と少しのごはんに菜っ葉がすぐに出てきた。
「肉や魚がなくて、ごめんなさいよ。自分の分しか用意していなかったからねぇ」
「いえいえ、十分すぎるほどですよ。ありがとうございます」
朝霧は頭を下げた。なぜか、朝霧や信の分まで用意されてしまった。
竜牙は味噌汁をすすった。
「懐かしいな。昔とちっとも変らねぇ味だぜ。見た目はだいぶ老けちまったみてぇだがな」
「竜牙は全く変わらないねぇ」
「ところで早速だが、アレはちゃんとしてあるんだろうな?」
「・・・ここに来たってことは、取りに来たんでしょ?」
キヨの顔が少し曇って、真剣だ
「ああ・・・ちょいと入り用でね」
「ちょっと待ってちょうだいね~。よっこらしょ」
キヨはゆっくりとした足取りで隣のふすまを開けた。衣装タンスがあるだけの和室で、床の間にもなにもなかった。
「ええっと、ここだ」
独り言を言いながら、押入れをひっかきまわして、大きな木箱を持ってきた。
「どうぞ」
と、キヨは手で箱のほこりを払った。
「悪いな」
竜牙は木箱を開けた。中には片刃の剣が入っていた。しかし、剣というには無骨で鍔がない。刃元周りは金の装飾がほどこされていて、中央に埋め込まれたジュエルから、金の針が放射状にのびている。刀身には、刃紋などもなく、ただ白く透き通ったものが、すぅっと台形にのびていた。
竜牙は柄と金の装飾の部分を大切にもって、もちあげた。
「わぁ、きれいッ!」
明江が透き通った白い刃に触れようとした。
「馬鹿野郎ッ!手が吹き飛ぶぞッ!」
明江はびびって、あわてて手をひっこめた。
「この刃はシャイニング・ザ・デス。死の閃光だ。触れるものをすべて消滅させる。こいつは神の造られし刀だ。絶対に触れるなよ。命が惜しいならな」
「神の刀・・・。まさかッ!」
信はハッとしたッ!
「フン・・・こいつが俺の五神武だ。名をクランツ・クレール」
「こ、これが・・・五神武ッ!」
信は感動した
「なんと・・・美しい」
朝霧もやはり、輝く白い刃に心惹かれてしまうのは、光が本能的に安らぎを与える存在であるからだろう。
「奥の部屋は空いてんのか?」
「昔のままですよ」
キヨはほほえんだ
「んなら、そこをちぃと借りるぜ」
竜牙は五神武を抱えると、立ち上がって、隣の間へと歩き出した
「竜牙、どこへ行くんです?」
「あん?ちょいと長めに眠るだけだ。誰も入るんじゃねぇ。いいな」
そういうと、木箱を持ってきた和室のさらに奥の部屋へこもった。
「あそこが竜牙の使ってた部屋だったんですよ」
「竜牙の部屋ッ!?竜牙と住んでたことがあるの?」
明江はおどろいた。
「住んでた・・・というより、泊めていたの方が正しいかねぇ」
「泊まっていたッ!?・・・あなた一体何者なんです?」
五神武を預かっていたのと言い、朝霧にはすべてがミステリアスッ!
「キヨですよ。ただのおばあさんッ♪」
と、少しいたずらっぽく言った。
竜牙は部屋の明かりもつけずに、かつての少しの間だけ借りた部屋を感じた。掃除は行き届いていて、そのまんま今に至るようだった。懐かしい匂いが、思い出の眠りを覚ますようである。しかし、今は昔に浸ってる場合じゃない。
部屋の中心にすわると、片手を柄、そして、もう片方をなんとッ!刃に置いたッ!!!
「くッ!」
竜牙は苦痛に声をあげた。手の薄皮が吹き飛んで、血がにじむかと思えば、血すら消滅させられている。
実体のない光の刃だから、そのまま手を深く入れれば、入れた分だけ消滅する。だがしかし、竜牙は光のパワーを手に集中させて、その実体のない光の刃に触れている。竜牙は刀の声を聞こうとしていた。また、刀に己を語ろうとしていた。
―――そして、刀と自分は一つになる・・・
五神武は聖光なる結晶体である。使用者の聖なる魂と、刀の聖なる鋼、その波長が合わさってこそ、十分な力を引き出すことができるッ!つまり、五神武の100%引き出すには、このような語り掛けが不可欠ッ!
もちろん、邪気をはらんだ者がそのようなことを行えば、五神武の聖なるパワーに頭を木っ端みじんに吹き飛ばされて死ぬ。
竜牙はつくのだ。長い眠りに・・・
さらなる強さを手に入れるため・・・




