第九十七天 満喫ッ!湖畔の都ッ!そして、約束の地へ・・・
特急から特急へのりついで、列車は山の中を走った。
もう5時間そこらも座っているから、さすがに体が痛かった。
それにしても、本当に山が近い。連なる緑の山が開けて、とつぜんその山の向こうに残雪の残る青い山が見えた時は、感動したッ!アルプスだッ!
「すごいッ!なんか、大きな氷があるみたいッ!」
明江は感動した。
青い山肌は空の色に透けるようで、残雪がつやつやした光沢に見えた。天然水のペットボトルの絵は嘘じゃなかったッ!
「日本にもこんなところがあるんですね」
「あん?信よ、てめぇも初めてか」
「はい。生まれてこの方、地元から出たことはほとんどありませんから」
と、信は遠い山を見ていた。
「ところで、竜牙。目的地はまだ先なのですか?」
「もうすぐだぜ」
竜牙の言う通り、それから30分ほどで駅についた。
湖畔の小さな町だ。
「朝霧~ッ!おなかすいたぁ~」
「そうですね。竜牙、なにか食べましょう」
「あん?まだまだここから歩くぜ」
「え~ッ!無理~ッ!竜牙一人で先行っててよッ!」
「まったく・・・この人は・・・」
信は明江のわがままにうんざりするばかりだ
「信よ。てめぇは腹減ってねぇのか?」
「はい。正直、食があまり喉を通らないもので・・・」
信はうつむいた。弱っていることを隠さない、正直者だったッ!
「フン・・・なら、決まりだ」
竜牙たちは、駅前の店にがらりと入ったッ!
「・・・らっしゃい」
中年の店主が不愛想だ。この不器用さが、いかにも職人っぽいッ!
席に案内されるとかもなく、適当な4人掛けにすわった。
「食が通らないという話から、どうしてこうなるんです?」
「あん?てめぇのためじゃねぇよ。てめぇの体のためだッ!俺は、みそ天丼大盛りでいくぜッ!」
「わたしは、十割そばッ!」
明江も遅れじと手をあげたッ!
「では、わたしは・・・ローメンを」
「なにッ!?ロマンあふれるグルメで攻めてきやがったな」
「フフフ・・・信さんはどうしますか?」
「では、わたしはそばで・・・」
注文を待っている間、ぞろぞろと客が入ってきた。
このあたりは観光客にプラス、ハイキングも多くて、ダブルでおいしいのだろうッ!
並木の道に夕日がさして、陰影が美しい。
湖畔の舗装された道はまるで山奥のリゾートだ
しかし、この湖の吸い込まれるような水鏡は、まさに純粋なる神器を想像させた。それは、ともすれば聖にも魔にも転ぶ、怪しき反射を水面に宿しているようだッ!
「なんか、旅行に来たみたいだね」
明江が言った。
「遊びにきたわけじゃねぇんだ。気をぬくんじゃねぇ」
「・・・ごめんなさい」
「フフフ。・・・でも、気持ちはわかりますよ。ジョギングしてるおじさんなんか見てると、のどかで自分たちの状況を忘れてしまいますね」
「でしょッ!朝霧、わかってるぅ~ッ!」
「なんなら、てめぇら湖一周走って来たっていいんだぜ?」
竜牙がいじわるなスマイルだッ!
湖から離れて、今度は山の中を歩いた。
明江の不満が続出した。ここからは本当に森の中で、クマなんざよゆうで出てきそうな場所だ。オレンジの湖面は小さくなって、それでも奥へ奥へと進んだ。もはや獣道で、私服で来るような場所じゃないッ!!!
だがしかしッ!竜牙一行はひた進むッ!そして、日はとっぷりと暮れて、空が藍に染まったころ、草原の広場に出た。黄色い花の咲き乱れるのが美しいッ!
「お花畑・・・」
と、明江はへとへとながらも、癒されていたようだ。しかし、竜牙はその先の茅葺小屋を見ていた。
「誰?」
小屋からしわがれた声がした。竜牙たちに気づいたようだった。
まだ10メートルくらい離れているのに、只者ではないッ!
「フン・・・俺だ」
竜牙は親しげに言った。それはなつかしさとやさしさのこもった。今までに聞いたことのないやわらぎだった。
小屋の引き戸がバタンと強烈だッ!
背の曲がった老婆が姿を現したッ!
「久しぶりだな。おキヨ」
「・・・おかえりなさいッ!・・・竜牙」
キヨは目に涙を浮かべて、実に感動的だったッ!!




