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第九十四天 光速の内に

―――・・・長い


―――長すぎる・・・


―――・・・一秒が・・・一分だぜ


 竜牙はやってくる奴らを刹那の斬撃で斬り伏せていた。血の出ない静かなる無双ッ!

 早すぎる攻撃は血が出ない。斬られどころによっては、真っ二つにされてるのに気づかなくて、元気に刀をふりまわしてるのまでいる。

 この不気味な無臭の戦いは、朝霧をだまらせたッ!いや、やがてそれは感動へ・・・

「う・・・美しい」

 朝霧は口に出てしまった。そして、本当のナチュラルにして野生の大聖天の力の強大さに、自分の無力さ、いやっ!なんだか負けを認めざるを得なくて、くやしい


 竜牙は高速すぎて、周りがスローモーだったッ!そうして、斬って斬って斬りまくっているうちに、過去の幻影にとらわれていた。




「ショットガン・フレイムッ!!!」

 華やかなる金糸の服を身にまとった女は虎麗だッ!

 無数の突きが炎となって、相手に襲い掛かるッ!!!湖で魔を炎上させたあの技だッ!


 その相手はしかしッ!それほどの炎を前にしてもとてもクールだッ!


 背の高い、深いひさしの帽子をかぶった男のかすかにのぞくマスクはとてもスウィート


 その身のこなしは優しく、力を感じさせない。だがしかしッ!圧倒的な速力でその無数の炎をくぐり、虎麗の首筋に剣を突きつけたッ!


「ッ!?・・・参りました」

「いい腕だ。さすがは名門のご息女。しかし、技が軽いな」

 男は刀を収めた。虎麗も刀を収めて

「ご指南ありがとうございます。これからも精進致します。大聖天静空(セイクウ)様」

 と、虎麗は丁寧なおじぎだッ!

 男は竜牙の前の大聖天。静空だッ!

 取り囲む聖天たちの歓声があがった。


 ここは山奥の湖畔。魔との度重なる戦いは、いずれも聖天の勝利に終わり、優勢だった。だがしかしッ!魔の殲滅にはまだまだだ。

 そこで野営キャンプを張った聖天陣では、生ける伝説ともいえるほどの有名人ッ!大聖天自らが稽古をつけてやろうというイベントが開催されていたッ!


「次は、竜牙・・・だな」

 静空は円に囲む中を冷静に見渡した。ニヤリと笑う竜牙と目があった。その瞳はまさに狂気ッ!

 竜牙の声に、周囲はおどろいたッ!あの湖を走ってわたり、魔を斬りまくった男。そして、数々の戦で絶賛活躍中の彼は、皆々の注目の的だったッ!

 竜牙は円から出て、静空の前に立った。礼はない。

「あの田舎侍め・・・恥をかくといい」

 虎麗は汗をふきながら、気に入らない声だッ!

「・・・来い」


 竜牙の鞘から二つの火花が散ったッ!二刀だッ!その攻撃に容赦はちょっともなく、味方なんて意識はなかった。あるのは殺意のみにして、まさに狂気ッ!

「ハァッ!」

 瞬速の斬撃が鋭い斬光をまきちらしたッ!そこは静空、いきなりの攻撃でも受け止めるッ!

 だがしかしッ!竜牙の攻撃は休むことをしらないッ!その斬撃は二撃三撃とつみかさなって、すさまじい音が鳴り響いたッ!まるで打楽器でもたたいてるかのようなすさまじさだッ!


「おぉぉぉぉッ!なんだあいつの攻撃、まるで見えないッ!」

「大聖天様を押してるぞッ!」

「いや、大聖天様をよく見ろ。あんなわけわかんないスピードなのに、全部止めてやがる。この戦い・・・パネェぜッ!」


 周囲は感動した。

 そして、静空自身もこの攻撃のすさまじさにおどろいていた。


―――すさまじいスピードだ。攻撃だけなら、中・・・いや、大聖天クラスだろう


―――あの背中から立ち上る白い気は、聖なる気を光に変えたモノ・・・。あのまとった聖なる光がこのスーパースピードを可能にしているようだな


―――ならばッ!


 静空は超クールに、そのまるで無限刃のかまいたちをさばきながら、くるくると円陣を逃げ回っていたが、目を閉じ足を止めたッ!

「ハッ!あきらめて死ぬかッ!?」

 竜牙はまるで刃を止める気がない。殺す気だッ!だがしかし、静空はただ死を待っていたわけではない。第六感を働かせ、パワーの流れを正確に読み取っていたのだッ!

 竜牙の流れにのって、静空も動いたッ!

 そしてッ!

「うぉッ!」

 竜牙は刀を空振り、思い切りバランスを崩したッ!がら空きのわき腹に静空はカウンターのニーキックッ!

 竜牙はふっとばされたッ!完全に勝負あったッ!


 だがしかしッ!竜牙は吹っ飛ばされながらもすぐに体制を立て直した。

「ちッ!」

 と、また切りかかって行ったッ!

「おいッ!もう勝負あったろ!!」

 観客がやじったッ!

「ッ!!!勝負はついてねぇッ!どちらかが死ぬまでだぜッ!」

「なんだとッ!?」

 とつぜんの大聖天殺害宣言に、マジで周りはおどろいたッ!

「ゆるせん」

 と、虎麗は剣を抜こうとした。がッ!

「待てッ!これは俺の戦いぞッ!皆の衆は手を出すこと、まかりならんッ!!!」

 静空は竜牙の二刀の衝撃を受けながら、一喝したッ!みんなはびくっとして、手をおさめた。さすがは大聖天のよゆうとカリスマだッ!


 竜牙はあいかわらず、超速度の攻撃だッ!竜牙にはそれしかなかった。しかし、それが受けられる相手、そして受け流すことも出来る強大な相手の前ではもう通用しなかった。ふたたびパワームーブを完全におさえ、竜牙のバランスを崩すと、蹴飛ばしたッ!

 竜牙は体制を立て直そうとしたが、今度は絶対許さないッ!

 ぎゅんっと静空がせまり、首筋に剣を突きつけたッ!

「ぐぬッ!!?!!?!?」

 竜牙は静空の鋭く研ぎ澄まされた両眼に、気を抜かれたッ!

 あふれ出たッ!強烈な死の予感ッ!

 

「おまえの負けだ」

 静空の言葉は冷たく耳に刺さるようだッ!竜牙はへたりこんだ。

 うぉぉぉぉぉぉぉっと、見事な戦い・・・いや、暴走した竜牙を一瞬で制した静空の圧倒的な強さに感動したッ!


 静空はやわらかな顔にすぐもどっていた。ソフトな動きでゆっくりと刀を納めた。

「いい動きだ。力を一点に集中してみろ」

 殺害宣言など、なかったかのような優しいアドバイスだった


 大聖天の心はまさにホライズン・・・。


 竜牙は天の光を浴びたがごときおどろきに打ち震えたッ!

「いつまで座っている。さっさと立て」

「あん?言われなくてもそうするぜ」

 ハッと現実に目覚めて、竜牙は差し伸べられた虎麗の手を払いのけた。

「田舎侍にしては、なかなか良い出来じゃないか」

「ハッ!傷のなめ合いはごめんだぜ」

「なめる気はないが、手当してやろう」


「ちょっとすいません。あけてください。ごめんください」

 訓練場の円を出ると、聖天の群れをかきわけて、小さな少女が首を出した

「いたッ!竜牙、ごはんもってきたよ」

 少女は田舎娘らしい土に眠る原石のようなピュアなほほえみだッ!ボロ布をつぎはぎにした袋をパタパタさせて、ごはんをアピール。

「馬鹿野郎~。ここには来るなって言っただろうがッ!」

「だいじょぶだいじょぶッ!」

「おまえ・・・人間などと関わっているのかッ!?いったい何を考えているんだッ!」

 虎麗はすごくびっくりだッ!聖天と人間は根本的に違う。聖天にとって人間と交流と持つのは、あまりほめられた行為ではなかった。

 特に虎麗は名門ッ!人間の上に立つ存在である聖天が、人間を相手にするなどとは、あるまじき事だと思っていたッ!


「ごちゃごちゃうるせぇよ。じゃあな」

 竜牙はにらみつけながら少女の肩を抱きよせると、聖天の森へと消えていった。


結局、翌日になってしまった

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