第九十一天 信の帰還ッ!暴かれる真っ赤な嘘ッ!
信が白桜寺につくころには、もう夜も明けそうだった。
裏門に樹美が立っていて、信の帰宅にぱぁっと明るくなった。
「おかえりなさいませッ!」
と喜びマックスで90度のお辞儀だった
「あぁ・・・」
信は覇気がなかった。
「大丈夫ですか?だいぶお疲れのようですけれど」
「はい、少し」
樹美は信の隣によりそって、敷居をまたいだ。
「お帰りになれたという事は、信さん、御聖院に・・・ッ!?」
「いや」
「えッ!?」
「逃げてきた。相手が強すぎたんだ」
「そんな・・・」
樹美はおどろいて、立ち尽くした。信はかまわず一人歩いた
「すぐに旅の準備をしてくれ。それと、母を呼んでほしい」
居間で一息つく間もなく、トミ子は障子をあけて入ってきた。
通夜はまだ続いていて、少しやつれているようだった。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
「母上、申し訳ありません。わたしは父の悲願をかなえることができませんでした」
落ち込んだ声で、土下座した
「・・・どういう事なの?ケガはなかった?」
トミ子も少し落ち着かないムードになったッ!
トミ子は、御聖院のルールについては、父からよく聞かされて知っていた。樹美から逃げてきたと、伝えられたが、どうもおかしな話だ。もしかして、新ルールッ!?
「御聖院の方々はあまりにも強かった。わたしは恐れをなして、降参をしたのです」
「降参?」
「はい。わたしは降参したことによって、御聖院から狙われることになってしまいました。母上、この場にいては危険です。旅の支度をしてください」
「嘘おっしゃい」
「ッ!?」
トミ子にあっさりと見破られて、信はビビった。母上は、父が御聖院に信を推薦したことも、どころか御聖院自体もよく知らないと思い込んでいたのだッ!
「御聖院については、檄からよく聞かされています。降参なんてルールはなかったはずよ。それに、わたしたちの息子は、敵に恐れをなして降参するような子じゃありません」
トミ子はきっぱりと言った。確信はなかったし、状況もまったく霧の中だが、断言できるのは長年のよゆうというものだッ!
信は感動とびっくりで胸いっぱいで、動けなくなった。
「本当のことを話して。なにがあったの?」
もはや信は話さざるを得なかった。信は、事の顛末を話した。
「フン・・・そういう事かい」
襖が開いて、竜牙達が入ってきた。
「ッ!?起きてたんですか?」
「あいにく俺の耳は24時間営業の地獄耳だぜ?」
「聖天でありながら、地獄ですか」
朝霧はあきれたスマイル
「どうして、そんなことをしたの?」
トミ子は困った
「・・・」
「今からでもいいから、謝ってきなさい。菓子折りを準備するわ」
「どこへ謝りに行けばいいんです?それにそんな話が通じる相手じゃありませんよ。母上」
「都のすべてを敵に回して、生きていけるわけないでしょう。この寺だって、もうやっていけないわ」
信はびくりと体をふるわせた。
御聖院を意地で拒んだ帰り道に気づいた心配はそれだった。信を殺すために手段を択ばないとなれば、寺ももうやってはいけない。つまりは家族や寺に関わる者を露頭に迷わせてしまうことになる。
周りを見れば、それは完全な間違いであった。しかし、自分自身にしたがうならば、間違いではなかった。
どのみち、もう後戻りはできない。それに戻る気も信にはなかった。
もう自分自身のために生きると決めてしまったのだから・・・。
「母上ッ!それでもわたしはッ!謝る気は・・・ありませんッ!」
信はすべてをふりきるようだった
「どうして?」
「それは、なんとも言えません。まだ整理がつかないんです。ですが、間違ったことをしたとは思っていません」
「よくわからないわ」
「すいません」
信は、畳に頭を押し付けた。必死の謝罪のポーズッ!しんと静まりかえっていたが、トミ子の目には、父の姿が重なっていた。
「・・・出る支度をしましょう」
「母上ッ!」
信は顔をあげた。
「もう決めてしまったことなのだから、仕方ないわ。でも、御聖院に入る夢は父の悲願だった事だけは忘れないでちょうだい」
トミ子の声は力強くあったが、少しがっかりしたようでもあった。
信は理解されるとは思っていなかったが、やはり心底から理解されていない現実は苦しかった。
トミ子が立ち、忙しく準備が始まった。
「ちッ!」
竜牙はすごく苦い顔をした
「どうしましたか?」
「あん?不愉快になったんだよ」
竜牙は部屋に戻って、膨らんだ布団を足で転がした
「おいッ!起きろッ!出かけるぞ!」
「うぅうん・・・」
明江のうめきが布団からにじんだ




