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第八十八天 最後の晩餐ッ!?屈強なる白き薔薇ッ!!

 びゅっひゅっ

 月夜の照らす裏庭で、信は無心にすぶりをしていた。

 正確な動作から来る、正確な衝撃ッ!まじめな信のすぶりは、間違いなく確かな力だった。

 白桜寺剣術の型は、その秘訣に、湖面に舞い落ちる桜花のごとくとある。

 信のそれはまさに秘訣通り、静かに桜がぱらつくようだ。

 彼の愛刀、北王子流水が月夜にまたたく桃色の刃はみやびやかで、どこか高貴な舞踊っぽかった


「よし・・・」

 信は一区切りつけると、廊下に置いておいたのタオルで首のあたりをふいた

 すごい汗であるッ!

「おつかれさまです。信さん」

 樹美が角から、お茶をもってくるという、びっくりタイミング

 夜はもう深すぎて、日にちが変わっていた。

 明江はもうとっくに飽きて寝た。この成平家にはテレビといったくだらない娯楽はない。

 竜牙達も静かだが、おそらく気配に気づいていながら、狸ごっこだった。


 信は、御聖院と果し合いがあることをまったく伝えなかった。

 竜牙達、聖天には関係のない人間のたわむれに過ぎなかったし、御聖院の座をめぐって、人間と人間が殺し合いをするのである。明江に言えば、また反対して不愉快な思いをするのは定められた未来だった。


「ありがとう」

 信は刀を柱にたてかけて、茶をすすった。

「行かれるのですか?」

「はい」

「どうか、生きて帰ってきてください」

「必ず・・・」

 と、信は目を合わせられないッ!御聖院は都最強の戦闘部隊ッ!!!生易しい返事をできるほど甘くはないはずだ


「本当はもっと早くにこっそり出ていくつもりでした。ただ、あなたに一言礼を述べたくてね」

「礼だなんてッ!」

「葬式の手配、本当に助かりました。そして・・・金若の件」

「・・・。金若ッ?はて?なんのことやら」

「しらをきっても無駄です。いくらダメージを負っていたとは言え、金若ともあろう魔があのタイミングでコケそうになるのはおかしい。あれは、根永寺流が一つ、根くびきッ!」


 信が激闘の末、金若に逃げられそうになっている時にチャンスを作ったのは、樹美が陰ながらに放った技に違いないという衝撃の真実だッ!信の超推理は敗北という言葉を知らないッ!!!


 根永流の根くびきは、なにもない地面に固い根を生み出す小技だッ!相手は転ぶ


 樹美は息をひとつつくと、

「やっぱり信さんは、なんでもお見通しやすなぁ」

「あなたのおかげで、金若を倒せました。ありがとう」

 信は立ち上がって、頭を下げた。そして、刀を取り、バササっと月夜にコートがはためいた

「朝食をご用意して、待ってます」

 信の去る背中に、樹美の言葉はすがりつくようだった

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 信は闇に消えた




 信の寺は黒い森の山奥で、そこから果し合い状にある北山へはすぐだった。

 川沿いの公道にでて、奥へと山を分け入っていった。少し広まった河原に黒い人影があった。

 信をかなり遠くから、見つけていて、ずっと頭がこっちを向いていて気持ち悪い


 信が河原に降り立つのを見て、

「ホッホッホ!そなたが白桜寺が新当主、成平 信かな?」

「・・・いかにも」

 信はまじめな顔だ。闇から姿を現したのは、小柄なジジイだった。何歳だかわからない。ただ、ちょっと頭がでかくて、まるで宇宙人ッ!だがしかし、ずっと見つめていた頭はまぎれもなくこのお方ッ!馬鹿にできない強さを持っているに違いない

「ワシは御聖院管理人、二階堂光良じゃ」

「二階堂ッ!?まさか・・・」

「ホッホッホ、その通り二階堂剣吾の・・・祖父じゃ」

「そ、祖父ッ!?・・・馬鹿なッ!江戸時代の話だぞッ!」

 江戸時代の時点で、祖父とか年齢がおかしいッ!こいつ只者ではないッ!!!

「細かいことは良かろう。さぁ、えらべぃ」

「選ぶ?」

「なんじゃ?知らんのか?御聖院の果し合いは、一から五、死合う相手を選ぶが掟・・・。もっとも五人全員指名してもかまわんのじゃがな」

 光良は怪しく笑った。それはそれはとてもとてもおぞましいッ!

 笑いと同時に、杉がざわついた。杉はまっすぐするどく天を衝いていて、すっかり囲んでいる。まるで、巨大な槍の監獄に閉じ込められているようだ


 だがしかしッ!虚に保った信は、クールに冷静に考えた

「では・・・一を」

「ホッホッホ。一を選ぶとは豪気な」

 光良はわらった。たいそう気に入ったらしい。

 もっともこの殺劇の場で萎縮せずに、一番を選ぶのは難しいのも無理はない

「一英ッ!一英よッ!ここにおいでませりッ!!!」

 光良の声にこたえ、杉がざわついたッ!かと思うと、いつの間にかッ!黒い人影が河原にいたッ!

「・・・こちらに」

 闇から現れたるは、漆黒のシングレットをまとった屈強な肉体だった。その猛々しさは見るだけで威圧感があり、腿と信の腰の太さが同じくらいだった。まさに巨人ッ!

 だがしかしッ!顔は英国紳士のような気品を備えた七三の男で、一厘の白バラを口にくわえていた。

「では、戦えぃッ!勝利者が御聖院の一人ぞッ!」

 と、光良は言うと闇に呑まれた。この闇は濃く霧のようで、周りはなにも見えなくなった。

 いや、見えないのは、この一英と名乗る男のプレッシャーから来る者なのかもしれなかったッ!目が離せないッ!!

「刀を抜きたまえ」

 一英はおだやかにして、やわらかである

「ええ」

「ずいぶんと痩せた体だな。そんな肉体で大丈夫か?」

「問題ありませんよ。さぁ、始めましょう」

 信は刀をかまえたッ!正眼にかまえて、すごくオーソドックスッ!

「ウム・・・」

 一英はくわえていた白バラを手にとると、両手にかまえた。そしてッ!!!


「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんッッッッ!!!!」


 刹那ッ!バラが見る見るうちに巨大化したッ!いや、バラじゃないッ!これは巨大なハンマーだッ!!!

 白バラは一英の武器だったのだッ!とげとげは痛々しく、びっしりとついている。

 それを一英は気にせずにつかんだッ!びしゅうっ血がにじんだッ!

 あまりにも痛そうなそれに、信はビビったッ!


「フシュウウウウ・・・プレッシャーロイヤルローズッ!わたしの愛する槌よッ!!」

 巨大なロイヤルローズは、いつの間にか、白から赤に染まっていたッ!一英の血でも吸ったというのか。もうなにがなんだかわからないッ!

 ロイヤルローズをかまえた途端に、聖なるパワーがあふれだしたッ!!!周りの林がその圧倒的な風に吹きとばされそうだッ!

「さあッ!かかってきなさいッ!白桜寺の若人よッ!!」

「・・・参ります」


―――信は大地を駆けだしたッ!!!


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