第八十五天 商売繁盛ッ!八つ橋パフェを食べに行くッ!
通夜は長く。
竜牙達が眠っている間も、障子がぼんぼりみたいだった。
しかし、長年、信の父によって生まれたその聖必な空間、ちょっとのゆがみもよどみもかけらもなく、魔の侵入はまったく許されないッ!
「ふぁ~、ひさしぶりによく眠れたぜ」
竜牙は朝食であくびをした。
ご飯に味噌汁、漬物に、山菜のおひたし。日本の朝である
茶碗や箸の音が、畳の一室にただただ響いた。にぎやかさはないッ!黙って食うのだッ!
竜牙は十杯おかわりして、だんとつのトップ。信と明江は二杯で同点二位だ
「ねぇね、朝霧。ちょっとお出かけしよう?」
朝食後の玉露くつろぎタイムで、明江が朝霧にすりよった
「え?あ、わたしはかまいませんが」
朝霧は戸惑いながら、竜牙を見た。
大聖天の命令があるかもしれないッ!しかし
「あん?」
と、竜牙は何か用かよと言いたげだ
「信さん、なにかお手伝いすることはありますか?」
「とんでもないッ!聖天様にお手伝いだなんて、あるまじき行為です。これは我々人間の行事。わたしの身勝手で旅を中断していただいているだけでも、おそれ多いことですよ」
「ハッ!居心地がいいから、いるだけだぜ」
「それはそれで、ありがたき幸せです」
信は深く頭をさげた
「竜牙はいきます?」
「誘われたのは、てめぇだろうが」
「朝霧、いこ!いこ!」
明江が服をひっぱったッ!
「ああ、はいはい」
明江のショッピングは今日も変わらず、激しい。
売ってるものはそんなに変わってないはずなのに、行くデパートも変わってないはずなのに、なぜかしら、また袋が増えまくっていくッ!
朝霧は召使のようについてまわった。優しいスマイルで試着をときに褒めたりもした。なかなかのジェントルメンである。
今回はデパート街から川を渡って、観光客でめちゃ混みの通り沿いの喫茶店に入った。明江が店の看板のパフェに魅了されたのであったッ!!!
明江は一番人気ッ!八つ橋パフェを頼み、朝霧はエレガントにフレンチトーストを頼んだ。
「えっと・・・八つ橋ってどれ?とにかく、おいし~!!!!」
明江は八つ橋を知らない。だが、がっついていた
「どれですかね・・・」
朝霧も八つ橋がどこに入ってるかわからない。それくらい超ボリュームで色とりどりのスイーツの庭園だったッ!
「今日は珍しいんだね」
「なにが?」
「いつも竜牙を、誘ってるじゃありませんか」
朝霧はティーを片手にほほえみスマイル
「あ~ッ!だって、竜牙相手してくんないし、つまんないんだもん」
「フフフ・・・そうでしたか」
「竜牙ってあんなひねくれた性格して、いつもなに考えてんだろ?」
「さぁ・・・。大聖天様の考えは、わたしのおよぶところではありませんから」
「だいたい身勝手よッ!わたしたちを引っ張りまわして」
と、明江は食後のサービスのお茶を手にして、迫るようである
「いやいや、ひっぱりまわされてるとは、思ってませんよ。わたしは大聖天様にお仕えするのが使命ですから」
「ふ~ん。朝霧って竜牙とどれくらいの付き合いなの?」
朝霧はおもいめぐらせたッ!
「だいたい、76年くらいかな」
「長いッ!」
「聖天には大した年月じゃありませんよ」
「昔からああなの?」
「・・・そうですねぇ。竜牙本人に言わせると、これでも丸くなったんだそうですよ」
「え~ッ!あれ以上ってどうなっちゃうのよ。友達なんか一人もできなさそう」
「こら、めったな事を言うもんじゃありませんよ」
朝霧はあせって、周りを見渡した。竜牙はいないけど、なんだか怖い
「わたし、竜牙より朝霧の方が、大聖天?だっけ?に向いていると思う。そう思わない?」
明江はほほえみを浮かべて、のりだした。その瞳には乙女の純粋なる輝きがあって、朝霧は目がくらんだ
「いやいや、なんてことを言うんですか。一秒たりとて思ったことはありません。わたしなんて、ただの血塗られた戦士にすぎませんからね」
「血塗られた戦士?」
「そう。ただひたすら、魔を切って生きてきただけです。100年ほどね」
「100年ッ!」
明江はびっくりした。
「むなしくならない?」
「むなしく?フム・・・むなしいというものが、どういうものかわたしにはよくわかりません。ただ理由はどうあれ、使命ですから」
「ふ~ん」
「あッ!でも、最近は楽しいですよ。明江さんが来てから、パッと明るくなったような気がします」
「本当?」
暗かった明江は急に晴れてキラキラとまぶしい
「本当ですよ。明江さんには癒されてます」
「わたし・・・役に立ててるんだ」
朝霧はほほ笑んだ。奥まった席から外をのぞくと、商店街の屋根が斜めにオレンジだった。
「良かった。本当にうれしい。でも、竜牙はどう思ってるのかな。わたし、ひどいこと言っちゃったし・・・」
「ん?・・・ひどいこと?」
「ううん、大したことじゃないの。そろそろ帰ろッ!」
と、明江は明るくなった
「ええ」
「お会計は、朝霧ねッ!」
「ええッ!?」
伝票をおしつけられて、朝霧は困った顔をしたのだった。




