第七十九天 孤独な戦士達ッ!咎められる明江の泥酔ッ!
「大丈夫ですか?竜牙ッ!」
朝霧と信が駈けよったッ!
「フン・・・今に始まったことじゃねぇよ・・・ぐぉッ!」
竜牙は強がってみせたが、痛みで体がよろけたッ!それをさっと、信がうまいこと支えたッ!
「ひどい血だッ!肉がえぐれています。大聖天様、これは医者にみてもらったほうが・・・」
信がみけんをきゅっとさせた
「あん?どのツラさげてみてもらうつもりだ?俺たち聖天です。怪我をみてくださいってか?」
「信さん。わたしたちは聖天。人間とは体のつくりも違います」
「しかし、それじゃあッ!」
「大丈夫だ。こんくらいどうってことねぇよ」
竜牙は信を押しのけて、歩き出した。そのよろよろとした感じは、信をめちゃくちゃ不安にさせた。
「あなたこそ、大丈夫なのですか?」
朝霧が聞いた。両腕がだらんとなっている。
「わたしは大丈夫です」
わずかだが、腕が動くようになってきた。感覚が戻ってきたようだ。しかし、信の思いは、竜牙にあった。
―――孤高の・・・戦士・・・
聖天とは、誰の救いも求められない孤独な戦士なのだと、信はびびるのであったッ!
「ごめんなさい・・・」
明江はテーブルに額をつけんばかりだった。
目の前には水の入ったコップがある。チュンチュンと小鳥が鳴いて、のどかな朝だが、その静けさがなんだか今は気まずいモーニングだ。
明江の正面には朝霧が腕を組んで、やれやれといった感じだ
信は武器の手入れをしていて、竜牙は窓枠に体を預けて、外を見ていた。ただよう邪臭はジュースに混入されていただけあって、まだまだ薄まる気配はなかった。しかし、これ以上広まることはないだろう。
「女の子が、夜にほっつき歩いて酒を飲むなんて、さすがにほめられた事ではありませんよ」
「ごめんなさい。朝霧」
「未成年が酒を飲む事自体が間違っています」
信は、刀を磨きながら言った。意識は刀へ向いていて、集中はとぎれないッ!さすがッ!
明江は泣き出した。
「うわ~ん!ごめんなさいッ!わたし辛かったのッ!ここにいるのも、神主さんが死んじゃったことも、なにもかもが辛かったのッ!」
目の前の朝霧は困惑した。信もさすがにチラッと見てしまった
この旅のけわしさは、並みの女子高生に耐えられるものではないのは、常識的に明らかだった。これはどう見ても限界の前の限界がきてしまったように思えた。
「明江さん、やはりこれ以上ついてこない方がいい」
信は明江を見て、きっぱり言った。それは心配した愛のこもった言い方だった。
「イヤよッ!わたしはイヤッ!竜牙、ごめんなさいッ!ほんとうにごめんなさいッ!もうこんな事しません。ちゃんと言うこと聞いて、おとなしくしてるからッ!」
明江は涙をまきちらして、まるで子供の駄々っ子だッ!!!
その幼さは彼女の顔立ちにベストマッチで、可愛くみえる。
「あのね・・・。外に出たらね、いつもどおりの町で、いつもどおりの人だったから、なんだかぼんやりしちゃったの。よくわからなくなっちゃったの」
明江は竜牙に言い訳しまくった。しかし、竜牙は外を眺めているだけだった。
「まあ、あやまちは誰にでもあることですからね。明江さん、これからは良い子にするんだね?」
「・・・うん」
明江は涙がナイヤガラのまま、コップを両手でよせて、飲んだ姿が小さい
「竜牙、どうです?明江さん、反省しているようですし、許してあげては?」
朝霧は竜牙をふりかえった
しばらく竜牙はだまってたが、返事待ちなのがわかって、だるそうに口をひらいた
「・・・許すもなにも、俺は前から変わってねぇよ。てめぇの好きにすりゃいい。それだけだ」
明江の目が輝いた
「だそうです。良かったですね」
朝霧の微笑みは、若葉のようなみずみずしさだ
―――刹那ッ!!!
コンコンとドアがノックされたッ!
「何奴ッ!!」
信が立ち上がった。邪臭はしないッ!!!いや、逆に懐かしい系ッ!
「鍵はねぇよ。入れ」
竜牙はのんきである。まるで入ってくる奴が誰か知ってるみたいだ
「失礼します」
と、ドアを開けて、普通に入ってきたのは、ちょっと清楚な感じの女の子だッ!
「樹美ッ!」
信がびっくりこきまくりだッ!
「あらあら、お知り合いですか?」
「わたしのイトコですッ!」
「可愛い・・・」
明江も見つめちゃった。純粋な感じをうけるのは、やはり聖なる場所に住むものだからだろうか。清流に住まうウンディーネがごときやわらかさを含んだおしとやかさであるッ!ちぃとばかしきょどった、田舎くささはご愛嬌だ。
「信さんにしては、可愛すぎますね」
朝霧も意外すぎて、遠慮がないッ!しかし、信はそんなことどうでもいいという風に
「どうしてこんなところへッ!!!」
「白桜寺からの命です」
「白桜寺からッ!?」
「白桜寺の当主、成平 檄・・・。あなたのお父上が亡くなられました」
「なッ!!!!・・・・・・・・・なんだってぇッ!!!!」
信はめちゃくちゃビビッたッ!!!!!




