第六十八天 神主の息子が仲間入り希望
かなり早い時間に拝殿では、供養の詞があげられた。
かんたんにつくった棺に、神主の遺体はおさめられた。
本来であれば、盛大に行うべきものだけど、森を出ればどんなヤバいやつが牙をむいてくるかわからない。だから、まだ結界の効力が残るこの場所でやることになったわけだ
朝霧と信は、二時間も寝ないうちにおきだして、準備をしてそこに並んで参列していた。
明江はまだ布団の中だった。起こそうかという話にはなったが、昨日のことで疲れてるだろうからとそっとしておいた。
「それにしても、竜牙はどこにいってしまったのでしょう?」
と朝霧はなんとなく言った。答えは期待してない
「さぁ、おきたときにはでていってましたね」
信も答えた。期待してない通りの答えだ
あてもなく二人は、祭事の進行を見ていた。彼らは戦の徒である。祭事はよくわからないし、つまらない。
なんだかむずかしい感じに供養は終わって、スーツの若者が二人のところへ走ってきた
「わざわざ出席いただいてありがとうございました」
「いえ・・・。もともとはわれわれがふりまいたこと。うらまれても文句は言えません」
信は、深々と頭をさげた。
「しかし、それは父が危険の承知の上でそうしたと聞きました。あなた方は悪くありません。それに父も悔いはないでしょう」
と若者は神主の息子のようだった
朝霧と信はすいませんってなるばかりだった。
「ところで、話は変わりますが、このあとどのようにすればよろしいのでしょうか?」
「どのようにと言いますと?」
「わたしはご覧の通り、神に仕える者ではありません」
と、スーツを見せ付けた。よれよれのくたくたである
「都内のサラリーマンですね」
「はい」
「フム・・・」
「わたしは継がないと決めた時点で、完璧に部外者なんですけど、ずっと昔に父から話されたことがありまして、なんでも力を受け継がないといけないとか?」
「そうですね。ここは強力なパワーを持っています。この力をコントロールするのが神主の役目なのです。その神主がいなくなられてしまったことで、パワーが弱まってきている」
「パワー・・・ですか?」
「パワー・・・です」
「それはわたしがひきつぐことができるのですか?」
「残念ながら、あなたからは聖なるパワーを感じない」
信が首をふった。
「そうですか・・・」
「気にすることはありませんよ。パワーが弱まったところであなたには関係のないことです。これはわたしたちの戦い」
朝霧は涼しげである
「しかし、このままでは・・・」
「心配ありません。いずれ別の方がここにこられて、パワーをコントロール再開するでしょう」
「いえ、そうではなく・・・。わたしは・・・いえ、わたしがッ!父の意思をつぎたいのですッ!」
信を見た息子の目は輝いていたッ!さすがは神主の息子ッ!俗人になったとは言え、聖なる素質を宿しているッ!
それは、二人を感動させたッ!
「そう簡単にできることではありません。あなたにはパワーもなければ、修行もつんでいない。聖なる道は険しくつまらないイバラの道」
信はクールにきびしいッ!
息子はマジで落ちこんだ
「わたしには、あなたがパワーをコントロールできるかもわかりません。未来のことはわたしにもわかりませんからね。あなたはサラリーマンをやっている。今の生き方を変えてまでつぐ必要があるのでしょうか?」
信はさらに追い討ちッ!そして、頭をさげて、歩きだした。朝霧も歩いた。
息子は絶望した。
「・・・まあ、わたしはこの世界の右も左もわかりませんが、ただひとつわかるのは、なにごとも遅すぎることはない。それだけです」
―――信は厳しいッ!だが、聖道とはそれだけむくわれぬ道なのであるッ!
信は、その中のほんのひとにぎりの達人なのであった・・・。




