第六十四天 なめられ信
「すいません。こんな夜中だというのに、歩かせてしまって・・・。どうしてもあなたにお話ししたいことがありましてね」
信は、砂利道の参道をさくさくと暗い森をなんとなく見つめながら言った。
「あ、わたしのことではありません。さきほどのことは、とくになんとも思ってはいません。自分の身を自分で守ることもできなければ、どのみちいつかは死ぬだけです」
森はしんとして息をしていないようである。ただ、砂利のやわからな音だけがぬけがらみたいにひびいてた。
「何の話なの?」
明江がいった。
「・・・まあ、前々から思っていたことではあるのですが、あなたはもう我々と旅をしない方がいい。おうちに帰って、われわれのことを忘れた方がいい」
「イヤよッ!どうして、帰らなくちゃいけないのよ」
これだけいろいろあったのに、この明江のおそいかかるようなのが、信は想定外。
「・・・このままでは、いつか大聖天様を傷つけてしまう」
「傷つける?わたしが?」
「あなたと我々は違いすぎる。今日も、うつのをためらった。あなたは殺すのを恐れている」
「当たり前でしょ。同じ人間なのよ?!」
明江はもう不愉快だ
「そうですね。人が人をさばくというのは、大変重いことです」
「信だって、人を殺したのはついこの間のことでしょ。知った風に言わないでよ」
拝殿の横を曲がって、さくさくと二人は黙った。
信は少しムッとしたのを、冷たい夜風に冷ましていた。
「それに・・・竜牙だって、わたしたちを傷つけるかもしれないじゃない」
明江はぼそっと言った
「傷つける?」
「あの女の人・・・魔でしょ?」
明江はじっと信を見つめた。なにかを探る感じ
「それはわたしにはわかりません」
「まちがいないわ。黒いモヤだって出てたんだから」
「黒いモヤが出てたから、魔だとは限らない」
「どうかな?」
「・・・もう戻りましょう」
信は参道を外れて歩き出した。
「ま・・・あなたはしょせん、ただの一般人。どう思おうと自由です。ですが、これは戦いです。無慈悲な戦争。あなたの迷いは、いつか悲劇を生む」
「・・・」
「わたしは大聖天様に仕える身。大聖天様が許す限り、あなたの好きにしたらいい。ただ、わたしはもうあなたを仲間とは思わない」
森の宵闇はすでに頂点に達しているようだったが、さらに闇が濃くなったような気がしたッ!
ちょっと修正




