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第百七十五天 勝利宣言ッ!行き過ぎた余興ッ!!!

「ハッ!処刑だと?処刑されるのは貴様の方だ」

 黒王は笑った。

「いいや。さっきも言っただろう?俺様はもう必殺技を打てる状況になったと。そして、これは絶対に当たる」

「ホゥ・・・」

「おまえにも血は流れているだろう。そして、俺様は大気を操れる」

「ッ!?!?」

 黒王はハッとしたッ!

「気づいたか。血管に200CC空気を流し込めば、流れは滞り、血が固まって死ぬ。おまえは無数の傷を作った。空気の流入を防ぐのは不可能だ。この大気中にいる以上、俺様の肌と触れているも同然。俺様の風からは逃れられない」


「ならば、我は闇を纏おう」

 黒王はすぐさま、暗黒パワーを燃やし、通気すら許さぬほどに凝縮ッ!そして、全身を包み込んだッ!

 黒い人型の塊となった黒王がそこにいたッ!

「馬鹿がッ!窒息死するぞッ!」

「ハッ!貴様ごとき、窒息する前に殺せるわッ!埋もれよッ!ブラッククエイクッ!!!」

 黒い人型が、深黒のオーラを右腕にこめ、たたきつけるッ!まるで、金明のようだッ!だがしかしッ!金明のそれとはスケールが違ったッ!!!

 大きな亀裂が走り、そこから漏れる黒い光は、巨大な柱となって空へと持ち上がったッ!それは土ではないッ!闇の黒柱だッ!呑み込まれれば、暗黒物質によって、たちまちに溶かされてしまうだろうッ!


「最後の悪あがきかよッ!っとッ!」

 ボルドウィンは迫り立つ黒い柱を華麗に避けてみせるッ!ボルドウィンは、スピードにおいても黒王とは天と地の差をつけられている。しかし、風の流れを読み、黒王の気を読み、的確に次の攻撃を予測する事で、回避を可能にしているのだったッ!これぞ、長年、聖天として戦ってきた経験の賜物であるッ!!!


 黒王の柱を見事避けきり、ボルドウィンは目の前に立った。

 ブラッククエイクの柱は高層ビルのようにそびえたって、二人を囲んでいた。ボルドウィンはそれを見回して、よくもまあこれほどと、内心恐れるのだった。


 だがしかしッ!避けきったボルドウィンは、圧倒的に有利ッ!!!


「ハァ・・・ハァ・・・」

 黒王は、ブラッククエイクを呼吸のできない状態で使ったせいか、酸欠気味であった。

「顔色が悪いぜ?いっそ諦めて、そのオーラ解いちまったらどうだい?」

 ボルドウィンはよゆうの表情で言う。黒王はうつむいて苦しそうに見えたッ!


―――だがしかしッ!それは違ったッ!!!


 顔を上げた黒王の表情は勝ち誇り、涼やかに澄ましていたッ!!!

「ハッハッハ!たわけがッ!先ほどの貴様の言葉そっくりそのまま返してやろう。この勝負、我の勝ちだ」

 突然の勝利宣言に、ボルドウィンは一瞬言葉を失った。

「・・・やれやれ、そういうハッタリはあまり好きじゃないな。そんなゼエゼエ息をして、おまえが勝つだと?」

「貴様、大聖天静空を知っているか?」

「・・・そんな奴もいたっけかな。長いもんでね。よく覚えちゃいない」

「フン・・・まあいい。そいつの得意とした技は、あらゆる光を攻撃的な光に変えられる能力だった。その名をライトイグニッション。昼間であれば最強。なんせ、太陽と言う立派な光があるからな。どんな魔もなす術もなく塵と化していった」

「あ、そう。で?」

「その逆の技を、我が使えるとしたら?」

「・・・ッ!?」

 そこに来て、ボルドウィンはヒヤリとして、ニヤリと笑う黒王。


 ボルドウィンは、ハッと上を見上げる。黒い柱が高くそびえたち、暗い影を落としている。そして、その真っ只中に自分は立っているッ!!!それはそれは、ミオと自分をきれいに囲むようではないかッ!!!

「我の作り出す攻撃的な影は、ブラックスパイラルと同じ暗黒物質。触れれば、即座に侵食し滅ぼす。貴様の負けだッ!光差せば、影落ちる。つまり、影のスピードは光のスピードッ!いかに貴様が速く動けたとて、我の影からは逃れられない」


「ちッ!」

 ボルドウィンは出し抜けに、逃げ出そうとするッ!


―――刹那ッ!!!!!!!!


 ボルドウィンの足先から胸までが消滅したッ!!!まさに生きた胸像のボルドウィンが地面へぼとりと落ちるッ!それはもはや人というより、物だった。その生々しき変貌に、五神武を抱えるミオが悲鳴をあげたッ!

「ボルドウィンッ!!!!!!!」

 ボルドウィンは声も出ない。もはや瀕死ッ!!!


「ハッハッハ!貴様の余興なかなかに楽しめたぞッ!我の情けで、少しだけ体を残してやった。女と別れを惜しむが良かろうッ!!!」

 そうッ!黒王はミオに見えるように、ボルドウィンを処刑したのだッ!なんてむごいッ!!!!


「逃・・・げ・・・ろ」

 命尽きんとする体で、なんとッ!ボルドウィンはまだ意識があったッ!これが意志力かッ!

 ミオが五神武を抱きしめたまま、駆け寄るッ!

「嫌ッ!嫌ッ!死なないでッ!!!」

 と、首を振って泣きわめくッ!だがしかしッ!ボルドウィンの肉体は闇に蝕まれ、塵となっていた。もう助からないッ!!!

「ああ・・・あ・・・」

 顎まで塵と化すと言葉も発せなくなり、あっと言う間ッ!ボルドウィンは塵と消え失せたッ!


「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

 悲鳴と爆笑が入り混じるッ!!!


 しかしッ!ミオとて聖天のはしくれッ!ボルドウィン・・・恋人の死をすぐに受け入れたッ!そしてッ!向かう視線の先は、黒王ッ!

「ホゥ・・・恋人の遺言を無視して、かかってくるかッ!」

「私は今気づきました。彼のいない生涯なんかいらないッ!」

 ミオはキッと睨みつけたッ!そのまっすぐな視線はピュアだッ!

「愛に生きるか。くだらんッ!ここは、世界の存亡を賭けて争う聖域ッ!!!愛などという甘っちょろい感情が、存在して良い場所ではないのだッ!!!」


 ミオは黒王の言葉に耳を貸さないッ!!!冷静に黒王の体を見ている。無数の切り傷。それはボルドウィンのつけた傷跡。そこからさらに一発入れられないだろうかッ!?と、画策した。


―――だがしかしッ!!!


「貴様、我の負った傷を見て、一縷の希望を抱いているなッ!」

 見透かされたッ!!!

「あの、風の大聖天もそうだ。情なぞに捕らわれて、我に挑みかかってきた。だが、ぬるいッ!ぬるすぎるッ!!!我に復讐を果たさんとしておきながら、何故、五神武を使わなかったッ!!!」

 ミオはビクっとしたッ!

 ボルドウィンはこの戦いの前に言っていた。


―――五神武を使えば、この辺・・・


「知っているぞッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 黒王がさえぎってきたッ!

「五神武を使えば、この辺り一帯が壊滅するッ!それを恐れて、奴は使わなかったのだッ!だがしかしッ!この戦い、すなわち世界の存亡ッ!!!生か死かなのだッ!」

 黒王は、熱く激昂し語ったッ!かと思うと、しゅっと静まった。

「貴様らは、我の聖戦に水を差しにきたに過ぎない。そんなハンパ者が我が野望を止められようか。否ッ!我にしてみれば、余興がせいぜいというところよ」

 黒王は内なるダークパワーを高め、発散したッ!ムワムワと上がる漆黒のストリームッ!!!


 黒王の身体がシュゥゥゥと音を立てるッ!ッと!なんとッ!!!無数の切り傷が塞がっていくではないかッ!!!

 黒王は肉体を自分で癒す事ができるのだッ!!!


 そしてそれはッ!ミオには絶望だったッ!

「どうだ?貴様の恋人が残した希望と言う名の傷が跡形もなく消え去っていく気分は」

 黒王はミオに満足げだッ!

「これでわかっただろう?我は遊びに付き合っていただけに過ぎない」


「~ッ!!!わああああああああああああああッ!!!!」

 ミオは絶望のあまりに気が狂ったッ!五神武を捨て、正面切って向かってきたッ!!!

 黒王は一刺し指で、向かってきたミオの眉間を的確に刺し貫いたッ!!!ミオは白目を剥いて、惨めな絶命ッ!!!


「くだらん死に様だ」

「いや、そいつらの生き様、しっかりと受け取ったぜ」

「ぬ?」

 黒王は指先で貫いたミオのぶらさがった死体をゆっくりと脇へどけた。


 声と気配で、心はわかっていたッ!!!

 これは宿敵の声ッ!


―――竜牙が五神武ハーン・クレールを手に、佇んでいたッ!!!




「始まったか・・・」

 世界王が密室で呟いた。

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