第百七十二天 連合壊滅ッ!そして、大聖天の登場・・・
一面真っ白な部屋は、艶を帯びて大理石のような潤いを含んでいた。しかし、一面それだけだと冷たくつれない印象がある。
彩のない異次元にある一室。世界王の館。
白い部屋には、白い机があって、また椅子も白かった。しかし、同じ白で同じ質感に見えても、どういうわけか、椅子の背もたれは雲のように柔らかいのだった。
その背もたれにゆったりと世界王は座り、机に肘をついて顎を支え、もう一方の腕はだらんと机に預けていた。目は中空をさまよっていた。
しかし、やはり音もなく無の空間で、静然たる白は永久に流れていくのだが、今日ばかりは少し違った。世界王の机に置いた指先が、コツコツコツと机を鳴らしている。その落ち着きのない様が珍しく、そして、耳に障った。
「何か御用でしょうか?」
左天が呼びもしないのに現れ、声をかけた。
「あぁ!いえ、何の用もありません」
世界王は指に気づいて、叩くのを止めた。
「はい」
「そろそろ、僕は君らともお別れのようです」
「はい」
左天は何の感情も示さない。
しかし、世界王は気にも留めない。世界王自身が、彼女をそのように創造したのだから、当然だった。世界王は静かに中空を見ていた。
目の内には神生島が映っていたッ!聖域が映っていたッ!ベレー帽が黒王の首を捕まえていたッ!
―――コツコツコツ・・・
指がふたたび机を叩いた。
「ホゥ・・・待っていたとな」
黒王は首をつかまれてなお、よゆうッ!
「このまま、絞め殺す」
ベレー帽は力を込めたッ!指先に聖なるパワーが集約して、物凄い締め付けが黒王を襲うッ!だがしかしッ!黒王はへっちゃらで、むしろその原始的な攻撃に退屈してしまったッ!
「非力な男よ」
黒王は締め付ける両腕を振り払おうと体を動かそうとした。だがしかしッ!動かないッ!!!
「なにッ!?」
「あがいても無駄だ。俺のスネークハングツリーからは、絶対逃れられん」
なんとッ!ベレー帽の煙のようなパワーは、ただの力ではなかったッ!黒王の身体を絞め付け、全身の動きを奪っていたのだッ!その様、まるでまさに蛇が体に巻き付くようッ!!!
「俺は中聖天で一番力が強い。この技を受けて、生き残った魔はいない」
「ならば、我は最初で最後の生存者になるというわけか」
黒王はそれでもまだ余裕だッ!それは本当によゆうから来るものだったッ!
黒王の体に力が入るッ!深黒のオーラが溢れだすッ!それは、白き煙の綱をあっさりと揺るがし、断ち切ったッ!
「なにッ!?」
ベレー帽は声をあげる。首筋に悪寒が走るッ!!!そう、この後に待ち受けるのは明らかに死ッ!
「我と力比べなど、一億年早いわッ!!」
黒王の闇を纏った手刀が、ベレー帽の胸をぐぼぉっと貫いたッ!!!
「うぎゃああああああああああああッ!」
ベレー帽、絶命ッ!!!
―――だがしかしッ!
その刹那ッ!轟音と共に、上からなにかが飛来してきたッ!炎をまき散らし、隕石かッ!?
「ぬッ!?」
黒王は驚きの声をあげたッ!そして、反射的にかわそうとしたが、貫いた手刀にはなんとッ!絶命したベレー帽の腕がからみついていたッ!
黒く滑らかなライダースーツがビリビリと裂け、内に潜ませた五神武ハーン・クレールが飛び出したッ!それは無数の孔雀の羽をつなげたような帯に絡まれているッ!!!孔雀の羽はぴょんとうさぎのごとく飛び跳ね、黒王の手元から離れたッ!
なんとッ!黒王の五神武を奪いやがったッ!!!
・・・とは言え、その不意の一撃も黒王には止まって見えていたし、ベレー帽の腕を引きちぎって避ける余裕もあった。だがしかし、戦闘を楽しまんとあえて見逃したッ!!!
「なんのつもりだ」
黒王はうす笑みを浮かべている。
孔雀の羽に包んだハーン・クレール、それを大事そうに抱える女はおびえるような目で、しかし睨みつけていた。
「これだけは、返してもらうッ!」
女は叫ぶように言った。
「フン・・・刀を奪って、どうする?その刀で我に挑む気か?」
「いいや、この俺様が挑むぜ」
と、とつぜん横からふらりと現れたのは、得体のしれない男ッ!
アロハシャツにコートを羽織り、浅黒い屈強な胸元がのぞいている。黒髪の長髪は、くりんくりんに逆巻いて、そう・・・風のよう。
「貴様は?」
黒王は五神武を奪われて、さらにそこへ助太刀が参上しても、涼しい顔だッ!黒王、どこまでのポテンシャルを秘めているというのかッ!!!
だがしかし、現れた男も負けてはいないッ!まったくフレンドリーな表情で、
「大聖天・・・ボルドウィン」
そうッ!呟いたッ!!!




