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第百七十一天 聖天軍団ッ!存亡を賭けた戦いッ!

 山の端から端まで広がる畑の奥まったところにひっそりとある聖域の中枢は、飾り気もなく謙虚な神々しさを放っていた。しかし、地味と思われがちなそこも、近づけば肌を切り裂くような威厳を感じる。まるで、流水に浸した刀のごとく、冷たく密やかで鋭い。


 だがしかしッ!

 そんな静かなる聖域は、今や森は黒々と染まり、灰の鳥居はより深い影を落とし、暗鬱として、不安に溢れていた。しかもッ!闇は聖域を飛び出し、毒ガスのように広がる雲は、雑木林や固い草原も侵し始めていた。

 さすがの事に、近所の住民も何事かと家を飛び出して、空を見上げた。中心地が聖域である事もわかっていた。しかし、その本能から恐怖を覚えるほどの禍々しさに誰もが足を踏み入れられなかったッ!


 黒脈打つ混沌の化け物の闇の中の奥のさらに闇、本殿となる場所で、黒王は静かに鎮座し、その深黒なるオーラは山姥の髪のごとく絡みついて、天へと逆立ち広がっている。


―――世界の終焉は少しずつッ!だがしかしッ!確実に近づいていたッ!!!




 静かに脈動だけが響くその空間に、ザッと響く異音。

 黒王は静かに目を開き、ニヤリと笑った。

「来たか」


「黒王・・・もとい虎麗 中聖天ッ!!!魔に堕ち、闇の術法を使った咎により、聖天の掟にもとづいて、これより天誅を与えるッ!!!」

 中央に立つ純白のコートにベレー帽のむさい男が、その厳めしい顔で宣告した。

 両翼に広がる無数の白コートの集団。聖天連合軍だッ!!!

 ここまで騒ぎを起こして、他の聖天たちが駆けつけないわけがなかったッ!

 山々には全国各地から集まった聖天たちが、聖域を取り囲むように彼らの行く末をかたずをのんで見守っている。


「天誅・・・偉そうな物言いだな。雑魚が」

 黒王は座ったままで、よゆうたっぷりであるッ!

 しかし、ここのダークパワーは凄まじく、並みの者であれば、入った瞬間に気が狂って死ぬ。この闇に耐えて、黒王の前で天誅を告げられるこの者たちは、かなりの手練れであった。

 雑魚と言われたぐらいで、ざわつかない。プロは決して慌てないッ!


「その命・・・貰い受ける」

 宣告したリーダーがゆるりと刀を抜いた。静かに皆々が臨戦態勢に入ったッ!その数、おそらく50人ッ!!!

 黒王はゆっくりと仁王立ちになると、

「フンッ!」

 掛け声と共に、ぐっと体が凝縮したッ!刹那ッ!ダークパワーが、濃くにじみ出るッ!


「うぎゃああああああああああああッ!」

 ここまでギリギリ耐えていた聖天たちが、このパワーに、狂って死んだ。

「触れもせず、四人がやられたぞッ!」

「ッ!?まだパワーが上がるのかッ!!!」

 これにはさすがにプロ達もビビったッ!

 しかし、そこはプロッ!すぐさま、攻撃に移るッ!!!


 黒王の四方を一瞬で囲む、聖天達ッ!

「ハハハッ!こうも簡単に包囲されるとはなッ!死ねッ!!!」

 一斉に斬りかかるッ!

 だがしかしッ!

「うぎゃああああああああああああッ!」

 と、逆に四人からあがる血しぶきッ!!!黒王はまったく動いていないッ!!!しかしッ!一人は脳天を貫かれ、一人は首を切り落とされ、二人は胴体が真っ二つなのだッ!!!

「たわけが、囲ませてやっただけだ」

「うッ!」

 さすがに、プロ達も飛び込みづらくなるッ!なんせ、腕利きの中聖天が囲んだのにも関わらず、相手に手傷を負わせるどころか、わけもわからぬままに四人もやられたのである。それはさすがにビビるッ!しかたがないッ!

 だがしかしッ!

「怯むなッ!攻めて攻めて、休ませるなッ!」

 と、ベレー帽の男が命令だッ!困りながらも、命令通り突っ込んでくるッ!

 最初に飛び込んできた一人の頭を黒王はわしづかみにして、力強く地面を蹴ったッ!

「うぉぉぉぉぉッ!!」

 攻め入ってきた集団が塊となって、一気に後ろへと押されるッ!黒王は華奢な女ながらに、どうして力もハンパないッ!!!


 何十人の塊が、本殿の入り口から、外へ吐き出されたッ!!!

「貴様らごときが、我が新なる本殿に入る事すら、おこがましいわッ!」

「うぎゃああああああああああああッ!」


 またしても、悲鳴が響き渡るッ!

 黒王がつかんでいた聖天の頭を砕いたのだッ!握力もハンパないッ!リンゴなんか豆腐だッ!


 その様を、ベレー帽はシブい顔で見ていた。射るような眼光がまぶしいッ!

 そしてッ!その目をチラチラとそばの聖天へと向けた。ガチマジな顔でコクリとうなずいたッ!


 集団が一気にばらけたッ!今度は空も使えるッ!空から地上から、横から右から後ろから、一気に迫るッ!


―――玉砕必至の全 軍 突 撃ッ!!!!


 無数の鋭い刃が黒王に狙いを定めるが、そのどれもが華麗に流され、必殺の打撃をもって返されたッ!

「ぬるいッ!ぬるいわッ!」

 黒きライダースーツの肢体は美しくしなり、艶やかにして流麗ッ!まるで戦場に咲く黒薔薇であったッ!


 そこへッ!屈強な肉体を持つ白いコートが顔面を両腕でガードしながら、二人して壁のように迫ってくるッ!それでも黒王にとっては、所詮、ザコに過ぎない。あっさりとガードの空いた脇腹に叩き込むッ!そこにも微量な深黒なオーラが食い込み、屈強な肉体がひしゃげ、動きが止まるッ!

 黒王はその足を切り返して反転、回し蹴りをもう一人に突きこむッ!

「ぐぉぉ」

 と、屈強な肉体はみじめに呻いて、前かがみになるッ!


―――だが刹那ッ!!!


 その屈強なウォールの隙間から、第三の太い腕が伸びて、黒王の首を捉えたッ!!!!

 男の間から飛び出してきたのは、あのベレー帽だッ!ベレー帽の肉体からは、聖なるパワーが煙のように立ち上っているッ!さすがは軍勢を束ねるベレー帽ッ!!!他の奴らとは一味違うッ!

 白き風をまき散らし、ベレー帽はすさまじい突進で黒王を神木に押し付けたッ!!!


「・・・この瞬間(トキ)を待っていた」

 ベレー帽はウィスパーもシブイッ!


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