第百六十八天 未来紡績ッ!戦士の存在意義ッ!!!
金明の握力は凄まじく、いくらもがこうとも放さなかった。刃も通らない、関節技も通らない。鋼鉄が自分を捕まえるために鋳溶かされて、固まってしまったようだ。そして、もっとも見晴のいいそのジェイルで、朝霧は肉のサンドバッグと化し、やがて力を失い、ついには吊るされた精肉のごとくむごたらしい姿となる。
「おらぁッ!」
と、金明の何十度目かの凄まじい拳がクリーンヒットした時、衣服が破れて、ようやく空へ解放されたッ!だがしかしッ!体勢を立て直す力すら朝霧には残されておらず、ボロ雑巾のごとく転がるだけだった。そして、ぐったりとしたまま動かない。
「なんでぇ?もう終わりかよ?やっぱ、おめぇ一番弱ぇんじゃねぇのか?」
「・・・」
朝霧の返事はなかった。
「せっかく盛り上がってきたってのに、しょっぺぇ野郎だなぁ。・・・まぁ、派手に弾けろや」
金明はつまらなさそうに言うと、拳に暗黒パワーを溜めたッ!
―――・・・体が・・・動かない。
「粉々にしてやるぜッ!金明爆黒拳ッ!!!」
金明は暗黒パワーを地面につきたてたッ!闇の波動が蛇のごとく、朝霧に向かって這っていくッ!その先にあるのは、死・・・。
―――申し訳ありません。信さん。わたしはあなたに託された思いを実らせられませんでした。
黒の衝撃が牙をむくッ!朝霧はゆっくり目を閉じたッ!
だがしかしッ!その凄まじい衝撃音がしながら、いつまでも苦痛の訪れぬ異変ッ!朝霧はゆっくりと目を開いた。
「ッ!?!?!!?!?!?」
目の前には信がいた。信が両腕を広げて、背中でかばっていた。
「うわああああああああああああッ!!!!!!信さんッ!!!」
「フフフ・・・朝霧様、もうお力になれないと思っていましたが、盾ぐらいにはなれました」
信は超移動を使って、朝霧との間に割り込んだのだッ!黒い闇がぶすぶすと信の背中から音を立て、心までをも焦がしかねない激痛であろう。それでもなお彼は、ふらふらとしながらも、立っているのだッ!なんという精神力ッ!!!
―――だがしかしッ!
「頼みます・・・わたしたちの未来を」
ついにその信の精神力までもが消えた。力なく膝から崩れ、地に伏した。
「なんてぇ野郎だ・・・。あんなザコの為に信じられねぇぜ」
と、金明もさすがにこればかりは驚いたッ!
朝霧も、こんなわたしの為に・・・と一瞬思いかけたが、首を振った。そして、打撲と骨折で全身がひび割れた体を、無理に起こしたッ!いや、なんとしても、起きるしかなかったッ!
「フッ・・・わたしとした事が・・・甘い・・・大甘ですよッ!!!」
朝霧は叫ぶように言った。その声は気合いに満ち溢れ、ベリーストロングッ!
そうッ!朝霧は忘れかけていたッ!自分たちに全人類の未来がかかっていることをッ!そして、人類の想いッ!それを形にする事が聖天の使命であることをッ!!!
「へッ!ザコがまた生き延びちまったなぁ?」
金明はバカにするようだ。
だがしかしッ!朝霧の目にもう絶望の色はないッ!むしろ、そのクールな瞳が珍しくバーニングヒートだッ!
「・・・強いとか、弱いとか、やかましいんですよ。この関取がッ!」
「ああ~ッ!?関取だぁッ!」
と、金明は青筋を浮かべるッ!金明の頭では、相撲取りはただのデブだった。失礼な話だッ!
朝霧は己が弱いこと、今や信よりも劣っている事は明らかにして絶対ッ!
だがしかしッ!そんな事はどうでも良いッ!
―――命を賭して未来へ想いを繋ぐ事、それこそが戦いの意義ッ!戦士の意義なのだッ!
「託された思いは・・・つながなければなりませんね。たとえ、この命尽きようとも」
「なぁに、ブツブツ呟いてやがるッ!」
「一撃ですッ!」
「ああ~ッ!?」
「一撃であなたを殺してみせますよ」
朝霧は闘志に燃えた微笑みだッ!その自信に満ちた顔に、金明はドキっとしたが、すぐに鼻でわらった。
「はんッ!・・・その体で何ができるってんだ?おめぇは、もう死ぬだけだろうが」
「一撃ですッ!」
「・・・」
「一撃に始まり、一撃に終わる幕引き・・・悪くはないでしょう?」
朝霧は人差し指を立ててみせて、ニヤリと笑う。
「面白れぇ。よく見りゃ、さっきとは顔つきが違うぜ。いいだろう。受けて立ってやる」
―――朝霧のプロとしてのセンスがFULLに活動し、彼の未完成な計画は一気にその完成へと向かおうとしていたッ!!!




