第百六十天 神隠激突ッ!戦いのプロローグッ!!!
竜牙たちが部屋を出て、静けさを取り戻した頃、信は布団の中でゆっくりと目を開けた。
腹の鈍痛はいよいよ死を臭わせた。手足もその死の臭いにつられるように硬直し、痺れていた。
「うッ!」
信は起きようとして、不意の激痛に小さく声を漏らして、布団に倒れた。
だがしかしッ!ネバーギブアップッ!
体のバランスに注意しながら起き上がると、ハンガーにかけた服へすがりついてずり下ろす。そして、寝転がったままで、聖なる服を身にまとう。コートすら羽織れず、床にコートを広げて、袖を通した。
「信も行くの?」
明江の声が寂しげに突然言って、信はびくりんッ!
「・・・起こしてしまいましたか」
「ううん、ずっと起きてた。竜牙たちが出る時から」
「わたしを止めますか?」
「止めたいけど、止まらないんでしょ?」
「はい」
「じゃ、止めない」
明江は起き上がった。そして、押入れの天井裏に隠すようにあった刀を取ってきた。
「はい。新しい刀」
と、突き出されて、信は驚いた。
「知っていたのですか」
「郵便局まで届けてもらったんでしょ?買い物の途中で見つけちゃった」
「買い物の隙をついたつもりが、逆に隙をつかれていたわけですか。油断してました」
信は刀を受け取りながら微笑んだが、明江の視線にすら気づかないほどとは、相当なダメージなのだと、信は今一度痛感した。
刀を杖替わりに、信はぐぐっと体を起こした。
「タクシー乗り場まで、送るわ」
と、明江が肩を貸してくれた。
ロビーを出て、竜牙たちの通った道をなぞった。空は雲が厚く、町肌も青が濃く、不吉の予兆を感じた。二人もやはり、遠くの山の向こうに見える闇の波動を捉えていた。この暗い感じは、あれが原因なのだと、二人にもわかっていた。
「あのね、わたし、わたしになりにだけど、いろいろ考えたんだけどね。よくわかんなかった。信とかの考えもよくわかんなかった。でも、考えてたら、わたしのこともよくわかんなくなっちゃった。わたし、きっと自分勝手なんだよね?」
「ええ・・・自分勝手ですよ。あなたも、わたしもね」
信はもう苦しそうな顔をしながらも、微笑みを絶やさないッ!なんという精神力ッ!
「だから、こんなこと言うのもきっと自分勝手だし、信にお願いしちゃうのなんて、もっとひどいことなんだと思うけど・・・」
「なんですか?」
「わたし・・・生きたいッ!まだ生きたいよッ!」
明江の顔は前を見ていた。しかし、それは胸に響く生命の叫びだった。
タクシー乗り場で、信は超推理で行先を告げた。
「ごめんなさい。だいぶ酔っぱらってしまってて」
と、明江はふらついている理由をごまかした。
信を後部座席に乗せると、
「みんな、必ず帰ってきてね。わたし、夕飯作って待ってるから」
「はい。必ず」
―――必ずと言った以上ッ!男ならやりとげねばならないッ!!!
「ッ!なんというスピードッ!」
五閃は驚いたッ!
信の聖と邪のパワーを合わせた超移動は、とても満身創痍とは思えないスピードだッ!
まさに、信の気力と精神力と熱き絆がなせる業だッ!!!
「ホッホッホ・・・いいぞッ!成平 信ッ!」
と、飛び込んできた信の刀を光良は受け止めて見せたッ!一瞬に弾ける斬光ッ!そして、互いに吹き飛ぶ両者ッ!凄まじく高速な為に反動も凄まじいのだッ!
信の超高速移動を光良はあっさりと受け止めて見せたが、信は驚かないッ!相手が二階堂 光良ならば、不思議ではないッ!休まず斬りこんでいくッ!
「少し遊ぶとするかのぅ」
と、光良も消えたッ!奴も超移動が使えるッ!
光と音だけが弾ける異様な空間になった。
「は、速すぎる・・・ッ!ついていけない」
「信さん・・・ここまで」
と、朝霧も五閃も魂が抜けそうなほど、神隠しなバトルだッ!!!
―――だがしかしッ!!!
何度目かの衝突の末、二人の姿が視界に捉えられた。
立っていたのは、光良。転がったのは、信。
「信ッ!!!」
五閃は声をあげたが、信はすぐに体を起こした。
「ホッホッホ・・・。残念じゃのぅ。そなたが万全であれば、転がっていたのはワシの方であったじゃろうて・・・。同じ力であれば、体力の勝る方が勝つのは自然な道理。むしろ、その体でよく何度もぶつかり合えたものだと、ワシは驚かされるばかりじゃ。いよいよ欲しくなったぞいッ!」
信は黙って刀を構えるッ!
「止せ止せッ!今のそなたでは、ワシに勝つことはできんよ」
と、光良はよゆうのスマイルッ!
「止めを刺すまでが勝負。それがあなたのお考えではないのですか?」
「ワシはそなたを殺す気はない。そなたが欲しいのじゃ。さぁ、ワシの下へつけ。命は惜しいじゃろう?」
「フッ・・・あと二日のこの命ッ!惜しむとでも?」
信は笑って見せる。それを見て、光良は溜息だッ!
「・・・ちぃと予定が狂ってしもたが仕方あるまい。惜しいが傷をつけるとしよう。そなたにはワシに勝てない致命的な理由が三つあるのじゃよ」
「何ッ?」




