第百五十四天 野望始動ッ!絡み合う三つの黒ッ!
神生島のほとんどは山である。海からそのまま、雑木林の山が生えているようで、そこを人が無理矢理、道を通した。そんな箇所がいくつもある。しかし、山奥は険しい峡谷があるというわけでなく、なだらかな平原に農村がのどかに広がっている。島の地図的な中心地も、そんななだらかな平原にあった。そして、その中心地は聖域であり、竜牙たちのいた町の聖域、そして数々の激闘を広げた聖域を結んだ中心地でもあった。
聖域を結んだ中心の聖域。つまり、聖域の中枢がそこにあったッ!
そして、その鳥居をくぐった女がいたッ!言わずと知れた黒王だったッ!
鳥居の結界も黒王の強大な力の前では無力であったッ!
まっすぐに伸びる砂利道を見た。
それから、神池、拝殿と、まっすぐに向かった。仰々しさのないすっきりした参道だッ!
そして、黒王は拝殿を前にして、ニヤリとダークなスマイルだッ!
「ここから、我の野望は始まるッ!・・・そうだろう?そこのゴミ共」
と、振り向かずに言った。
「ホッホ・・・見つかってしまったか。さすが新世界の王を名乗るだけの事はあるな」
なんとッ!木の影から浮き上がるように出てきた闇は、金卑だったッ!!!
「我を誰だと思っている」
黒王は当然の顔つきだッ!そしてッ!
「なぁ、そこのでくの坊よ」
と、門の方を見た。
舌打ちがした。影から出てきたのは、金明だったッ!
「何の用だ?」
と、黒王は涼しい顔をして、振り返らないままに聞いた。
「ぐッ!ぬぅぅ」
金明は言葉に詰まった。用などなかった。ただ隠れて偵察していただけだッ!だがしかしッ!そうとは言えないッ!
「まさか・・・あれで偵察というわけではあるまい?」
「ッ!!?!!?!?!」
二人は動揺した。
「そこまで、見抜かれてましたか」
「たわけがッ!臭いでわかるわッ!」
黒王は魔の中に長くいるため、臭いの違いで何者かも判断できたッ!!!
「フフフ・・・貴様ら、金盧の手下だろう?我が野望、阻みに来たか?」
と、深黒なオーラがぶわぁと黒王の体からにじみ出たッ!どす黒く重いオーラに、同じ魔でありながら、恐怖に包まれたッ!!!
「違う。俺たちはあなた様の手下だ」
「なにッ!!?!!?!?」
めっちゃビックリしたのは金明だったッ!偵察していただけで、そんな話は聞いていないッ!金卑、まさかの寝返りッ!!!
「ホゥ・・・」
「素晴らしいダークパワーだッ!世界を統べるには、あなたこそふさわしいッ!」
金卑、大絶賛であるッ!感動に打ち震えた表情は、まさに迫真と言わざるを得ないッ!
「おいッ!金卑ッ!俺はそんな話聞いていないぞッ!!!」
「ホッホ・・・貴様はまだわからないようだな。この方は世の理なのだよ。金盧などという俗物とは違う次元にいる。もっとも深い闇を持つ魔の王だ」
「おめぇ、今なんて言いやがったッ!」
金明はキレたッ!金盧を親父を俗物扱いした事に、爆発寸前だったッ!
「どうした?何か気に障る事を言ったか?」
「親父を侮辱したおめぇは許さねぇッ!!」
金明は、どすどすとすさまじい地鳴りと共に、金卑に突っ込んできたッ!
「愚物めッ!」
金卑は身構えたッ!金明の鋭い拳が振り下ろされるッ!
すさまじい砂煙があがるッ!?と思いきや、聖域は静然としたままだったッ!
「なッ!!!!」
驚いたのはやっぱり金明だッ!金明の凄まじく重いパンチを、この黒王という女は二人の間に割り込んで、指先一つで止めていたのだッ!
「ザコ共が何しに来たのか知らんが、さっさと失せろ。目障りだ」
「申し訳ありませんッ!!!」
と、金卑は即座に土下座だッ!
「この男があまりに愚か過ぎるゆえに、なにとぞご勘弁をッ!」
「フン・・・貴様のおべっかにも飽きたわッ!さっさと消えろ」
「一つッ!お願いがありますッ!」
金卑は土下座しながらに言った。
「・・・死にたいのか?」
黒王の視線が濃くなった。殺意の波動が金卑をうちのめし、金卑はチビったッ!
「死にとうございませんッ!独り言で一言だけ言わせてくださいッ!竜牙一行は我々が必ず討ち取ります。しかるゆえ、討ち取ったあかつきには我々を、配下に加えていただきたいッ!それだけでありますッ!」
金卑は頭を地面にめりこむくらいに押し付けたッ!
「ホゥ・・・大聖天を討ち取るとな?」
「はいッ!」
「良かろう。我は貴様らが首を持ち帰ってくるのを待とうぞ」
「はッ!必ずや!おいッ!金明いくぞッ!」
金卑は、金盧の腹を肘でつつくと、しゅたっとその場を飛び去った。
「お、おいッ!」
金明は頭が追いつかない。
「どうした?大聖天を討ちにいかぬのか?」
と、黒王の冷ややかさが、北極のブリザードのごとしだッ!
「うぅ・・・ぐぬッ!」
金明はものすごい殺気にやられて、わけのわからぬまま、動物的本能が体を反射的に逃亡へ走らせたッ!
「おいッ!待ちやがれッ!」
先を進む金卑を金明は引き留めた。
「なんだ?」
「おめぇ、なに勝手な事してやがんだ!」
「勝手な事?俺は正しい判断をしたまでだ。あの方は魔の王となるべきお方だ。間違いない」
「まだそんな事を言うかッ!」
金明は拳を振り上げるッ!
「待てッ!ならば聞こうッ!あの金盧が黒王様の力より勝っていると思うのか?」
「おめぇ、そんな事言って、親父がどこで見ているかわからねぇぞ?」
「ホッホ・・・何を恐れる必要があるのだ?あいつは大聖天にも黒王様にも勝てない。どのみち死ぬだけだ。そんな泥船に貴様はいつまで乗っている?」
「ぐッ!・・・」
金明は拳をぎゅっと握りしめた。怒りがはちきれそうッ!?と思いきや、心の内にモヤモヤと日頃の不満が広がった。父親の戦っているところを金明は見たことがなかった。
「親父だからか?くだらんな。さっさと見限る事だ。あいつはもはや権力にしがみついた醜い老いぼれ。何もできやしない。俺は強い奴にしか興味はない。強い奴につき、俺は権力を手に入れるッ!数年後には、俺が魔の国の王となってるかもな。クックック」
金卑は下品な笑い声をあげながら、歩き始めた。
「おめぇには、戦士としての誇りはねぇのかぁッ!」
金明の野太い声が、まるで雷鳴のごとき轟音だッ!
「誇り?そんなものは何の得にもならんゴミだ。情を捨て賢くなれ、金明。ホコリなぞにこだわって、ゴミのような親父といつまでもいると、貴様自身がホコリになってしまうぞ?クックック」




