第百五十天 狡猾庇護ッ!信、黄泉へのカウントダウンッ!!!
―――その、ちょっと前・・・
「旋風の連撃を見せるだと?ほざけ。人間の分際が」
金卑は見下すような顔で言ったが、五閃は表情一つ変えなかった。
「その人間にたった今、技を防がれたのを忘れたか?」
「ぬぬッ!!」
「・・・まあ、百聞は一見に如かず。いくぞ」
五閃が迫るッ!
「俺が防いだように、おまえも防いでみろッ!」
鞘からあふれる閃光ッ!後の先を主とする五閃が十数年ぶりに見せる踏み込みだッ!だがしかしッ!彼のたゆまない努力は、十数年のブランクを感じさせない程、スピーDッ!後の先が先んじては、先の先ではないかッ!
―――だがしかしッ!
金卑は後ろへ飛んで簡単に避けた。
閃光のような抜刀がほどばしるかと思いきや、それはいたって普通の居合だった。
「大口叩いた割には、ずいぶんとノロい一撃だな。しょせん人間という事か」
金卑は、あおってくる感じである。だがしかしッ!五閃の鞘にはもう刀が戻っていて、次の一撃だッ!戻りも早いッ!出も早いッ!普通の居合とは言え、常人レベルははるかに超えているッ!
カチャンカチャンと規則正しい音をさせながら、連撃は飛び交うッ!それでも、やはり人間の領域ッ!金卑はひらりひらりと紙切れのように簡単に避けてしまう。
「どうした?これじゃ、こがらしも起こせないぞ?」
それでも、無心に斬撃を繰り返すッ!
「ホッホ・・・さては、あっさりと避けられて引くに引けなくなったようだな。ならば、この俺が貴様にカウンターという引導を渡してくれよう。それで終いだ」
ひらりひらりと避けていた金卑だが、反転、五閃に突っ込んでいったッ!
―――カチャン・・・カチャン・・・
全神経を研ぎ澄ませタイミングを見極めるッ!
「ここだッ!死ねッ!」
金卑は飛び上がったッ!来るぞッ!金卑旋風連脚ッ!
―――全世界がカウンターを確信したかに思えた
ところがッ!
「うげぇッ!」
脇腹に血しぶきをあげて、背中を丸めたのは金卑だったッ!
カチャンと五閃は刀を納めた。金卑は腹をおさえながら、二、三歩フラフラと下がった。
「貴様、何をしたッ!?」
「俺は居合を繰り返していただけだ」
「馬鹿なッ!俺は完全に貴様の攻撃を見切り、完璧なタイミングだったはずだッ!」
「・・・おまえは一つかんじんな事を忘れている。音速は音を越えるという事実をな」
「ッ!?」
「ようやく気付いたようだな。俺はただ居合をしていたわけではない。少しずつスピードをあげていたのだッ!そして、少しずつ音をずらし、タイミングを狂わせる。神音流剣術ッ!居連斬・音流ッ!先に攻め入り、後の先を突くッ!先の後の先の高等剣術だッ!」
―――神音流剣術 居連斬・音流・・・信の使う桜華・河桜に似たような技だッ!
「ぐぉぉ・・・痛ぇ。痛ぇよ」
「諦めるんだな。おまえと俺たちとは、住んでいる領域が違う」
五閃はずずいっと迫ったッ!金卑は手を前に出して逃げ腰だったッ!
「ま、待てッ!お、俺の負けだッ!参ったッ!」
「フ・・・命乞いか。クズめ」
「そ、そうだ。俺はクズさ。だが、まだ死にたくねぇッ!見逃してくれッ!」
顔をゆがめて必死に懇願する金卑に、五閃は溜息がもれた。
「斬る気も失せた・・・。さっさと消えろ。闇の深淵でかろうじて生き長らえるがいい」
五閃は、信の方を見た。
「刀が壊れている・・・。加勢にいかねばならんな」
五閃は信の方に歩き出した。信と目が合ったような気がした。
そして、金卑の目がギラリと輝いたッ!
金卑は背中に手を回したかと思うと、両腕を突き出したッ!両腕から紫の帯が飛び出したッ!
五閃がハッとしたのもつかの間ッ!
―――ドスッドスッ!
鈍い音が肉に突き刺さったッ!
「ヒャッハー!敵に背を向けるとは、バカな奴だなッ!ここは戦場だッ!生き残った奴が勝利者よッ!かっこつけて、無様をさらしたなッ!ギャハハハッ!」
「フフフ・・・おっしゃる通り大馬鹿野郎です」
「ッ!?」
「あ・・・あんたッ!」
五閃はびっくり仰天だッ!なんと目の前には、腹を突き刺されている信がいたッ!超移動で、五閃の前に立ち、金卑の攻撃を受けたのだッ!
「くそッ!」
五閃は、スパッと紫のそれを断ち切ったッ!包帯ッ!?
紫の包帯はしゅるしゅると生き物のように金卑の手のひらへ巻き付いた。
「かばいやがっただとッ?!まあ・・・いい。逆に好都合だ」
「ぐぐぐ・・・」
信は冷や汗を流して、苦しそうにうめいた。
「大丈夫かッ!?」
「そいつはもう助からん。俺のこのデスバンテージは、あらゆる物を腐らせ、死に至らしめるッ!」
「なにッ!?」
五閃は、信に突き刺さった包帯を引き抜こうと手を伸ばしたが、もしやと刀を抜いてみた。包帯を斬った部分が、錆びついているッ!手で引き抜こうものなら、自分の手も腐り落ちるッ!
「くそッ!」
「これでターゲットは片付いた。だが、俺をコケにした貴様にもたっぷりとツケを払ってもらわんとな。じっくり痛ぶって殺してやるぞ」
「ヘッヘッヘ。やるじゃねぇか、金卑。おめぇに手柄を取られちまうとはな」
金明がゆっくりと近づいてきた。挟み討ちだッ!
「魔界一の戦士ならば、当然の事だ。それよりもこいつを逃がすな。確実に殺すんだ」
「ああ。二対一でな」
金明が薄汚い笑みだッ!
「あん?三対二の間違いじゃねぇのか?いいや、二対一対二か?」
「「ッ!?」」
突然の声に、金明たちは驚いて、砂浜の切れ目にある松原を見たッ!
そこにいたのは、竜牙と朝霧ッ!悠々と立つその姿は抜群の安定感だッ!
「てめぇらお探しのターゲットがここにあと二人いるぜ?ついでに殺してったらどうだ?ハッハッハ!」
「ホゥ・・・おもしれぇじゃねぇか」
金明は向き直って構えた。だがしかしッ!
「挑発に乗るな、金明。ここは一度ひくぞ」
「あぁぁぁッ!?俺だけ手ぶらで帰れるかよッ!指図してんじゃねぇ!」
「確実に殺すためだ。それとも親父殿に殺されたいのか?」
「・・・ちッ!」
「ホゥ・・・俺から逃げられると思ってんのか?」
竜牙が割り込んできたッ!
「ホッホ・・・俺を追うより、仲間の手当てをした方がいいんじゃないのか?まあ、貴様たちにできる事は、もはや遺言を聞いてやるくらいだがな」
「仲間?こいつはただの下僕だぜ。俺はてめぇを殺すぜ。こいつの棺桶にてめぇの首を添えてやんよ」
「それはさすがに悪趣味です」
と、信は苦しみながらも、拒否った。
竜牙は、以前に奪った刀を抜き構えたッ!いつも以上に気合が入って、雲間に溢れる月光を浴びた刀は青く澄んでキリっとしているッ!殺す気マンマンッ!
だがしかしッ!金卑はビビらず、むしろしゃくしゃくっぷりが半端ないッ!
「・・・できんよ」
金卑は呆れたように懐から、携帯電話みたいなのを取り出した。そして、ポチリと何かを押した。
―――刹那ッ!!!!!
砂浜がひっくり返るほどの大爆発だッ!砂がふきあがり、黄色一面ッ!!!
爆発爆発爆発爆発ッ!!!どこまでも爆発ッ!!!
朝霧は信をかっさらうように捕まえると、折り返さずに海へと突っ込んだッ!
五閃は全力で走って、松の木の下へ転がり込んだ。
竜牙は爆発を見切って、松の原に立ったままだった。爆発はここまで来ないッ!
もくもくと入道雲のように砂煙が広がる頃には、もう二人の気配はなかった。




