第百四十七天 五色松浜ッ!波乱の果し合いッ!!!
「フッ、時間通りだな。成平 信・・・噂に違わぬ几帳面な男よ」
「たまたまですよ」
砂浜へ降りたのが、ちょうど約束の時間だった。五閃はすでに待っていて、両腕を組んで仁王立ちだった。
「さっそく始めよう」
五閃は構えたッ!しかし刀は抜かないッ!居合ッ!?
「待ってください」
「なんだ?」
「見たところ、あなたからは純粋な殺意を感じ取れない。この戦い、避けられないのですか?」
信はおだやかに訴えかけるようだッ!本来ならば味方ッ!手に手を取り合うべきであるッ!
五閃の表情には、それを散々承知の上で挑んできているような悲痛を含んでいたッ!
「・・・おまえと俺は本来、敵ではない。だが、おまえを斬る理由が俺にはある」
「理由?」
「おまえは御聖院・・・俺の仲間を殺した。おまえに非はない。それはわかっている。どいつも勝手に挑みかかっていって、返り討ちにあっただけの事だ。だが、そんな奴らでも、俺にとっては家族だった。御聖院は俺の居場所だった。居場所を奪ったおまえを、俺は許さない」
「仇討ちというわけですか」
「そうだ。説得無用。俺は今日ここでおまえを斬る」
「・・・そうですか」
信は刀を抜かざるを得なかったッ!復讐ッ!それはあまりにも重く冷たく悲しい無限の連鎖ッ!
信は刀を抜いて、じりじりと距離を詰めた。足裏に感じる砂浜の柔らかな感触は、特徴の五色をまるっきり感じさせない。海の色も見えない。月光なき宵闇はすべての色を奪っていた。
信はおだやかな波の音に耳をすませ、精神を研ぎ澄ませたッ!聖なるパワーと邪なるパワーを等しく高めたッ!
「・・・行きますよ」
「来い」
信の姿が掻き消えたッ!!!パワーの反発を利用した超移動で五閃に迫るッ!相手はまだ動かないッ!
―――貰ったッ!!!
信はななめに斬りかかったッ!
だがしかしッ!肉を断つ音ではなく、凄まじい斬響が砂浜に轟いただけだったッ!
五閃は鞘から抜きかけの刃で、信の刀を受け止めていたッ!
「なにッ!?」
信は驚いたッ!それもそのはず、この超移動攻撃は人間の限界を超え、神の領域に踏み込んだ力である。そして、黒王に対抗しうる残された唯一の力と、信は疑わなかった。
御聖院はたしかに強い。だがしかしッ!これまでの相手はどれも人間の領域だったッ!
五閃・・・五ということは、五番目だろッ!?こんな実力者がなんで五番なんだよッ!となる。
「驚いたな。俺に刀を抜き切らせないとはな。十年、御聖院をやっていて、おまえが初めてだ」
と、五閃も驚いているようで、己の刃を謎っぽく見ていた。
「十年?」
「俺は十年、御聖院をやっている。五閃としてな。御聖院の五番は、一番の下っ端。数多くの挑戦者と戦わされた。だがどいつもこいつも、俺に踏み込んで無事だった奴はいなかった。俺は自分から斬りかからない。俺の字名、五閃とは、別名、後の先。つまり、アトノサキという意味だ。相手より後に動き、急所を居合で切り裂くスタイルを得意としている。おまえはそれを破った。まあ、俺がおまえを見くびっていたという事だな。ほかの四人を倒しただけの実力はある」
「なるほど、御聖院最速というわけですか」
「そういうことだ。・・・なぜ、俺がおまえにこんな話をするかわかるか?」
「さぁ?生憎、超能力者ではありませんからね」
「それは、おまえが俺には勝てないからだ」
「・・・」
「今、放った居合はマッハ1。俺の最速はマッハ4だ」
五閃はゆっくりと鞘に刀を納めたッ!次なる居合が始まるッ!
―――その刹那ッ!!!
パチパチパチッ!
破裂音が夜の砂浜を吹き抜けたッ!
「「ッ!?」」
信と五閃が音のする方を見ると、全身黒タイツの男が松の幹にゆったりともたれて、手を叩いていたッ!金卑だッ!
「さすがは、御聖院。見事な居合だ」
「誰だ?」
「俺は魔界最強の戦士、金卑。魔王となる将来を約束された男だ」
「おめぇッ!?何してやがるッ!」
声と共に、ずしんと今度は砂浜が震えあがたッ!浅黒く大きな肉体に、濃黒な邪臭ッ!
「あなたはッ!?」
信は驚いたッ!自分の首をへし折ったあの強敵ッ!忘れるはずがないッ!
「ちッ!・・・見つかっちまったぁッ!」
金明は舌打ちをした。
「魔の王とやらが、何の用だ」
五閃の目がシャープに輝くッ!
「ホッホ・・・貴様のような男と、敵として出会ってしまったことは、運命を呪わざるを得ない」
「・・・決闘に水を差しにきたということか」
「待て。そうではない。俺と貴様はまだ刃を交える時期ではない。俺たちの狙いは、成平 信。そいつだけだ。貴様も狙いはその男なのだろう?」
「何が言いたい」
「つまり、我々と貴様の目的は一緒という事だ。敵対する間柄とは言え、わざわざつぶし合う必要はないだろう」
「「ッ!?」」
まさかッ!?と信はビビったッ!まさかまさかの三対一をこの金卑という男は狙っているのかッ!
そして、驚いたのは金明もだったッ!金卑は見張っているところを突然に飛び出して、このような交渉に出たのだ。彼の行動はまったく予定になく、予想外だったッ!
「おまえと共闘しろと?」
「どうしても、というのであれば、貴様とも刃を交えよう。だが、まずは共通の敵を消しておくのが合理的ではないか?」
「話はわかった。たしかに利は一致する」
「ホッホ・・・サッシが良い。さすがは俺の見込んだ男。では、ひとまず共闘といこうか」
金卑は薄汚い笑みを浮かべて、手を伸ばしてきたッ!
ああッと!五閃が魔の側についてしまうッ!
―――だがしかしッ!!!
パァンと良い音が鳴り、金卑の手ははじかれたッ!
「なにッ!?」
「いかに合理的とは言え、俺は魔に与するほどクズではない」
五閃が険しい顔でにらんでいるッ!差し出された手をはたいたのだッ!
金卑は愚かしいと言わぬばかりの溜息をついたッ!
「交渉決裂か・・・。もう少し話のわかる男だと思っていたんだがな。よろしい。ならばまとめて殺してやろう」
金卑の目に殺意が灯ったッ!
金明もその巨体をぐっと引き締めたッ!
―――Start! two on twoッ!




