第百四十六天 決闘前夜ッ!かけがえのない温もりッ!!!
観覧車を降りた後も、竜牙は乗り物を選ぶ気マンマンで、明江がひっぱりまわされるという、逆転現象だったッ!
陽が神生島へ顔をひっこめると、バスで旅館へ帰った。旅館のレストランでビュッフェイを食べ、シェフとの静かなる熱きバトルを繰り広げた。竜牙は惣菜を二点、朝霧はデザートを一点を完全消滅させた。温泉では、混浴にしようぜと竜牙が垣根の柵を粉々にしたッ!マジでヤバすぎる犯罪だが、人間になせる業ではないから、疑われることはないッ!感動の声をあげる男性客、あたふたとする旅館の関係者や女性客、明江をよそに、竜牙達はゆうゆうと温まっていた。なお、信には刺激が強すぎた。
これほどイタズラ好きで遊びに徹した竜牙は、長年付き合いのある朝霧でさえ目を見張るほど、珍宝なものだったが、これが竜牙なりのもっともストレートな優しさなのだと、温かい気持ちになるのだった。黒王との決戦を前に、そしてまた明江をこんな風にしたその張本人に、キリキリに張りつめていた信もその優しさに心安らぐのだった。
お互いがお互い優しく協力して、高まっていく和みパワーは、明江の深い悲しみを少しずつ解々していったッ!
「お風呂の柵、壊したの竜牙でしょッ!?」
と、明江は温泉で朱に染まった頬をさらにリンゴみたいにして、怒った。
「あん?・・・神風が吹いただけだろ?」
「ひどいッ!本当大変だったんだからッ!」
「大聖天様、あれはさすがにマズいのでは・・・」
「大浴場使えなくなっちゃいましたからねぇ」
と、朝霧と信も援護射撃だッ!
「ちッ!・・・いちいちめんどくせぇな人間ってのはよ。ま・・・てめぇの怒った顔、なかなか可愛いぜ」
「ッ!?・・・はぁ~ッ?」
いきなり竜牙に褒められて、明江は混乱した。竜牙は明江らしい顔を見るために、あんな無茶をしたのだった。
「ハッハッハ!さぁ、トランプやるぜッ!トランプッ!」
「はいはい」
朝霧はさわやかスマイルにちょっぴり呆れたスパイスを添えていた。
―――その夜ッ!
信は全員が寝静まった川の字から、そっと抜け出すと、真暗の中で、音をたてずに衣服を着て、武器の確認をした。
五閃との果し合いが、今夜、五色に輝くビーチにて行われる・・・。
静かに準備をしながら、すぅっと信は息を吸った。楽しかった熱気が今もこの部屋にはこもっている。その空気に信の顔は思わずゆるんだ。
―――これが・・・戦友というものか・・・
信は恥ずかしくなって、自分にフッと笑いかけると、名残惜しい気持ちを振り切るように部屋を出た。廊下のじゅうたんを踏みしめた彼の顔はもうファイターッ!
玄関を出て、フロントに頼んでおいたタクシーに乗り込んだ。
「どちらまで?」
「五色に輝く浜・・・御存知ですか?」
「ああ、はいはい!わかりました~ッ!」
と、真夜中だというのに軽快な声色で運転手は明るいッ!
島の眠りは早く。車とは一台もすれ違わなかった。
「お客さん、こんな時間にあんな場所に何の用で?」
と、運転手は不思議な顔だッ!
「はい。ちょっと用事がありましてね」
「あの浜、何もないっすよ?!」
「はぁ・・・」
「この島は田舎ですからね~ッ!多分、コンビニもけっこう歩かないとないっすよ?大丈夫すか?」
「ええ」
「誰かと会うんすか?」
「・・・」
「あッ!もしかして、密会でしょッ!?相手はそうだなぁ。人妻だなッ!きっとそうだッ!いやぁ、旦那に見つからずにこっそり会うにはやっぱこれしかないっすよねッ!わかりますッ!わかりますよ~ッ!・・・」
五閃との戦い以前に、運転手のトークラッシュがヤバいッ!
信は車窓に逃げ場を求めた。灯りの少ない黒い道だった。黒い森、黒い住宅地を抜けて、寂しい黒の中を、車は決戦の砂浜へと運んでゆくのであった。




