第百四十五天 隠密追跡ッ!目指すは栄光の階段・・・
うっそうと茂る細木の群れは、邪魔くさいレベルでまとわりついてくるが、新緑の若葉は青々として爽快だった。それがこの急な斜面にどこまでも続いている。一つの生命のようにさえ見えてくる。
眼下には住宅が広がり、その先に青い海。そして、観覧車がある。
ここは観覧車から見える、山腹の中だった。
大きな巨体を茂みに縮こまるように、金明は一心に観覧車を見張っていた。
「ぬぅ、しんどいぜぇ。男のストーカーってのはよぉ」
と、観覧車に乗る竜牙達の姿を遠目から見張っていた。
黒王と接し、同士討ちになったところを今度こそ仕留めようという狙いだった。後がない。後がないからこそ、確実に殺るしかないッ!地味なストーカーと言えど、金明にとっては、殺るか殺られるかの大勝負だったッ!
―――だが、その時ッ!!
「ホッホ・・・でかい図体をずいぶんと縮めて、みっともない姿だな」
「ッ!?」
突然に背後から声をかけられて、金明は身を起こしたッ!細木が砕け散って落ちる。
全身黒タイツをまとった男が立っていた。角ばった顔をした男で、いやらしさが滲み出ているッ!
「ナニモンだおめぇ」
「ご挨拶だな。こちらは弱い貴様の手助けに参上したというのにな」
「あぁッ!?ぶち殺すぞッ!」
金明は言葉より後か先か、拳をふるったッ!!だがしかしッ!男は紙切れのようにひらりとその拳を避けて、木立にからまった。
「おいおい、いきなり同士討ちとか、勘弁願いたいぜ」
「じゃかましいわッ!」
さらに拳を振るうッ!からまっていた木が粉みじんに吹っ飛んだが、男はやはり紙切れのようにひらひらと飛んでいく。
「味方だと言っているだろう。貴様の親父様より遣わされたんだぞッ!」
「・・・ッ!?何?」
金明は拳をピタリと止めた。親父の命令は絶対だッ!
「ホッホ・・・親父様の言葉は絶大なようだな。よく飼いならされた家畜だぜ」
「その減らず口を黙らさねぇと、気が収まらねぇな」
「待てッ!」
男は手を前にビシっと出した。
「非礼は詫びる。口が悪いのは癖なもんでな」
「あの世で悔いなッ!」
「親父様を裏切る気か?」
「ぐぬぅッ!?」
「この俺を殺せば、親父様に逆らうも同じだぞ」
「ぐぐッ!・・・おめぇ、ナニモンだッ!」
「やっと話を聞く気になったようだな。俺の名は金卑(ルビ:コンピ)。魔の国最強の格闘家だ」
「最強・・・だとぅッ!?」
魔の国最強の戦士は、この俺だッ!という自負が、また金明を怒らせたッ!
「そう熱くなるな。あまり派手にやらかすと、奴らに気づかれちまうぜ?」
「いちいち俺に指図してんじゃねぇッ!」
「指図をしたくなるほどの醜態をさらしているのは、どこのどいつだ」
「醜態だと?」
「こんな林で縮こまって、貴様には戦士としての誇りはないのか」
「俺は親父の命令でこうしてんだッ!大聖天の野郎と黒王を同士討ちさせてから、殺さなくちゃなんねぇんだよ」
「ホッホ・・・とことん家畜のようだな」
「あぁッ!?」
「失礼。要は大聖天とその一味、黒王の首を持ち帰れば良いのだろう?何も親父様の言う通りにする必要はないだろう」
「おめぇ・・・」
「何か?」
「いや、なんでもねぇ」
あいつらの強さを知ってて言ってるのかと金明は続けようとしたが、やめた。それではますます己が貧しいッ!
「さすがに、今の三対二という状況では分が悪いが、別行動の隙を狙えば、どうとでもなるだろう」
「・・・」
「貴様がやらないというのなら、俺は勝手にやらせてもらう」
「ッ!?」
「指をくわえてみているがいい。この俺が栄光の階段を駆け上がるのをな」
金卑は背を向けて歩き出した。
この男の戦いに対する自信は、かなりのものだったッ!
金明はこの男を放っておくべきか悩んだ。だがしかしッ!金盧・・・親父が選んだ精鋭ッ!それ程の実力者だという事なのだろうッ!
「おい、待ちやがれ」
「何か?」
「あいつらが泊まってる町はこっちだぜ」
「ホッホ」
金明と金卑は歩き出したッ!
栄光の階段を上るのは俺だッ!
静かなる闘争が今、始まるのであったッ!




