第百四十三天 特別奉仕ッ!戦士達の寄り道ッ!!!
翌朝を待っても、明江は変わらず泣きじゃくって、憔悴した面構えだった。これではまるで、親元から引き離してきた悪党のような心持である。
持て余した三人は、とりあえず浴場へ連れて行って、体を洗わせる事にした。浴場に行くのにも明江は怖がって、竜牙と朝霧が入り口までついていって、朝霧が待っていた。
「母親のを昔、すいていたことがあります」
と、信が明江の髪を整えてやった。髪が整うと、だいぶ元通りだッ!
「俺のはいい。明江に食わせろ」
「大聖様がそんな、いけません。わたしが・・・」
「出てくるぜ」
朝食は信が拒んだが、竜牙が強制的に辞退した。聖天は食わなくてもなんとかなる。
箸の進みは遅かったが、明江は上の空ながらも食べていた。その姿には、朝霧と信もほっとした。
「食後はアールグレイでしょう?」
「いえ、和食でしたし、ここは緑茶に限ります」
「和食にもアールグレイは合いますよ」
「いえ、断固として緑茶をオススメします」
「ぐぬぬッ!」
食後、紅茶派と緑茶派の戦いが繰り広げられた。
「ジャンケンポンッ!」
と、勝負をして、朝霧がおいしいアールグレイをいれた。
信は刀の手入れをしながら、明江に語りかけていた。しかし、うなずくばかりで明江にはパワーを感じられない。
ところへ、竜牙が紙袋を手に帰ってきた。
「おい。これを着ろ」
ガサガサと、白のレースが可愛らしいワンピを取り出した。
「おぉ!竜牙にしては、なかなかのセンスですね」
「あん?殺すぞ」
「あッ!すいません・・・」
明江に気を取られてうっかり口を滑らせた朝霧は土下座であるッ!
「わたしもこれはナイスチョイスだと思いますよ。さぁさ、明江さん着てみてください」
信は明江の膝前に置いた。明江は見つめていたが、手に取ろうとしなかった。
「さっさと着ろ。出るぞ」
竜牙が急かして、明江はようやくトイレで着替えた。
「どこへ行くんです?竜牙」
強い日差しが真夏のような暑さだった。
バスターミナルはがらんと何もなくて、熱気だけがゆらゆらとただよっていた。
「フン・・・息抜きにな」
竜牙が珍しく涼やかなスマイルだッ!大復活してから初めてかも知れないッ!
バスは竜牙達が来た道を戻っていた。海沿いの断崖は角を曲がると新しい町が顔を出して、劇場の垂れ幕のようだ。右側の海はブルーに眩しい。
「不思議なものですね」
信が海の方を見ながら、なんとなく口にした。
「なにがです?」
「この海の向こう側には邪悪な気で溢れていたあの町があるのですよね?」
「ええ」
そう、この海のほどなく向こうには、つい先日に激闘を繰り広げたあの魔都があるッ!魔都は邪悪な気に溢れていて、常に黒ずんで見えていたッ!だがしかしッ!どうだッ!この海は青々として、日光のきらめきに包まれてマボロティックな南国の花園だッ!そんな気配をまったく感じさせないではないかッ!
「こんなきれいな海の向こうにとても信じられない」
「それが、自然の偉大さなんでしょうね」
朝霧も信につられるように、なんとなく言った。
三つ目の町で竜牙達はバスを降りた。
「遊園地ッ!?」
朝霧は驚いた。降りた目の前にある橋の先には、なかなか立派なゲートが口を開けていた。
「あん?文句あんのかよ」
「・・・いえ。意外だったものですから」
「てめぇ、殺されてぇのか?」
と、朝霧はあいかわらずの土下座コースである。しかし、明江のためとは言え、昨日までは今にも黒王に挑みかからんとしていた竜牙が、こんなに純粋な遊びの時間を用意したのには信も意外だった。
ゲートをくぐると、客は少なかった。
「がらんとしてますね」
「ハッ!貸切みたいでいいじゃねぇか。いくぞ」
と、さっさと竜牙は歩き出した。
色々なアトラクションがあったが、明江の様子を見ると、刺激的なのは良くなさそうに見えて、観覧車の前に立った。
「てめぇらは二人で乗れ」
「えッ!?」
「四人も乗ったら、暑苦しいだろうが」
「しかし、大聖天様、わたしは今日初めて乗りますが、こんな小さな籠に男と二人で乗る意義がどこにあるというのですか?」
信の意見はもっともであるが、大胆だッ!
「あん?負け犬同士ぴったりな二人だろう?ハッハッハ!おら、乗るぜッ!」
そう言われてしまうと、返す言葉がないッ!
竜牙は明江の手を引っ張って、さっさと乗り込んだ。
「どうします?」
と、二人は取り残されたが、列に入ってしまった以上、乗るしかなかった。




