第百四十一天 異風堂々ッ!挑戦状と再会
「おかえりな・・・どうしたんですかッ!?信さん」
朝霧は帰ってきた薄汚れた信に紅茶を放り出して、駆け寄った。
「いえ・・・なんでもないんです。大丈夫です」
と、信は制止した。
「・・・そうですか」
「何を飲んでいたのですか?」
「ベルガモットティーです。町中を探し回りました。飲みます?」
朝霧の紅茶に賭ける思いは信の情熱をも上回るッ!!!
「いえ、わたしは緑茶派です。大聖天様は?」
「どこかへ出ていかれましたね」
「・・・なるほど。お風呂へ行ってきます」
信はタオルを抱えて、疲れた体をひきずるように出た。
給仕の女があわただしく行きかうのを眺めながら、信はだらだらと歩いた。
だが刹那ッ!信はピンと精神が張りつめたッ!疲れていても戦いとなれば、すぐに体が反応するッ!
何事もない旅館の廊下だった。だがしかしッ!信の戦いのセンサーはびんびんで、それは前方にいる黒い長髪の男の圧倒的な存在感だったッ!
男は信に向かって歩いてくる。信も負けじと進んでいく。目の前に来て、
「・・・おまえが成平 信か」
低い小声のささやきが美声である。顔もイケメンで、まさにパーフェクトイケメンマンッ!
「だとしたら?」
信のクールなイケメンも負けてないッ!
男は黙って、胸のポケットから書状を出した。シャツの開いた胸板がたくましい。書状には、果たし状と書かれていた。
「俺の名は五閃。あとはわかるだろう」
「御聖院ですか」
「そう。俺が最後の一人だ」
「最後?あなた方は五人だったと記憶していますが」
信は四突が知らぬ内に殺られている事を知らないッ!
「俺がその五人目だ」
「・・・なるほど」
「お前が下種野郎であれば、この場で斬り捨てるつもりだったが、正々堂々と勝負することに決めた。さすが、四人を破っただけの事はある」
「フフフ・・・別にわたしは今でもかまいませんよ」
「強がりは止せ。お前の体力がリミットなのは、誰が見てもわかる」
はい、強がりでした。
「お前とは、万全な状態で戦いたい」
「・・・そうですか」
「日時と場所はそれに書いてある。決着はその時に」
五閃は言って、信を通り過ぎた。背中もまたたくましかった。聖なるパワーでの威圧もなく、実に紳士的だッ!あいつ、イケメンを極めてやがるッ!
信は、懐に書状をしまうと、風呂へと歩いた。
コォォォォっと、風の吹き抜けるような笛の音のような透き通った音が室内に響いていた。青白くまばゆい閃光が部屋に満ちて、光の胞子が部屋中に浮かび、瞬いている。
そんな銀河を凝縮した空間の中心に、竜牙は胡坐をかいていた。手には黄金の球体を持っている。黄金の球体はよく見ると瓶で、微かに覗く透明なガラス玉の中にも青白い光が詰まっていた。
「そろそろ行くか」
閉じていた目を竜牙がゆっくりと開いた。
ふっと光が闇に染まった。おんぼろな小屋から見上げると、外は真っ暗で山頂の城がライトアップされていた。
竜牙は黄金の瓶を眺めた。青白い光はまばゆく希望にあふれている。
そう、これは希望なのだッ!打倒、黒王の為のッ!
山を下りて、フラリと町へ出た。
島の夜は早い。
アーケードのシャッターは閉まっていて、灯りだけが煌々とついている。遠くに聞こえる飲み屋のざわめきがなんだか恋しく聞こえる。それが一層ものさびしい感じを与える。しかし、疲れた竜牙にはその静寂が逆に心地よかった。
カツンカツンと靴音の響きを楽しみながら、旅館へと歩いていた。
アーケードはまったくの無音だったのだが、途中から何者かの足音が混ざってきた。その足音は不規則なリズムで、聞いてて落ち着かない。
足音が近い。竜牙は思わず音のする方へ眼を向けた。
商店の軒先にうなだれるようにしていたその姿に、竜牙は目を見張ったッ!
「明江ッ!」
服はところどころに破け、髪はボサボサでみっともない原始人のようなそれは、顔をあげた。明江だったッ!
明江は竜牙を見つけると、目をカッと開いたッ!そして、涙をあふれさせたッ!
「竜牙ッ!?竜牙ッ!!??うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!」
明江は竜牙の胸に泣きついたのだったッ!




