第百四十天 特訓前夜ッ!どこまでも孤独な戦士たちっ!
朝霧が目を開くと、木板の丁寧にはまった天井があった。
長い眠りの前を思い出して、ハッと飛び起きると、世界の終焉のような暮れなずんだオレンジが窓にあふれて、部屋まで満ちていた。
窓際に立って、外を見る。美しい松並木が目の前にあって、小高い山が目の前だ。そのいただきには、キャッスルだ。
―――ここは、天国?
朝霧はよくわからないでいると、
「バーカ。まだ地獄だぜ」
と、気配もなく後ろから竜牙の声だッ!
「竜牙ッ!」
朝霧は振り返った。
「てめぇをバス停まで運ぶの大変だったぜ」
「・・・い、いや。なぜ?」
朝霧は返り討ちにされたにも関わらず、生かされてるのがミステリアスな感じだッ!
朝霧は竜牙を断罪しようとした男。このままでは、いつ敵にまわるかわからないサバイバルッ!
「言っただろ?てめぇは俺の敵じゃねぇってよ」
竜牙はとうぜんのように返した。
「は?」
「敵じゃねぇ以上は、斬る理由もねぇってことだ。・・・フッ、斬るに値しねぇとも言うがなッ!ハッハッハッ!」
「胸に突き刺さることを言いますね」
朝霧はうつむいた。さすが大聖天ッ!器の広さがパシフィックッ!こんな男に挑んだ愚かな自分が恥ずかしい。
「まあ、てめぇにはもう少し俺の下僕でいてもらうぜ。ハッハッハッ!」
上機嫌に笑うとさっさと部屋を出て行ってしまった。
だがしかし、その背には孤独の影が潜んでいたのを朝霧は見逃さなかったッ!
―――ああッ!竜牙・・・。あなたはどこへ行こうというのですか?
朝霧を旅館に運んですぐに信は、用事があると急き立てられるように出ていった。
バスターミナルに駆け込み、ちょうど着いたバスで、南へ海沿いを走った。風は弱く、海原はおだやかだった。日光を浴びて、光の粒子が波間に戯れている。別荘や旅館街の建物がキラキラとまぶしい。
だがしかし、信の顔は緩まないッ!行儀良く座り、終点を目指していた。
崖沿いのカーブを一つ抜けると、今度はものものしい海上施設が見えて、もう一つ抜けると、小さな島々が浮かぶ町に着いた。
バスを降りて、信は海沿いをぐるりと迂回して、小島を目指した。
点在する小島は橋立と呼ばれていて、日によって陸続きになるようだったが、今日は海原が埋めていた。
信は防波堤に立って、
「よし・・・」
と、つぶやいた。昨日下調べをした通りで、パーフェクトな予定だ。
―――あとは・・・
信は精神を集中したッ!聖なるパワーと闇のパワーを均一にするッ!
そしてッ!超高速移動だッ!その移動の素早さで、海面に踏み込むッ!あまりの速さに海に落ちる前に、体は前へ進む。向こう岸が大きくなってくるッ!だがしかしッ!ふっと強風にあおられたかと思うと、信のキリキリと張りつめた集中が切れて、海原にザブリと落ちたッ!
信は、重い体を防波堤へと打ち上げた。
「ハァ・・・ハァ・・・まだまだ」
と、信は再び集中して、海へと飛び込むッ!だが、また落ちる。防波堤へ重い体を引きずる。
そうッ!信の修行とは、この橋立を橋立なしで、超高速移動で渡る事だったッ!
とにかく常に均等を保てるようにするッ!信はとりつかれた様に頑張ったッ!
―――やはり、大聖天様は格が違いすぎるッ!足手まといにならないようにせねばッ!
予定していたとは言え、信の特訓にはいつも以上にみなぎるパワーでマックスだッ!
竜牙と朝霧の戦いを見て、信のクールなハートが燃焼したようだったッ!
日が山にひっかかっても、信は特訓を続けた。
向こう岸に渡れるようになってきても、確実になるまで続けた。
飽くなき力への渇望は、ハンパなかったのだったッ!
―――だがしかしッ!
日もとっぷり暮れ、辺りが闇一色になった頃、信はまるでずぶぬれの鳥のようなかっこうで、フラフラとようやく帰路へ着いたのだが、バス停についてびっくりしたッ!
なんとッ!バスがなかったッ!
「・・・。わたしとした事が油断していましたね。歩いて・・・。いやッ!高速移動だッ!」
信はバス停で集中すると、高速移動を繰り返したッ!
熱いハートが青春に一番星だッ!




