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第百三十六天 絶対死角ッ!コルゲンの固い忠義ッ!

 ぐったりと深く堕眠した朝霧をコルゲンはそこらに放った。

「とどめはあとにしますか」

「フン・・・ずいぶんといい体つきしてんじゃねぇか」

 竜牙は刀を構えなおして、ニヤリと嫌味だッ!

「・・・やっと、あなたのお出ましですか。この日をどんなに待ちわびた事か。感動で体が震えてしまいますよ」

「あん?ビビってんだけだろ。俺はポチに用はねぇ。てめぇの新しいご主人様はどこだ?」

「私がご主人様だ」

「嘘こいてんじゃねぇ。てめぇみたいなチキン野郎が、そう簡単にデビューできるわけねぇだろ。てめぇには黒幕がいる。その黒幕が明江をさらった」

「なるほど。あなたは明江の行方を知りたいと見える。だがしかし、残念ながら私はそれとは無関係です。ご主人様が私なのは事実。私を倒してこの城の屋根瓦を見ても、誰もいませんよ。私がラスボスです」

「フン・・・そうかな?明江の匂いが微かだがてめぇの薄汚ねぇ邪臭の中に混じってるぜ。てめぇは明江と会っている」

「なるほどなるほど・・・。あなたはずいぶんと鼻が利くようですね。いかにも私は明江と会った。しかし私は、あくまで仲介しただけに過ぎない」

「相手の名は?」

「あなたなら、もうお分かりなんじゃあないんですか?」

 コルゲンはニヤリと笑った。童顔だから、イタズラっ子のように見えて可愛い。

「つまり、野良犬のてめぇは新しいご主人様にすり寄って、靴をペロペロしたって事か」


 コルゲンの顔が突然曇ったかと思うと、姿が消えたッ!

 竜牙は即座にその行方を捉えたが、もう懐にいたッ!想像を超えて速いッ!

「なにッ!?」

 コルゲンの刀が横に振りぬかれるのを、竜牙はかろうじて止めた。斬光すさまじく威力もなかなかに重いッ!これが本当に、あのコソコソしてやがったコルゲンなのかッ!

「・・・人の話を聞かない人だ。ご主人様は私だと言ったはずです」

 ぐぐっとコルゲンは力をこめる。


―――ッ!?なんて、馬鹿力だッ!


 竜牙はビビった!これまた想像以上だッ!実はパワーとスピードを備えたなかなかの強敵ではないかッ!

「聞いてないようですから、もう一度自己紹介もしておきましょうか・・・。私の名はコルゲン。あなたがこの世で最後に耳にする名だ」

「・・・ホゥ。おもしれぇ」

 竜牙はぐぐっと筋肉をひきしめたッ!そして、暗黒うずまくコルゲンの刀を気合で押し返したッ!そして第二にッ!刀の軌道をそらして、反撃の突きだッ!コルゲンの無数の目がパチパチパチリコだッ!

 竜牙の剣撃を正確に捉えて、避けるッ!そして、切り返してくるッ!

 見るに華麗な斬り合いが始まるッ!!!竜牙は肉体のスペックのみで、オーバーリミットで戦っているッ!そのスピードの速さやパワーは、長年の経験から培われたものだッ!そして一方、コルゲンはというと、体中の目のめまぐるしい瞬きによって、相手の動きと自分の動きを把握して、最短の攻撃を返しているようだった。彼の暗黒パワーに力強さはないッ!しかし、大聖天にすら物怖じしない気迫がその力を手助けしているようだッ!


 しかし、竜牙が本気を出せば、コルゲンの力ははるかに及ばないものだった。

 しかししかし、竜牙は己に宿る聖なる光のパワーを爆発させる事はなかったッ!

 だから、良い勝負ッ!


「ぐッ!」

 竜牙が音をあげて、後ろへ下がった。互角に見えて、コルゲンの方がわずかに上のようだったッ!なんてことだッ!

「どうしましたか?」

「・・・フン。雑魚の分際で粘るじゃねぇか」

「粘る?それはこっちのセリフです。いつまでもったいぶる気ですか?」

「あん?」

「ラストシャイニング・・・一撃必消の必殺剣。なぜ撃たないッ!」

「ハッ!そんなものてめぇごときに使うまでもねぇよッ!」


 今度は竜牙が飛び掛かったッ!だがしかし、その無駄のない素早い斬撃もあっさり受け止められるッ!しかし、竜牙はよゆうのスマイルッ!よく見たら、刀を持っているのは片手だ。そして、突然、懐から取り出していたのは爺に作ってもらったホーリーナイフッ!それで斬りつけようと言うイレギュラー攻撃ッ!

 だがしかしッ!コルゲンの前ではすべての動きがスローモーッ!あっさりと飛んで避けたッ!それを追いかけるように、ナイフを投げつけたが、それすらもかわすッ!

「そんな奇襲・・・いくらやっても無駄ですよ」

 いつの間にか、背後に回り込んだ竜牙の攻撃をも受けた。ダメだッ!完全無欠のアイだッ!

 しかし、竜牙はあきらめないッ!幾多の斬撃を重ねるッ!

 コルゲンは簡単に受け止める。だんだんそのうちに何故だかイライラしてきている。今度はコルゲンが距離をとった。


「もう茶番はよしましょう。そんななまぬるい攻撃では私は倒せないッ!」

「フン・・・てめぇごとき、これで十分だ」

「・・・調子に乗るなよ、大聖天ッ!さっさとラストシャイニングを撃てッ!私は貴様のすべてに打ち勝ち、勝利をおさめるッ!」

「あん?茶番なのはてめぇだろ?殺せるってんなら、ごちゃごちゃ言わずにさっさと殺しに来い」

「ラストシャイニング・・・小山田を殺した技だ。私はその技を破って勝ってこそ、意味がある」

「・・・」

「昔の私は、ただ覗き見するしか能のない情報屋だったッ!しかし、我々魔の世界では、力こそ正義ッ!力のない私が情報で取引なんてできるわけないッ!奪われるだけのエビリディッ!のたれ死ぬのも時間の問題だったッ!そんな私を拾ってくれて重宝してくれたのが小山田だったッ!私を立派な一人の魔として見てくれたッ!そんな小山田を殺したのが貴様だッ!私は恨んだッ!恨みに恨んだッ!貴様への復讐を心に誓い、肉体改造をほどこした。それが今の私だッ!はっきり言おうッ!今の私は貴様より強いッ!・・・さぁ、ラストシャイニングを撃てッ!全力を出し、私に打ち砕かれて、果てよッ!」


「ハッ!どおりでてめぇの鼻息が荒いわけだぜ」

 竜牙はニヤリと笑った。

「これは忠義だッ!」

 と、コルゲンはまっすぐだッ!

「フン・・・忠義だろうがなんだろうが、死ぬのはてめぇ。それだけだ」

「まだ、そんな減らず口を叩くかぁッ!ならば、殺ってみろッ!大聖天ッ!」

「あぁ・・・殺ってやるぜ」

 竜牙が力を一点に集中する構えだッ!


―――来るッ!?ラストシャイニングッ!!!

 

 コルゲンは身構えたッ!

「さぁッ!撃ってこい!私が打ち破ってみせましょうッ!」

 刀の切っ先に光が灯るッ!

 弾けるように光が解放されるッ!


―――今だッ!


 コルゲンはここぞと、全身の目を一斉に開いたッ!!!その瞳はツルツルと輝きを増して、まるで鏡面のようだッ!そうッ!コルゲンの秘策とは、その瞳を鏡のようにすることで、一撃必消の光を跳ね返す事であったッ!

 コルゲンの後ろからも光が差してきたッ!


―――後ろからもッ!?そうか、先ほど投げたナイフからの遠隔操作ですか。しかし、それは逆に好都合・・・。


 前後からのダブルアタックだが、背中にも目を持つコルゲンは両腕を広げたまま、揺るがないッ!むしろ、勝利を確信し、そして自身はただ定められた死を受け入れるポーズだッ!

 いくら体中に目があると言っても、全てが目玉なわけではない。目と目の間のわずかな皮膚の部分は確実に消滅させられる。なんと、コルゲンははなから差し違えるつもりだったのだッ!


―――これで・・・すべてが終わる


 光がコルゲンを包んだ。だがしかしッ!

 消滅の光ではなく、やってきたのは現実的な重い痛みだったッ!

「ッ!?」

 コルゲンは肩口に走った痛みによろけたッ!何が起こったッ!?状況を探ろうにも、光で目がくらんで何もわからないッ!!!白い視界が晴れると、そこには、コルゲンの腕を斬り落とした竜牙の姿だったッ!

「馬鹿なッ!?なぜッ?」

「あの世で考えな」

「うぎゃああああああああああああッ!」

 竜牙の致命の一撃で、コルゲンはあっさり死んだ


 刀を鞘におさめようとして、そういえば他人の刀だと気づいて、竜牙は捨てた。眠りこけた二人、鮮血の海に溺れるコルゲン。立っていたのは、竜牙ただ一人だった。そのむなしい風に吹かれながら、

「言っただろ?てめぇには必殺技なんぞ使うまでもねぇってな」

 と、死体に語りかけた。

 竜牙はラストシャイニングではなく、閃光を放っただけだったッ!竜牙の言う通り、コルゲンには必殺技を使うまでもなかった。コルゲンは目を忙しくまばたきさせて、竜牙の素早い動きに対応していた。ならば、目をくらませてしまえば、動きについてこれない。後ろからも光を照らし、全身をくらませれば、完全なる隙ができる。それを狙っただけのことである。

 コルゲンはラストシャイニングにこだわり過ぎたがゆえに、その欠点に気づかなかったのである。

 挑発に乗らなかった竜牙は、いたってCOOLなのだったッ!!!


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