第百二十七天 灼鉄聖錬ッ!竜牙いきつけの鍛冶屋ッ!
「大聖天様、お待ちしておりました」
信は、砂浜で膝をついたッ!
「おかえりなさい。竜牙」
「・・・明江はどうした?」
竜牙はまじめな顔をして、言った。
「それが、一昨日喧嘩をしてしまいまして、出ていったきり帰ってこないんですよ」
朝霧は困った顔をしたが、
「いや、そうじゃねぇ。あいつの持っていた白桜寺の枝の聖なる気配をまるで感じねぇ・・・」
「ッ!?そうでした。すっかり忘れてましたッ!信さんはどうなんです?感じますか?」
「・・・いえ」
信は苦しそうな深刻さだった。
信は元々そういうことは不得意だった。それでも、明江が出ていった直後はちょっとだけその気配をたどることができていたものだが、少ししてまったく感じ取れなくなった。
それだけなら、明江に何かがあったと、朝霧にすぐ知らせていただろう。しかし、信の深刻な表情はそこに収まらなかった。自分自身の持つ白桜寺の枝の聖気も消えていた。懐を見ると、枝は腐っていた。
修行の影響・・・そこに信は思い当たった。
ダークパワーの影響で枝はくさり、己の感覚をも鈍らせている。
信の心は、このまま続けていいものかと、悩迷していたッ!
「どうしました?ウ〇コですか?」
「ああ、いえ。・・・なんでもありません」
「明江が枝を捨てちまったって可能性もあるがな」
「そんなッ!それじゃ、彼女はわたしたちと完全なる決別をするつもりなのですかッ!?」
「さぁな。ま、案外そっちのがあいつには良いかも知れねぇな」
「冷たすぎますよ」
「らしくねぇな・・・俺はなれ合いに生きねぇ。てめぇもそういうスタンスだと思ってたんだがな。じゃあな」
竜牙は砂浜を歩き出した。
「ッ!?どこへ?」
「あん?仕込みだ。ついてきたきゃ、好きにしろ」
信は、砂浜をざっざと力強く歩きはじめた。朝霧もあわてて、続いた。
旅館街と駅を結ぶ道中に、古びた商家が建ち並んでいて、そこに、菊一文字の金文字が大きい看板がある。菊一文字は、有名な刃物ブランドであるッ!しかし、竜牙は別に包丁に用があるわけではないッ!商家の裏側へと進み、住宅地をうねうねと歩いて、小さな工房の前についた。
白髪ハゲの爺がとてかんかんと、柿色の鉄をたたいている。
「おい、じじいッ!」
「ああああッ!爺とはなんじゃッ!?まだ、お兄さんじゃッ!・・・って、おぉ、まだ生きてやがったのか、若ぇの」
竜牙を見ると、爺はめちゃ驚いたようだった。
「それはこっちのセリフだぜ」
会ったのは何十年も前の事だ。
「こちらのお方は?」
「なんじゃ、今日は美男子と同伴かッ!?菊治じゃ!俺は菊治ッ!」
「20本ほど、つくってもらいてぇ」
「あああッ!あんた、すんげぇの持ってんじゃねぇか。それ以上、その刀を近づけるなよッ!頭いてぇぜ」
「聖なる気を感じとれるんですかッ?!」
信はおどろいた
「なんじゃそりゃ?って、おぉ、あんたもなかなかの持ってんじゃねぇか」
「フン・・・俺の刀を作ったのはこいつだ」
「竜牙のッ!?あの刀ですかッ!?」
朝霧はおどろいたッ!
「爺、俺がほしいのは十字のナイフだぜ」
「ナイフだぁ?そんなものいらねぇだろ?か~ッ!頭いてッ」
「てめぇが決めることじゃねぇ。さっさと作りやがれ」
「ああッ!そうかい。じゃあ、明日まで待ちな」
菊治は立って、準備を始めた。この工房はめちゃくちゃ熱い。サンのような暑さだッ!その灼熱の輝きが聖なるパワーにあふれているようだった。まさに聖なる工房ッ!聖剣のいずる場所に違いなかったッ!
信はその華やかな灼熱の輝きに心を打たれた。
「あの・・・菊治さん。ここは修理もやっているのでしょうか?」
「あああッ!あんたのはダメだよ。魂が入ってやがる。俺にはなおせねぇ」
菊治は即答だった。一発で北王子流水の性質を見破るとは、只者ではないッ!いや、プロかッ!
それにしても、刀が直せない事に、信はショックだった。
―――・・・やはり、あの技を使いこなす他に道はないッ!
「明日また来るぜ・・・」
「ちょっとッ?!竜牙。デザインや要望はないんですか?」
朝霧は意外な顔をした。
「あん?ナイフの形をしてりゃそれでいいんだよ。こいつが打つ事に価値がある」
「聖なる力が宿るわけですか」
「いいや、違ぇな。何もねぇ、まっさらに透き通った刀ができる。そこに俺の聖なる力を籠める」
「なるほど」
信の刀は誰が籠めたものなのだろうと、ふと疑問に思った。刀の由緒はわかっても、刀の声、ダニエルの成り立ちまではわからなかった。
「・・・と、忘れるところだったぜ」
竜牙はニヤリと笑うと、つかつかと棚へと歩き出した。
「?」
竜牙は棚から適当な刀を手に取った。そして、何をするかと思えば、部屋のすみへスローイングッ!
「おいッ!なにしやがるッ!」
「竜牙、何してるんですかッ!?」
「大聖天様ッ!?」
各々おどろきのリアクションッ!!!
―――だがしかしッ!
刀が壁にささると同時に、ぶしゅぅと変な音がした
「フン・・・ここからは企業秘密だぜ」
「ッ!?!??!」
朝霧はおどろいたッ!なにもない空間に目玉がいきなり現れて、真っ二つになって溶けていた。
―――まったく気づかなかったッ!!!
朝霧は竜牙を見た。こんな微弱な邪臭を感じ取るなんて、これが、大聖天の実力は限界を知らないッ!!!
「てめぇらはもっと鼻を鍛えた方がいい。町中目玉だらけだってのに、気づいてねぇんだから、あきれるぜ」




