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第百二十三天 完全世界ッ!黒王の野望ッ!!!

 蔵の店は駅から少し離れた住宅地の中に、ひっそりとあった。

 明かりも少ない住宅地の中に黒い蔵の塊は恐ろしき巨大な闇のようで、明江は足を止めかけたが、勇気をふりしぼって入り口をのぞいてみれば、暖かい光が強く漏れていた。

 しかし、店の目の前に立ってみて、明江はどうして来てしまったのだろうと思った。


―――いったい、何しにわたしはここに来たんだろ。


 相手はあの竜牙を瀕死に追い込んだ、深黒のオーラを持つ魔。普通に考えて、まともな相手じゃない。

 明江はおばあちゃんが殺されたのを思い出して、体が震えた。やはり、やめようと体が逃げ始めたッ!


―――だがところがッ!


 ガラリと引き戸がとつぜんに開いたッ!

「何をしている?」

 黒王だッ!ニヤリとうす笑みを浮かべて、明江を見ていたッ!明江は一発で動けなくなったッ!

「あ・・・え?あ・・・」

「我と話にきたのだろう?入れ」


「いらっしゃいませ」

 と、店員の明るい声が、同じ店内なのに別世界のようである。

 黒王は深黒のオーラをまとっていなかった。

 テーブル席には、オレンジジュースと、ミートソーススパゲティの食べかけがあった。

「好きなものを頼め」

 店員にメニューを渡されて、明江はメニューの字を見ていたが、内容なんて頭に入ってこなかった。テーブルの向かいには、つい先日殺そうとしてきた相手なのだッ!このままずっとメニューで顔を隠していたいとさえ、思った。

「おいッ!」

 黒王はパスタを食べながら、明江のメニューを引っ張った。顔がのぞいた

「はいッ!」

「決まったか?」

「え、ああ」

 明江がびびっていると、黒王は店員を目でよびつけた。黒王の眼力が強すぎて、店員はすぐに気付く。いや、そもそも黒王の肉体がセクシーで、ライダースーツが珍しいから、男の店員が下品でちらちら見ちゃうッ!


「お決まりでしょうか?」

「あ、えっと・・・同じので」

 明江はてんぱったあげく、もう適当だったッ!なんだって、うまいだろッ!

「オレンジジュースと、高級和牛のミートソースパスタですね。かしこまりました」

 と、店員のスマイルがフルーティーッ!


 店員が厨房へ消えると、黒王は笑い出した。

「なにをびびっている」

「び、びびってるに決まってるでしょ」

 明江は素直だった

「フン!だますなど下等な事はせんわ。貴様は安心して食事をするがいい」

「それより、何の用ですか?」

「竜牙は完全復活したのか?」

「そんなこと、なぜあなたに話さないといけないの?」

「ということは、まだ生きているということか。世界王の仕業だな」

 明江はしまった、と口に手をあてた。ひっかけてきたのだッ!

「ハッハッハッ!馬鹿な女よ。まあ、そんなことははなからわかっていたことだ」

 黒王はパスタをフォークでくるくるして、口に運んだ。

 その食べ方は上品で、黒き気品にあふれたまるで、ブラックダイヤモンドッ!


 明江の心も少しおちついてきた。水を一口飲んで、まるで素早い昆虫をつかまえるかのように、おそるおそる質問した。

「あなたと竜牙はどういう関係なの?あなた、虎麗さんなんでしょ?」

「その名はとうに捨てた」

「聞いたわ。キヨさんのところへ、竜牙とよく来てたんでしょ?」

「フン・・・口のまわるババアが」

「・・・仲良かったんじゃないの?」

 明江は胸がつぶれる思いで聞いた。触れてはいけない過去、そんな風にうすうす思った。

「ハッハッハ!何を勘違いしている。我とアイツの間に、仲なんてものはない。あのババアの口車にのせられ、のぼせあがっていたアイツを連れ戻しに来ていただけのことよ」

「口車?おばあちゃんが何をしたの?」

「過ぎた話よ。・・・しかし、こうも他人の詮索をしたがるとは、さては貴様、竜牙に恋しているなッ!?」

「ッ!?」

 黒王はニヤリと笑った。

 明江はびっくりしたと同時に、なんだか過去の自分を見ているような遠い感じがした。ただ、恋などと言われると、気に食わなかった。

「そんなんじゃありませんッ!」

 明江は言い返したが、黒王はすぐにまじめな顔をして

「アイツはやめとけ」

「えッ?」

「アイツは欲を斬り、血にまみれ、憎悪に狙われて生きている。争いを当然の事として、なくそうとはしない。いや、アイツだけではない。聖天のすべてがそういう存在なのだ。人間もそうであろう?」

「え?そんな・・・」

「成平 信を見てみろ」

 黒王の顔が迫った。

 明江は怨霊寺本坊の事を思い出した。魔都の事を思い出した。人間同士でさえ殺し合いが行われているのは完璧な事実ッ!


「愚かな欺瞞よ・・・。我は正義という名の横暴をぶち壊し、聖天も魔も関係ない。争いのない、何の悩みもない完全平和な世を作り出す。我の目指す王はそこにある」

「王・・・」

「貴様の望む世界はなんだ?」

「望む世界?」

「我の思う、争いのない平和な世界・・・そうであろう?」

「うん」

「我は、聖天でも魔でもない。王なのだ」

 黒王は柔らかな表情だったが、厳しさに満ち溢れていたッ!その表情は、まさに王の風格だった。いや、クイーンというべきかッ!

 明江はそのパーフェクトな姿に言葉が出ないのだったッ!


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