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第百二十一天 失意疾走ッ!意外な再会ッ!信の更なる力ッ!

―――竜牙達の光の真ん中に


―――黒王は深く強く突き刺さった


―――その黒くて長い巨大なビルディングは


―――大きなどす黒い影を作り出す


―――これは光の弱さなのか、生物の弱さなのか


―――発する光はいつしか淀んでいく


―――いや、そもそも誰も発してなどいないのだ


―――光の在処は誰にもわからない


―――光を目で追える者はいないのだから・・・




 明江はレンガの道を外れて、めちゃくちゃに疾走していた。

 もう走っていないとやりきれなかった。心の苦しさが爆発して、息の苦しさすら、忘れていた。

 朝霧にあんな冷たいことを言われるとは思わなかった。それがショックで、思い出すと、心臓がしめつけられるようだ。

 でも、絶対におばあちゃんが死んでいいはずはないッ!朝霧が悪いッ!

 信だって、朝霧の味方をするのはおかしいッ!


 もう、朝霧も信も誰もいないのに、明江の足は走っていた。

 頭が冷静になって、明江は走るのを止めた。駅前のごちゃごちゃした繁華街の小道に逃げ込むように入った。

 肺が今までのツケを取り立てるように、痛い。その痛みなのか、心の痛みなのか、明江の涙はよくわからなかった。そして、目の前がぼんやりと暗いのは、めまいなのか、心の具象なのか。


 呼吸を整えても、目の前は暗かった。飲み屋街の狭い路地は、空を板が塞いで昼間でも薄暗かった。

 飲み屋なだけにまだシャッターを閉じて、眠っている。そのほこりっぽい静けさがなんだか心地よくて、明江はぼうっと歩いた。

 路地は、建物の形にそって、カクカクとひねくれていた。直角に曲がって、駅の姿が洞穴の先に見えると、目の前に少年がいた。

 明江はびっくりしたッ!角を曲がってとつぜん現れたのもそうだが、なにより見覚えがあったッ!


「お久しぶりです」

 少年は丁寧におじぎをした。かけたサングラスが不気味に黒光りして浮いていた。

「何をする気ッ!?」

 明江はおびえたッ!そう、この少年はかつて明江を言葉巧みに誘い出した政治家、小山田の秘書のような人ッ!だが、名前が思い出せない。明江は思い出せないが、そうッ!あのコルゲンであるッ!生きてやがったのだッ!

「そう、怯えないでください。もうあなたはこの私をとっくにご存じだ。何をするにしたって、わざわざ姿を現す必要はないでしょう?」

「ますます怪しいッ!さては、小山田とおっぱいさせようとしてるんでしょうッ!?」

「小山田は死にましたよ。もう私はそこらへんにくすぶっているただのザコです。何の力もない」

 コルゲンはあきれたように言った。

「そうやって油断するのを待ってるんでしょッ!」

 明江はコルゲンに背を向けて、歩きだした。


「待ってください。私はただ言伝に来ただけです。どうとらえるかはあなたの好きにしたらいい」

「言伝?」

「あなたに会いたがっている者がいます」

「わたしは会いたくないわ」

「どうぞ、あなたの好きにしたらいいでしょう。私は言伝を頼まれただけなのです。会いたい者とは、黒王」

「ッ!?」

 明江はびっくりした。なぜ、黒王の名が出てくるのかッ!

 おばあちゃんを殺した張本人ッ!そして、竜牙が隠していた魔であり、かつての恋人でもあったのだろう存在。

「わたしに何の用があるってのよ?」

「私が頼まれたのはそれだけです。場所は蔵の料理屋、今夜七時。後は行って確かめるといいでしょう。もちろん、確かめないのもあなたの自由」


―――ピピピピピピピッ!


 明江の頭に料理屋のイメージが流れ込んできたッ!こういう時、コルゲンは便利だッ!

「私は確かに伝えましたよ」

 コルゲンは狭い路地の壁際にふらりと歩み寄ったかと思うと、闇に溶けて消え失せた。

「なんだって言うのよッ!」

 薄暗い路地に明江の声がやまびこだッ!




 山間へのびる道路は車通りも少なく静かだった。深い森の輪郭はゆるやかに近く盛り上がっている。

 よどみのない澄んだ水は波風もたたず、静かに雲を映していた。その灰色の中に信の顔があった。

 信はレンガの道を突きあたりまで歩いて、聖域を右に折れて、ふらふらとあてもなくさまよった。そうして、ガードレールとフェンスをつぎはぎにしたような橋の手すりにもたれて、川面をながめていた。

 己の未熟さに、川に映る自分のクールなイケメンまでもがにくらしかった。


 もっと強くならねば、と思う。

 だがしかし、黒王の強大なパワーを前には、絶望する他になかった。

 明らかに人の手におえるレベルではなかった。どころか、援護に入る余地すらない。

 ただ、指をくわえて、だまって見てるしかなかったのだッ!

 しかし、それは嫌だッ!なんとしても、強くなりたいッ!

 だがしかし、竜牙が戻るとすれば、二日後。そして、再び黒王とあいまみえるのもすぐのことだろう。


 信の心の中のイライラはつのりにつのって、ただ何かひたすら努力しておこうという気すら失せてしまっていた。

「お若いの。お悩みのようだね?」

「ッ!?」

 そんな背中に声をかけられて、信はふりかえった。

 黒いフードをかぶった小柄な人物が立っていた。こんな不審者、何故気づかなかったッ!?

 黒いフードの奥は闇に包まれてわからない。声からして男なのはわかった。そして、黒い闇だが、ニヤリと笑ったのもなんとなく、わかった。

「何故、こんな距離まで気がつかなかった、と驚いているようだね」

「え・・・ええ」

 信はうなづいてしまった。それだけの落ち着きと優しさが、その黒いフードにはあった。

「簡単なことだ」


―――刹那ッ!姿が消えたッ!


 そして、するどい音がうしろで響き渡ったッ!

「ッ!?」

 信はふりかえる。電信柱があって、その下に黒いフードがいた。まったく見えなかったッ!どころか気配すら感じ取れなかったッ!竜牙のような常識を超えた速さとはまた違うッ!なにか恐ろしい神隠し的な速さだったッ!

 また、それどころではないッ!黒いフードの手が電信柱を撫でている。いや、電信柱の真ん中の縦筋をなでているッ!いやいやいやッ!電信柱に筋なんてないッ!

 信はハッと電信柱を見つめると、上から、一筋の亀裂がきれいに下まで入っていたッ!

 そうッ!この黒いフードの男は見えない高速で信の横を駆け抜けたばかりでなく、電信柱を真っ二つに斬っていたのだッ!

 黒いフードがまたニヤリと笑ったのが、雰囲気でわかった


「なにが起こったと、言いたげだね」

「どうやって・・・。あなた、人間ですか?」

「正真正銘の人間さ」

「馬鹿な・・・」

「知りたいか?」

「え?」

「この力の秘密を知りたいか?」

 黒いフードの声の一つ一つは強い意志をもって迫るようだった。

「そうですね。種明かしくらいはしてもらえると、うれしいです」

 この男は強いッ!自分よりもはるかにッ!

 信はふるえた。しかし、それでも平気なふりをした。そして、さらなる力の手がかりをつかめれば、とうっすら思ってもいた。

 信の心を一発でひきつけるほど、この黒いフードの力は圧倒的にして不可思議だったッ!


「ついてこい」

 黒いフードが歩き出した。信もそれについていったッ!



もしかしたら、また後で書くかも


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