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第百二十天 無理難題ッ!やられちゃえばいいのよッ!

 灰色なレンガな道は、いつもどおり静かだった。

 建物と建物の間から、朝霧たちは自然と襖をあけて降り立った。

「では・・・」

 世界王がふすまを閉めようとして、朝霧がとめた。

「あッ!世界王様」

「なにか?」

「わたしたちはここで待っていますと、竜牙にお伝えくださってよろしいですか?」

「わかりました。伝えておきましょう」

「ありがとうございます」

「・・・あなたとは、また会うこともあるかもしれませんね。フフフ」

「え?」

「では・・・」

 ふすまはしめられて、ただの細いすきまだ


「わたしはかつ丼。みなさんは?」

 朝霧が店で聞いた

「そうですね。ナポリタンで」

「わたしは・・・イセエビカレーッ!」

「おぉッ!さすがッ!では、それで」

「はいよ」


 店主はキッチンへクッキングだ

「結局なんだったんですか?あの方は」

 信はちょっと機嫌が悪い。離れ離れはなっとくできないという感じだッ!

「わたしも詳しくは知りません。ただ、世界王はすべての創生の神だとわたしの師から聞いたことがあります」

「そーせーの神?」

「わかりやすく言えば、すべての生みの親というわけです」

「わたしはお母さんのお腹から生まれたよ?」

「その生まれたあなたの容姿などを決めたのが、世界王というわけです」

「えッ!?よくわかんない」

 明江はバカだ。生んだのは母親でも、外見や、そこに宿る魂は決められない。そこに魂を宿し、外見を形作るのがここでいう創生なのだッ!

「とにかく、明江さんも信さんも、このわたしもすべて彼によって作られたということですよ」

「なるほど・・・」

 と、信は話についてきてはいるが、そんな存在が衝撃過ぎて、信じられないッ!


「だとするとですよ。すべて彼がものを作っているとするとですよ。魔も世界王様が作られた?」

「すべての創生の神であれば、そうでしょうね」

「えッ!?聖天もつくって、魔もつくったのッ!?おかしいよッ!バトルになっちゃうじゃんッ!」

「そうですね。わたしもそのあたりはよくわかりません。ただ、師からは世界のあらゆる物すべての父であると言われました」

「ふ~ん」

 なんだか、はっきりしない話だった。


「はい、かつ丼、ナポリタン、イセエビカレー」


 三人は食事になると、黙った。

 だいたい食べ終わって、明江がイセエビの頭に夢中になりながら、

「いやだ。おばあちゃんのお墓作ってないや」

 と、ぼうっとぼそっと思い出した

 信は、重い顔になった。わたしにもっと力があればッ!!!

「人間は葬式というものをやるのでしたね・・・」

「うん」

「・・・必ず仇を討ちましょう」

「・・・ええ」

 信も力なく続いた。あの黒王という女はそれほどハンパなかったッ!


―――だがしかしッ!


「もうやめようよ」

 明江は静かに言った。テーブルの両手がぷるぷる震えていた。

「もうやめよ。こんな戦い。バカげてるよッ!戦わなくたっていいじゃないッ!」

「・・・あなたはいい加減にした方がいい。魔がどれだけの悪事を働いてきたか、あなたは目の当たりにしてきたはず、まだそんな事を言うのですか?戦わなければ、殺られるんですよッ!」

 信も心の底に熱き怒りをたぎらせていたッ!もう我慢のリミットオーバーッ!

「やられちゃえばいいのよッ!傷つけるよりはマシよッ!傷つけるから、向こうも仕返しにくるんだわッ!わたしたちが戦いをやめれば、済む話なのよッ!向こうだって話ができる人がいるんだし、話し合えば、わかってくれるはずッ!」

「明江さん、それはさすがに無理やりですよ」

 朝霧が静かに言った

「無理矢理じゃないわッ!朝霧たちこそ、無理矢理、戦いにもっていってるだけじゃないッ!血みどろになって誰かを傷つけて・・・しまいには仲間同士で傷つけあってるじゃないッ!イカれてるわッ!聖天の宿命ッ!?そんなくだらない都合で、なんでおばあちゃんは死ななくちゃならないのよッ!何もしてない善良な市民が巻き添えになっていいわけがないわッ!悪事を働いているのはわたしたちなのよッ!」

 明江にとって、おばあちゃんの死は計り知れないものだと、二人は知った。

 しかしだからと言って、聖天の宿命、信の白桜寺としての宿命を否定されるのは、許されないッ!

 信はやられちゃえばいい、とか言うむちゃくちゃな発想に頭がブチ切れ寸前だった。守ってきたもの、そして、失ってしまったもの、それらの屍を乗り越えて、信は生きてきた。その全否定とくれば、怒り指数は頂点に達して計り知れないッ!誰によって平和が守られているのかッ!もう机をたたき割りそうな勢いだったが、それをスッと手が制した。信は我にかえるほど、ゾッとしたッ!

 朝霧が恐ろしい冷徹の面をかぶっているッ!


「何もしていない善良な市民?フフフ・・・笑わせてくれますね。何もしていない事が、なぜ善良なんですか?自分の手を汚さず、何にもしない。それは怠惰ですよ?ただのニート。そんなニートに明るい未来なぞ、絶対にやってこないッ!」

「~ッ!もういいッ!朝霧、キライッ!みんな、キライッ!」

 明江は涙をまきちらして、店を飛び出したッ!

「明江さんッ!」

 と、信が呼び止めたが、もうレンガの道の角に消えていた。


「引き止めなくていいんでしょうか?」

「・・・放っておきましょう。そのうち戻ってくるでしょう。それにここは彼女の地元ですし、嫌なら家へ帰ることだってできるんです」

「そうですか」

「ところで、あの黒王という女は何者なんです?」

「わたしもよくわかりません。ただ、実は以前、朝霧様がダークグリーンパウダーを封印しに行っている間に、一度見たことがあるんです。その時は、大聖天様と何か話しておられました」

「なんですってッ!なぜそれをもっと早く言わなかったんですッ!」

 朝霧はめずらしく声があらぶった。

「申し訳ありませんッ!その時は、わたしも魔だとは断定できず、魔であれば大聖天様が見逃すことはあるまいと、思っておりましたので」

 信は深く頭を下げたッ!そして、また悔やんだッ!

 報告すら、わたしは満足にできないのかッ!!!


「・・・そうですか。しかし、魔と知っていて大聖天である竜牙がだまって見逃したとなれば、それは大変な罪ですよ」

「はい」

「もしかすると、竜牙はここへ帰ってこないかもしれない」

「まさかッ!世界王様の用というのは、その事でッ!?」

「可能性はありますね。おそらく世界王様もあの戦いは見ていられたでしょうから、すべてご存じでしょう」

「まずいですね」

 信は勢いあまって口をすべらせて、あわてた。竜牙に魔のつながりがあった事がバレて、まずいと思ってしまった。しかし、それは裏切り者に味方するようなものだ。

「・・・ともかく、わたしたちは竜牙を待ちましょう。話はそれからでも遅くありません」

「・・・そうですね」

 二人は沈んでいた。何もかもが止まってしまったようだった。

 信は胸が苦しくなって、立ち上がった。

「どうしました?」

「少し風に当たってきます」

「わたしは、宿をとっておきますよ。待ち合わせは、聖域で」

「はい」


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