第十二天 旅立ち
「世話になったな」
竜牙はパリッとしたコートをはおった。
「こうか?」
慣れない手つきでなんども着なおしている。
明江はぱぁっとうれしそうだった。
「わたしよくわかんないけど、あなたたちについていくわ。春休みだし」
「はぁッ!?」
朝霧がおどろいた。
よく見るとかわいい鞄を両手にもって膝の前にある。
白色のスカートもフリフリしてる
「だめだ」
と竜牙はにらみつけた
「え?なんで?」
明江はおびえたようだった。すごくこわいのだ
「・・・」
「なんでダメなんです?」
朝霧がのぞきこむみたいに言った。
竜牙は戦いにまきこみたくなかった。これは自分だけの戦いなのだ。深い悲しみを生むことになる。
「てめぇは・・・」
さっしろ!と言いそうになって、
「まあ、いいんじゃないんですか?ねぇ、竜牙」
と朝霧がさえぎった。
「そうですよ」
「なにがいいんだ。馬鹿が」
三人は電車にのった。
特急にのって北へむかった。
二人掛けの席で明江は後ろで寝てた。昨日の晩が晩だけにつかれていたのだろう
「・・・あなたらしくもない」
「ああん?」
朝霧のつぶやきにいらっときた。
「魔には無常なあなたがあの時隙を見せるなんてね」
と朝霧は冷ややかに言った。
小山田と対峙した時、明江が横入りしてきたあの時だッ
「ハッ!おまえこそ優しいふりして最恐の野郎だぜ」
「なにがです?」
「あいつが魔だったってことも教えないんだろ?」
「そんなこと知りません。彼女が知りたいことを知るだけですよ。私は教えたいときに教えるだけです」
「クソ野郎が」
「フフフ・・・。ま、一人くらい人がいた方が楽しいでしょ。長い旅なんですから。それに・・・魔にまたいつ狙われるかわかったもんじゃありませんからね」
大聖天の宿命が彼に付きまとうように、大聖天に関わってしまった者もまた宿命に追われるのだ
「フ・・・」
竜牙は窓の外に目をやった。
山林と畑がのどかに流れていく。空気は青くすんでいた。聖域の空気だった。




