第百十九天 自己紹介ッ!分断される鉄の絆ッ!
「まず、意識不明だったお二人には自己紹介をしておきます。僕には名前などないに等しいのですが、周りからは世界王と呼ばれています」
「ッ!!」
「世界・・・王?」
「・・・」
朝霧たちは三者三様だった。おどろいた朝霧に、信と明江は注目した。
「朝霧様、世界王様とは、どのような方ですか?」
「・・・い、いえ、わたしも少しだけ耳にしたくらいでよくは知りません。ただ、我々聖天の頂点に立つ存在だと・・・」
「なんですってッ!!」
信はガタンと立ち上がった。
「これはとんだご無礼をッ!」
と、土下座した。生き返っても礼儀は忘れないッ!
朝霧もこればかりは立ち上がった方がいいか、ちょっと迷って、腰を上げるか下げるか考え中だッ!
「そんなにかしこまらなくて結構ですよ。僕は竜牙に用があっただけで、あなた方はついでですから」
「・・・つ、ついでッ!?!」
「自分は空気なんだ程度に思っていてください。僕はそう思っています」
「・・・」
「あのッ!そういえば、竜牙は?」
もともと空気の明江にはへっちゃらだッ!
「竜牙は眠っています。あと二日くらいは起きないでしょう」
「竜牙は重体なのッ!?」
「治療はもう終わりました。重体は重体で、その通りです。胸を貫かれて、内から闇が食い破ろうとしていました。それを食い止めていたのは、竜牙に宿るスターライトのパワーのおかげです。他の者であったなら、一秒と持たず、闇に呑まれて消滅していたでしょう」
「つまり、治療後で安静にしていると?」
「安静ではありません。治療はもう終わりました。五神武と意思疎通をはかるために、眠りについています」
「馬鹿なッ!五神武との意思疎通はこのあいだ済んだはず」
信はびっくりした。そう、たしかに眠りから覚めて、自分を救ってくれたのは竜牙だった。
「眠り・・・いや、五神武との通魂の儀は、本来五日間必要とします。眠りについている間、外敵から身を守るため、五神武の持つ千里眼が使用者を守ります。眠りについている間、あなた方がピンチになった。それゆえに竜牙は儀式を中断して、うってでたのです」
「つまり、五神武の力を100%引き出していなかった?」
「そうです。あなた方が守り切れなかったがゆえに、竜牙は100%を引き出せなかった」
「ぐッ!!」
信や朝霧は胸が痛い。
「ちょっと待ってよ。そんな言い方ないじゃないッ!朝霧も信も一生懸命に戦ったんだよッ!」
「明江さんッ!」
朝霧はあせった。マジで物怖じしない明江最強である
「事実は事実です」
世界王は機械的に冷たい発言だ。だが、それがまた明江にはカチンときたッ!
「じゃあ、あなたが戦えば良かったんじゃないのッ!?あなたが戦えば、朝霧や信が傷つくことも、竜牙がこんな目にあう事もなかったッ!あんだけ強いんだしッ!」
「そうですね」
「そうですねって、何よッ!なめてんのッ!」
明江はガタンと立ち上がった。あくまで機械的な世界王に我慢の限界が来たぁッ!
明江はツカツカと、世界王の方へ歩み寄ると、平手打ちをかました。パチンと軽快な音がした。
「ッ!!!」
いろんな意味でおどろきまくる一同。
「・・・どうして、このあいだみたいに避けないの?」
「避けない方が利があると、計算して判断しました」
「なによ?避けるまでもないって言いたいわけ?」
明江の声はふるえて、さらに拳を振り上げたが、その体を朝霧がおさえた。
「明江さん、いけませんよ」
優しく説得されて、やるせない気持ちで腕を下げる。
「違います。僕は創生と破壊のバランスを計算したまでの事です。創生と破壊は表裏一体。いわば光と影。光が照らされれば、影は必ずできる。なにかを創生すれば、なにかが必ず破壊されるのです」
「なにをわけわかんないこと言ってんのよッ!日本語でしゃべりなさいよッ!」
わけがわかんなくなって、明江はまた暴れだしたが、朝霧は手に力をこめて、それをおさえたナイス反応
「明江さん、もうやめましょう。世界王様には世界王様の宿命があるのです。責めるのは筋違いですよ」
「そう。明江さんが気にかけてくれるのは、ありがたいことですが、世界王様が言ったことは厳然たる事実ッ!わたしたちは未熟だった。それはつらくても受け入れなくてはいけません。先に進むためにはね」
信は優しく涼しかった。ほほ笑みかけたそれは少しく霧がかった悲しみを含んでいた。
「余計なことをしゃべりすぎました。あなた方は竜牙とここで別れてもらいます。竜牙にはまだ用があるのですが、あなた方にはもう用がないので、去ってもらいます」
「はぁ?意味わかんないッ!わたしは竜牙に用あるんですけどッ!!」
「あなたの都合はそうでしょうが、僕にも都合があるんです」
「ですが、世界王様、さすがにそれは受け入れがたいです。わたしたちは一緒に戦ってきた仲間です。いなくなれと言われて、はい、そうですか、というのは承服いたしかねます」
信もさすがに納得いかなかった
「そうよッ!わたしたちは仲間なのッ!消せないきずながあるのッ!あ、わたしたちのごはん代がもったいないって言いたいわけ?ケチくさッ!」
「わかりました。去りましょう」
「そうよッ!朝ぎ・・・えッ?」
「わたしたちは、本来ここに長居してはならない存在。そう言う事なのでしょう?」
「そういう事です」
「ならば、仕方のないことです」
「朝霧さんッ!いいんですか?それで」
信が珍しく熱い
「竜牙にはまた会えるでしょう」
と、朝霧は涼しく笑って、
「いいですよね?明江さん」
「え?・・・ヤダッ!そんなの絶対ヤダッ!朝霧おかしいよッ!わたしたちは仲間なんでしょッ!?おいてくなんてできないッ!」
「・・・あくまで去らないというのなら、強制的に追い出すことになりますがよろしいですか?」
世界王はやはり機械的だが、その言葉にはさすがにゾクっとした。
明江は左天にこの部屋に落っことされたのを思い出した。ここがすごい空の上だったら、ノンパラシュートスカイダイビングだッ!
「ほら、逆らえませんよ。明江さん」
朝霧はわらった
「くぬぅ~ッ!」
「世界王様、去る場所は選ばせていただけるんでしょうか?」
「はい」
「それでは、イセエビカレーの店の前で」




