第百十八天 無味白壁ッ!沈黙なる日々ッ!
「左天さぁ~んッ!」
「はい」
明江の呼び声に、扉を作って左天が出てきた
「やっぱり、今日はマーガリンじゃなくて、バターがいい!」
「はい」
左天は食卓の上にバターを出した。
焼きたてのトーストに、イチゴジャムにマーガリンにバター、それから紅茶とゆで卵と、ベーコンとスクランブルエッグ。端には、メロンも置かれていた。これはすべて明江が頼んだものである
焼きたてのトースト二枚目でマーガリンよりも、バターの方がいいなと、明江の気まぐれで、左天は呼び出された。その前にもなにか思いつく度に呼び出されていた。しかし、左天はどこまでも機械的であった。
部屋へ来た当初は、このツルツルとした真っ白な異界にちょこっと恐怖を抱いて、左天さんを呼ぶことにすらためらい、トイレもギリギリまで我慢して悶えていた。それが今では慣れて、完全にわがまま主であるッ!
「ありがとう」
「では・・・」
「あ、ちょっと待って!」
「なにか?」
「左天さんも一緒に朝食食べない?」
「もういただきました」
「そっか」
明江は少し退屈そうな顔をした。白い部屋に三日は一人でいた。ずっと誰もいない空間にいるのが、そろそろ明江にはきつかった。
「では・・・」
「あ、ちょっとちょっと!」
「なにか?」
「朝霧とか竜牙は、なにしてるの?」
「治療中ですね。成平 信はもう済みました」
「済んだッ!?生きてるの?」
「はい」
「じゃあ、会わせてよ!」
「今は寝ておられます」
「え~」
「では・・・」
左天は金ふすまの中へ帰っていった。
明江はテレビをつけた。キャスターがやたらハイテンションによくわからないことをしゃべっている。時間は6時半だった。明江にしてはすごく早起きだ。やる事がないから、退屈で眠ってしまうのである。だから、早く起きてしまうのだった。明江はこう見えて、アウトドア派なのであるッ!
ため息に、頬杖をついて、だらだらとトーストをかじっていると、ほどなくしてふすまが現れて、左天が入ってきた。
「なにか?」
「・・・」
「ごめん。すべった?真似してみただけ」
明江は左天の無表情にたえきれなかった。
「主がおよびです。来てください」
「えッ!?今?」
「はい」
「ちょっと!わたし、寝ぐせついたままでトーストかじってるんだけど?」
「そのままどうぞ」
「は?ヤダ」
「では・・・」
左天がスッと明江の地面をさした、穴があきやがったッ!!!
びゅぉっと下へ落とされたかと思ったら、椅子にストンと腰かけた。心臓が浮き上がって気持ち悪い。
左天は強引に退去させたのだッ!きっと今まで使い走りさせられたのの仕返しに違いないッ!と明江は思った。
「エクストリームですね」
と、向かいに懐かしい声。我に返ると信が正面だった。
「信ッ!生きてたのねッ!良かった」
「一度死にましたよ。でも、生き返らせてくれたのです。そこの左天さんに」
左天が頭を下げた。
「えッ?死んだのに、生き返れるの?」
「そうなんでしょう。わたしはこうして生きているので」
「ふ~ん」
明江は胸のなかがモヤモヤとした。
「それよりも明江さん、あちらの方はどなたですか?主と聞いておりますが」
長い白テーブルが右にのびて、その向こうの終わりには、世界王がいた。
明江はびっくりして、頭をさげた。まるで気配がなかった。
そこへ、また新たなふすまが現れて、朝霧が入ってきた。
「朝霧ッ!」「朝霧様ッ!!」
二人は声をあげた。
「おはようございます」
朝霧は失われたはずの右腕を二人にふって、若々しいさわやかさだ。再生してやがるッ!
「どちらに?」
「そちらに」
右京が指をさした。明江のとなりに朝霧は腰かけた。明江はちょっぴり嬉しい
「そろったようですね。では、始めます」
黙っていた、世界王がとつぜん口をひらいた。




