第百十六天 大魔徘徊ッ!無常なる進撃ッ!
「ヌッフッフ。ちぃとばかり張り合いがないが、父上の命なんでなぁ。・・・しかし、あの大聖天をこうもあっさりやっちまうとは、あいつタダモンじゃねぇぜ」
「くッ!!」
信はしんどい体に気合入れて、刀をかまえる。
「おッ!よく見りゃおまえ、成平 信だな?俺の弟をよくもぶち殺してくれたなぁ」
「なんだとッ!?」
信はビビった。金とうかべて思い出したッ!まさかの金若の兄だというのかッ!!!
この大柄な男が怒り狂う姿に、信はおぞましい未来を見て、ぞっとした。
「人間っても、スルメみてぇな野郎じゃねぇか。こんなのに殺られちまうとは、情けねぇ・・・」
「情けないのは、あなたの方よッ!禿頭ッ!」
「明江さんッ!?」
とつぜんの声に、信がふりかえった。禿と言われて、金明も見ざるを得なかった。
「んあッ!?」
「あなたなんて、ただのハイエナじゃんッ!男なら正々堂々と勝負しなさいよッ!万全の状態で対決しなさいッ!」
「明江さんッ!いけませんッ!殺されたいんですか?」
明江は聞いてないッ!とにかく、戦わずに済ませようと必死だったッ!武人の心をついたいい作戦だッ!
だがしかしッ!
「キンキンうるせぇな。卑怯モンだろうが、勝った奴が正義だろうがッ!」
金明には通用しないッ!むしろ受け止めつつ、冷静に言い返されたッ!体のわりにバカじゃないッ!
「おら、スルメ。かかってこい。一瞬でひねりつぶしてやるからよ」
金明は、指をちょいちょいとさせた。
信はやるしかなかったッ!
「明江さん、わたしが戦っているあいだに、大聖天様を連れて逃げてください」
「信ッ!?」
「わたしは大丈夫です。とにかく大聖天様を頼みますよッ!」
信は、金明へ弱弱しい歩みで向かっていったッ!
「ダメよッ!信ッ!死んじゃうッ!」
「ホゥ・・・かっこいいねぇ。色男」
「・・・」
信はなにも言わず、金明の目の前まで来た
「参る」
信は刀をふるったッ!だがしかしッ!その斬撃は力なく、ゆるやかだッ!
「カタツムリだなッ!」
金明は、拳を信にたたきつけたッ!刀が届くよりも早く、金明の手甲が信の頭を砕いたッ!かに見えたッ!
ところが、それは桜だったッ!
―――桜華・花霞ッ!瀕死の体力でなけなしの必殺技だッ!
「知ってるぜぇ。桜なんだろ?ヌゥゥゥゥゥゥンッ!!!!」
金明はそのまま、地面にまで拳を振り下ろしたッ!そして、大地に暗黒パワーを流し込んだッ!地面から、黒い爆発がマグマのようだッ!
信は隙をついて、後ろに回り込んだが、大地の激しい揺れに姿勢を乱されて、黒大なる爆発にのまれたッ!
「うぉああああああああああッ!!!」
「見つけたぜッ!!!」
桜華・花霞、敗れたりッ!
信は首をつかまれて、つるされた
「ぐぅ・・・」
「しょっぺぇ最後だったな」
ゴキリと信の首がへし折れた。だらんと信の力は失われた。
「おいおいッ!どこへ行く気だよッ!!!」
金明は、信を人形のように投げ捨てた。
明江が竜牙の体を引きずって、逃げている。その歩みは遅く、10メートルも進んだか怪しい。それでも明江はふりかえらず、ただまっすぐに歩いた。
だがしかしッ!無常にも金明はひとっとびで追いついてしまったッ!
「腹上死させてやるぜッ!」
金明は、背負った明江を竜牙もろとも叩き潰すつもりだッ!ああ、拳が振り下ろされたッ!!!
だが、刹那ッ!
ふわりという感触で、金明の拳は止まったッ!なんだ、この羽毛布団のような感触はッ!?と、金明が見ると、そこには、小柄な男が立っていた。
「・・・何者だ、てめぇ」
「保護者ですよ」
小柄な男は真顔で、実に機械的に言った。




