第百十四天 若き聖天ッ!五神武を賭けた死闘ッ!
―――78年前
「てめぇ、こいつをあずかってくれねぇか?」
「え?」
竜牙に言われた若きキヨは、思わず引いた。竜牙がさしだしてきたのは、なんと五神武クランツ・クレールだったッ!
「それはあなたたちにとって、大事なものなんじゃないの?」
「ザコ共にはな。俺にとっちゃ、無用の長物だぜ。こんなものなくたって、俺はつええからな」
竜牙はスマイルだ。
大聖天静空が殺された後、作戦本部では五神武を誰が受け継ぐかという話になった。五神武は奇跡の神秘を宿していて、持ち主の大聖天が亡くなったそばには、必ず次の使い手がいるのだッ!その奇跡は聖天界ではもはや常識ッ!戦場にいたものの誰かが持つことは必然だった。
竜牙は戦いの後すぐにキヨの家へ引っ込んでしまっていてその場にはいなかったが、話は勝手に進められた。
とうぜん、何人かが立候補した。手にしたものが大聖天となり、中聖天以下をたばねることになるのだ。またその剣に秘められた魅力もハンパない。不毛な言い争いに始まり、小さな戦にまで発展しかけそうだった。
しかし、まったくその剣とは無縁な聖天たちからは、竜牙が持つべきだという声が大きかった。
あの無数にいた魔のなかへ飛び込み、静空様の仇を討った。この功績に勝るものが他にあろうかッ!?立候補している者共は、なにをしていたッ!?
そう言われてしまうと、いくら実力がある中聖天たちも、ぐぬぬっとならざるを得ないッ!
その声があまりにも大きくなってしまったので、翌日、使いの者により五神武はキヨの家へと届けられた。
竜牙は大聖天になった。だがしかし、五神武を持つ資格がないと、自分では思っていた。
あの時、魔の誘いと気づいていれば、静空は死なずに済んだかもしれない。間接的に殺したようなものだ、と責任を感じていた。
だから、手にしたくなかったし、五神武が運命ならば、五神武が決めるゆえに、手にする必要もないはずだった。
「わかった」
キヨは少し考えたが、オーケーした。村の醜い者共のしでかしたことを考えたら、断るに断れなかった。それに救ったのはやはり、竜牙だったのだから。
「フン・・・すっかり素直になって、てめぇらしくないぜ」
竜牙がニヤリと笑いながら、五神武を丁寧に渡した。キヨは刃に触れないようにと受け取ろうとしていた刹那ッ!
「待てッ!」
女の声だッ!
「虎麗さんッ!」
キヨがおどろいたッ!ものすごい顔つきだった。
「貴様、何をしている?」
「あ?てめぇには関係ねぇこった」
「だまれッ!貴様がそんな女に現を抜かさなければ、静空様は死ぬことはなかったッ!貴様が聖天としての分をわきまえていれば、静空様の心が乱されることもなかったッ!下等な人間の女などにッ!」
虎麗がキヨをにらんで、ものすごい殺気にキヨはビビった。
「ハッ!そいつは逆恨みってもんだぜ」
「なにが逆恨みだッ!戦場で突っ走ったのも貴様だろうッ!この失態はすべて貴様が招いた事だッ!魔を殲滅したことは、ただのしりぬぐいだッ!わたしは認めんぞッ!こんな大聖天ッ!」
「・・・ホゥ。なら、どうするってんだ?」
「わたしが貴様を断罪する」
「フン・・・」
竜牙は渡そうとしていた五神武をひっこめた。
「竜牙?」
「キヨ、てめぇは下がってな」
「ダメよ。竜牙ッ!虎麗さんも聖天なんでしょッ!?そんなの絶対だめッ!」
「なら、てめぇが説得するか?」
「・・・」
キヨは黙った。虎麗の殺気だった顔を観たら、無理だった。とてもまともな会話ができそうにない。
「結局、最後は力しかねぇのよ」
竜牙は五神武を原っぱへ放り投げた。五神武は大地に突き刺さって、聖烈な雰囲気をかもしだしていた。
「五神武は使い手が死んだ時、そのそばに必ず次の使い手がいる。・・・つまり、俺を殺せば、てめぇが大聖天ってことだ」
「面白いッ!」
虎麗はみやびやかな剣を取り出したッ!そして、まっすぐだッ!
竜牙はよゆうで、脇の二刀を引き抜くと、それに応じたッ!
剣技は互角だったッ!二刀を華麗にさばき、ついてくるそれを、二刀で防ぎ斬りかえすッ!そんな華麗な戦いが始まったッ!
「フン・・・やるじゃねぇか。だが、ペースアップするぜッ!」
竜牙は光をまとった。シャイニングアーツッ!
竜牙の刀さばきは、めちゃくちゃ早くなって、虎麗は押され始めたッ!
「ハッハッハ!どうした?てめぇの本気はそんなもんかよッ!」
「フッ・・・見ていろ」
虎麗はそんなスピードでもよゆうのスマイル。そして、逆手に持ち替えて、竜牙のパワームーブをとらえたッ!
しゅるるっと力を受け流され、竜牙は姿勢を崩したッ!
「なんだとッ!?」
「それが貴様の甘さよッ!わたしに真似できないとでも思ったかッ!」
虎麗は静空と竜牙の戦いを見て、力を受け流す術を見ただけで取得していたのだッ!虎麗もまた天才だったッ!
「炎に抱かれて塵となれッ!ショットガン・フレイムッ!!!」
無数の炎が目の前だッ!竜牙は思い切って倒れ込んだッ!何発かはもらったが、直撃はかわしたッ!シャイニングアーツの高速はかなり早いッ!
竜牙は足払いをかますが、さっと虎麗はうしろへとんでかわしたッ!
「・・・命拾いをしたな」
虎麗は得意顔だッ!
「フン・・・てめぇ、大聖天に刃をむけることは裏切り、裏切り者は死罪が掟。それはわかってんだろうな?」
「まるで、貴様がわたしを殺せると言わんばかりだな」
「覚悟はできんてんだな。ならいいぜ」
竜牙は、刀を一本捨てた。
「ホゥ・・・、このわたしに一刀で挑んでくるとはなめられたものだ」
「いくぜ」
竜牙は駆けたッ!虎麗はかまえる。その時、虎麗はまだ知らなかったッ!ラストシャイニングの存在をッ!
竜牙は下から強く振り上げるッ!虎麗はそれを受け流したッ!だが、振り上げた先のかまえは竜牙必殺のかまえッ!
―――力を一点に集中させるッ!
「ラストシャイニングッ!!」
「なッ!!!」
閃光がほどばしったッ!
「ぐおあああああああッ!」
虎麗はふっとんだ。いや、わざと飛んで、直撃は避けた。だが、左腕の周りが塵となっていた。
「今、楽にしてやる」
「ぐッ!く・・・そ・・・」
竜牙は原っぱをふみしめて、倒れた虎麗へとゆっくりよゆうの徒歩だった。虎麗は起き上がったものの、出血がはげしく戦える状態ではなかった。
刹那ッ!
キヨが横から飛び出して、虎麗の前に立ちはだかったッ!
「もうやめてッ!間違ってるわッ!味方同士なのに、なんで殺し合うのよッ!」
「どけ」
竜牙は冷徹だッ!だが、今回はどかないッ!
「竜牙は悪くないッ!わたしたち人間が悪いんだわッ!あなたはまったく悪くないのよッ!・・・どうしてもというのなら、わたしを殺してからになさいッ!あなたをこんな目に合わせたのは、すべて人間なんですからねッ!」
キヨは両手をひろげたッ!
「さぁッ!」
ずずぃっと前に出られては、竜牙も困惑したッ!
「ぐッ!くぬッ!」
キヨの後ろで、虎麗はわなわなとふるえていたッ!最大級の屈辱だったッ!
だがしかしッ!虎麗はうしろへ飛び、走り出したッ!逃げたのだッ!
「ッ!」
「追わないでッ!」
追おうとする竜牙を、キヨは両手をひろげて止めた。




