第百九天 痛烈悲壮ッ!止まらない宿命ッ!
「何故ッ!・・・」
信は、自分をかばってくれた事に驚きを隠せないッ!!!
「あなたは・・・五体満足ですから・・・。うおおおおッ!さぁ、動きを止めましたよッ!」
白目をむきそうになりながらも、朝霧は蚊の足をつかんでがっちりフォールドしたッ!朝霧の血はさらに吹きだす。
「ッ!!まさかッ!」
「今のうちですッ!」
「だめよッ!信ッ!!!」
明江がすぐにぴぴっとするどいッ!
朝霧が動きを止めているうちに、攻撃をしろというのだッ!
「ちッ!・・・」
―――ダニエル
―――ダニエルッ!!!
「どうした?」
「力・・・力をくれッ!」
「・・・俺は、シューティングゲームで言えば、ボムみたいなもんだ。撃てるのはあと2発しかないんだぜ?いいのかい?」
「今だッ!・・・俺には今しかないんだッ!」
「自分勝手な野郎だ・・・まあ、貴様の勝手にさせたのは俺か・・・いいだろう」
ほんの0.001秒のつぶやきッ!
そしてッ!
「散桜・芝桜ッ!」
大地が桃色に染まったッ!そして、美しき桜の噴火だッ!
その爆発はすさまじく朝霧も強烈なエネルギーの柱に呑まれ、一緒に切り裂かれたッ!
それでも、勝つにはこうするしかなかったッ!
朝霧の捨身に、信は最大限の対応をしたはずだッ!
「決まったッ!」
もわもわっと上がる煙の中で、信は荒い息だ。芝桜の消費パワーはめちゃ高い。
だがしかしッ!爆炎の向こうから、かすかな羽音が聞こえてくる。はじめ、幻聴かと思ったが、それは・・・絶望だったッ!
「な・・・」
信は恐怖に言葉が出なかったッ!
蚊が飛んでやがった。生きてたのだッ!針と、足が二本がないッ!
朝霧が身体中傷だらけにして、その腕と針をつかんだ姿のまま、立ち尽くしていた。そして、静かに倒れたッ!
「朝霧ッ!」
明江が悲鳴に近いッ!
蚊の体からは、体液が吹きだしてた。自ら体をひきちぎって、芝桜を避けたのだッ!なんという恐ろしき生物
だが、羽はきれいに生きていて、これは圧倒的に不利だったッ!
「ギギギギギッ・・・」
蚊がはばたいて、つっこんでくるッ!リニアカークラスのスピードは当たるだけでもクリティカルだッ!
「くッ!」
よろけた体に鞭打って、なんとか倒れ込むようにして、その体当たりを避ける。蚊も傷だらけでバランスが悪いのか、うまく狙いが定まらないようだったッ!だがしかし、信に刀をふるう力はない、蚊には体当たりという攻撃がある。この差は大きかったッ!
ふらふらと奇跡のようなギリギリ回避を何度も続けながら、その心配はつねに朝霧にあった。
―――朝霧様・・・すいませんッ!わたしが雑魚なばかりに・・・。
明江は小屋の中に駆け込んだッ!土足なのもなにもかも忘れて、竜牙の部屋の引き戸をバンバンたたいたッ!
「竜牙ッ!起きてッ!速く起きてよッ!朝霧が・・・信が死んじゃうッ!」
もう涙ながらだッ!
キヨはうなだれて、動けないでいた。ババアにどうにかなることではなかった。
朝霧の生命を探る・・・。かすかに胸が上下しているようだ。なんとか生きているッ!
「良かった・・・ぐッ」
ほっと安心したのも刹那ッ!蚊の攻撃が顔をかすめていくッ!恐ろしやッ!
だが、信の決意はこれで決まったッ!
―――生きて生きて生き延びて、大聖天様を守り抜くッ!
避けることに全生命力を集中だッ!これは当たらないッ!五感、いや、六感までも回避に専念した人間の潜在能力は計り知れないものがあるッ!ギリギリではあるが、とにかく奇跡がつづいたッ!
「ギギ・・・ギギギギギ」
蚊が休んだ。チャンスッ!・・・と言いたいところだが、信にはその力がないッ!
弱弱しく笑うのみだッ!だが、来やがれ、避け続けてやるぜッ!何日でもなッ!
だがしかしッ!
蚊はとつぜん方向を変えたッ!朝霧の体へ突っ込んでいくッ!ターゲットを変えやがったッ!
「しまったッ!」
信は飛び込んで朝霧の体におおいかぶさったッ!背中に深く鈍い衝撃だッ!ばききっと、アバラの二、三本は確実にいったッ!
勝たなくてはいけない。しかし、その身で勝利を託したこの男を死なせるわけにはいかなかったッ!
「ギギギ・・・」
信の背にのって、蚊は嬉しそうだ。
―――終わった・・・。
その刹那ッ!突風が体を吹き抜けた。
ぼぅっと意識がとびそうになっていたから、これは天国の風ではないか、と思った。
「ハッ!ザコ共が何をイチャついてやがる。てめぇら、ホモか」
これは現実だッ!竜牙が立っていたッ!




