第百七天 狂魔刺貫ッ!恐ろしき変態の正体ッ!
明江が悲鳴をあげた勝手口の前には、上半身だけの人が倒れていた。
血みどろで醜いそれは、この楽園のような花畑を汚すようで、違和感から来る恐激は計り知れないッ!
だがしかしッ!
これでも多くの戦闘をくぐりぬけてきた明江である。死体には見慣れていたッ!
「大丈夫ですかッ!」
「近づいてはダメだッ!明江さん」
朝霧が家から飛び出したッ!だが遅いッ!
「え?・・・キャアアアアアアアアアアアアッ!」
上半身だけの動かなかった人間は、とつぜんぐばぁっと、明江にとびかかったッ!口中血だらけの気持ち悪い死体の顔がとつぜんにドアップだッ!だが、すんでのところで青空の世界へ引き戻された。朝霧が高速移動で明江をかっさらったのだ。明江はいろいろとついていけなくて、ちょっと吐きそうだった。
「ぐ・・・」
朝霧はうめいた
「え?朝霧ッ!?朝霧ィッ!腕がッ!」
「何事ですッ!・・・こいつはッ!?朝霧様ッ!?」
森から信も飛び出したッ!駆けつけが早いッ!だが、ハチャメチャすぎて、何が起こったッ!?
「わたしは大丈夫ですッ!それより油断しないでくださいッ!」
朝霧は腕の付け根をおさえていた。右腕の肘から先がなくなっていたッ!
その右腕は、うつぶせた死体もどきの口の中にあった。くちゃくちゃと噛む音がきもちわるい
「このほどばしる邪臭・・・覚えがありますよ。竜牙に手傷を負わせたあの変態ですッ!」
「なんですってッ!?だが、下半身がッ!」
「いや、血みどろのように見えて、出血していないッ!」
メギメギバギバギッと、変態の体が音をたてて、ビクっとして注目したッ!
腹から黒くとげとげしい足が六本も飛び出して大地を踏みしめたッ!モゾモゾとしていた背中を突き破って出てきたのは、透明に透けた二枚の羽ッ!
「血・・・血・・・竜牙・・・血・・・アギアギギギギギギッ!」
変態は身のえびぞりにして、窮屈そうに、口から針が飛び出したッ!目は真っ黒になり、人間としての表皮は剥がれ落ちていく。
「こ、これは・・・」
「力を解放したようですね。これが奴の正体ッ!」
朝霧も冷や汗をだしている
人の体をうちからつきやぶってでてきた、まがまがしい姿はまるで蚊だったッ!人間大の蚊がほどばしる邪臭を更に強めて、薄気味悪さがマキシマムっ!
「明江さんと、キヨさんは、小屋へ避難してくださいッ!こいつ、只者じゃないッ!・・・ここはなんとしても竜牙を守りますよ」
「・・・はい」
信は刀をかまえてつばをのんだ。緊張感がすさまじい。
だがしかしッ!その緊張感はとつぜんに行き場を失ったッ!
目の前にいた変態だった蚊の姿が消えたのですッ!
「上ですッ!」
「なにッ!?」
もう蚊が信に向けてつっこんできていたッ!朝霧の声をうけて、信はギリでそれをよけた。体をかすめる太い針にゾクっと恐怖だッ!
信は反撃に出ようとしたが、蚊の姿は遠くにあった。速すぎるッ!
高速移動を得意とする朝霧は、追撃に出るッ!そしてッ!
―――クレセントバックスラッ・・・キックッ!!!
出たッ!十八番だッ!しかし、腕がないから、ケリで攻めるッ!
三日月の動きで、背後を・・・取れないッ!姿がもうそこにはなかったッ!
やかましい低音をまきちらして、はるか遠くにいるッ!朝霧のステップをもってしても追い付けないッ!
かと思えば、きりかえしてほんの数秒で目の前だッ!
朝霧はかろうじて勢いを逃がして、避けた。奴の吸血針が頬をかすめた。それはそれで恐ろしいが、このスピードではぶつかっただけでも致命傷だッ!
「な、何が起こってるの?」
小屋の勝手口をちょろっと開けてみている、明江にはわけがわからなかった
「馬鹿なッ!こんなスピードで動けるものなのかッ!」
「通常の虫が大きくなっただけではこうはならないでしょう。すさまじいダークパワーが新たな進化を生んだのでしょうね・・・くッ!」
朝霧は転がって、なんとか避けた。腕がちぎれて刀が持てない圧倒的に不利ッ!くそッ!腕さえあればッ!
信も目の前にいながら、反撃できないでいたッ!刀をふりかぶったころにはもういないのだッ!そして、過ぎ去った後に荒れ狂う突風に視界を乱されるッ!
「くッ!速すぎるッ!」
「ぬ~・・・ッ!!!」
なんとしても、竜牙をお守りせねばッ!という思いから、朝霧はとっさに作戦をひらめいたッ!
「信さん、狙撃を頼みますよ」
「ッ!?」
さらっというと、前へ飛び出したッ!
そして、こりずにやるッ!
―――クレセントサイドニーキックッ!!!
出たッ!すれ違いざまに放つ高速の膝蹴りッ!
だがしかしッ!やはりそこに姿はないッ!すぐに反転して、つっこんでくるッ!それをまた、朝霧は高速移動でよけるッ!覚悟をしていれば、なんとか避けられるッ!よけたら、クレセントアタックだッ!
朝霧は何度も何度も必殺技をくりだしていく。蚊はそれを避けてやりかえして、朝霧も避ける。互いがミスを連発する高速にして高度な戦いッ!
「くそッ!どこを狙えばいいんだッ!」
信は、懐から出した白桜寺の枝に石をかまえて、朝霧の真意がわからなかったッ!
それどころか、二人の戦いは小屋へと近くなっていって、巻き込まないか危険だったッ!と言っている間に、もう当たりそうだッ!
―――クレセントバックキックッ!!!
何度目かの必殺技を朝霧はからぶったッ!蚊はまたターンして刺そうとしてくるッ!
だが、そこで朝霧のアイがキラリと輝いたッ!計算通りッ!
すぐ後ろにあった、ガスボンベを蹴飛ばしたッ!単調なやり取りにすっかりつっこむ気でいた蚊は、その針をガスボンベに突き刺したッ!
―――ここかッ!桜芽・桜一葉ッ!!!
信がよろけた蚊にむかって、正確無比なホーリーシューティングッ!!!
ガスボンベは大爆発したッ!!!




