第百一天 勝利を確信ッ!→からの→どんでん返しッ!
―――78年前。
聖天たちは度重なる連勝をかさね、魔の軍勢は明らかにその数を減らしていたッ!
もはや、魔の殲滅も時間の問題と、誰もがうたがわなかったッ!
そしてッ!そういう戦争終了間際の消化試合みたいなそれは、軽くいじめに近い扱いになるッ!
「ム、ムリだ~・・・」
「か、勝てっこねぇ」
敵前逃亡の魔たち
「うぎゃあああああああああああッ!」
「ハッ!逃がすかよッ!」
狂気をまとった若き竜牙は、魔の血でその身を赤黒くつつんで、本気でヤバかった。
もはや百にもみたない魔たちを、追いかけて、背中から食らいつくッ!羊を追いかけるオオカミッ!
「おいッ!深追いはするなッ!」
「あぁッ!?なら、てめぇらはそこで指しゃぶって見てやがれッ!今日で全滅させるッ!」
竜牙、殺戮勝利の笑顔だッ!かくじつにもってかれるッ!
もう勝ちは確定。そうなると、手柄につられるってのは聖天たちにもある感情・・・。
「独り占めさせるかよッ!」
と、一人のザコが言い出すと、次々とそれに続き始めて、聖天の大軍は我先にと、魔を追いかけ始めたッ!
「おまえ達ッ!大聖天様の命を忘れたかッ!!!」
「命は、魔から町を守ることだろッ!?全滅させちまえば、それは完璧なガードじゃねぇかッ!それに、大聖天様は町長とこれからのことを話し合いにいった。つまりは、戦場は任せたってことなんだろッ!?俺ぁ、いくぜッ!!!」
と、田舎聖天は槍をふりまわして追いかけていった。
「くそッ!どいつもこいつも」
虎麗はケツについて、フォローしたッ!
「ひゃあああああああああッ!」
「うぎゃあああああああああああッ!」
とびちる魔の鮮血ッ!笑顔の竜牙。マジでヤバい
「おらおらおらおらッ!速く逃げねぇとぶっ殺しちまうぜッ!」
「ぐ、ぐもぉぉぉおぉぉぉッ!」
魔たちは逃げていく。しかし、鈍い動きはすぐに追いつかれて、ばっさりやられちまう
だがしかしッ!
ぴこよぉ~んッ!?と、竜牙にとつぜんの寒気だッ!
―――な、なんだ、この寒気は。ヤバいッ!ヤバすぎるッ!なにが起こりやがったッ!
竜牙は血みどろの体をビビって、確認しまくった。だが、異常はない。しかしッ!明らかな異常ッ!風邪をひいたか?いや、断じてノーッ!
バッと背後を振り返ったッ!ま・さ・かッ!
ぶごぉッ!
「いでぇッ!」
刹那の逆走に、仲間たちはぶつかった。竜牙の高速と味方の鎧がぶつかれば、超痛い。だが、そんなことをかまうものかッ!うおおおおおッ!急げぇぇぇぇぇッ!!!
「おいッ!どうしたッ!?」
最後尾の虎麗が話しかけてもそれどころじゃねぇッ!急ぎ本陣へ戻った。
ただよってくる邪臭ッ!!!やりやがったッ!陽動による奇襲ッ!!!
だがしかしッ!そこにおられるは大聖天。竜牙を打ち負かすほどの百戦錬魔ッ!十や百の奇襲じゃ、返り討ちが落ちだし、無駄な心配にちがいなかった。だが、この寒気はなんだッ!?
街が近づいてくる。そして、広場になにかがだんだんと形をはっきりとさせていく。いや、形は見えていたが、見たくなかった。
広場にあるは、やはり百くらいの魔たち、そして、群がっているッ!群がられ、むさぼり食われているのは、黒き縄で四肢をしばられた静空の姿・・・。
「静空ッ!!!」
竜牙は魔たちをふりきって、目の前に立った。
十字架のようなものに張り付けられたそれは、もう下半身しかなくて、誰かすらわからなかった。だが、そのただよう聖なるパワーは、静空のもので間違いない。間違いない。間違いないッ!!!
「あああ~・・・うわああああああああああああああああああああああッ!!!」
竜牙は絶叫した。マジ発狂していた。
「一足遅かったようだな。ぐっくっく」
「殺ったのはてめぇかぁッ!!!」
竜牙はキッとふりかえった。白目をむいて完全にいってやがるッ!
「い~か~にもッ!大聖天を討ち取ったるわ、暗黒進駐軍総司令官・鯨丸様よッ!」
「ばあああああああああああああああッ!!!!」
竜牙はブチ切れて、切りかかった。まるでだだっこのごとき剣撃ッ!だが、超速、並の者はよけられないッ!
しかぁしッ!
この鯨丸もまた、ずるい奴にして、幾多の戦いを生き抜いてきただけのことはある。だから総司令官ッ!
わけわかんない攻撃を無理やりに受けると、なんとッ!つつぃぃぃぃぃっと竜牙のパワームーブをとらえて、受け流したッ!刀が宙を舞ったッ!
「ぐあああああああッ!」
竜牙が激痛にうめいて、うずくまったッ!わき腹に短刀をもらっちまったッ!
「ぐっくっく・・・他愛もない」
「ぐへへへへへ」
「うまそうだぜぇ」
魔たちがわらった。ヤバいッ!竜牙は刀も落として、大ピンチッ!
「・・・あ、あの」
と、弱弱しい声を鯨丸に投げかけたのは、町長とその取り巻きだった。馬鹿な何故逃げないッ!
「ああッ!」
乱暴な鯨丸であるッ!
「ひぃッ!その・・・これでいいんですよね?約束通り・・・」
「約束ッ!?なんのことだッ!」
「そんなッ!大聖天さえ殺せば、不法占拠した施設も返還し、われわれの街から去るという約束だったじゃありませんかッ!」
「ん~?はて~?そんな話は聞いてないぜ~?バ~カッ!そんな条件のむわけねぇだろ~ッ!?てめぇらは皆殺し。女はおっぱい祭よッ!」
「ぐへへへへ」
魔たちは笑っているッ!はかった村人を、さらにはめた魔たちッ!これはあくどいッ!
「おっとッ!子猫ちゃんッ!」
竜牙の斬撃を、鯨丸は受け止めたッ!こいつ・・・完全に見えているッ!
「てめぇも一本刀になっちまえば、ただのはええだけのザコよッ!俺らの仲間をさんざんぶっ殺してくれたなぁ。調子こいたツケを払ってもらうぜぇ?」
鯨丸はニヤリと笑って、刀をべろりとなめた。その大口は不気味で、つるりん頭が怪しく輝いていてキモイ
どごぉ、ばきぃっと、竜牙は刀を止められては、フルボッコである。
血反吐を吐き転がる竜牙。
「さぁて、そろそろデザートをいただくかなぁ」
鯨丸は髭をぴしぃっと伸ばして、竜牙の両手足をとらえたッ!これは静空をしばっていた黒き縄ッ!?ッ!!体が動かないッ!
「あがいても無駄だ。俺の髭は特別製ッ!鋼鉄の5倍は固いッ!いただきまぁ~す」
鯨丸は大口を開けた。それはそれで超大きい。かぶりつかれたら、もう即死。
―――力を一点に集中しろ・・・
竜牙の頭に静空の言葉が浮かんだ。いや、聞こえたッ!!!絶対死んでるけど、静空が頭の中でしゃべったッ!
それによって、竜牙はふと冷静さを取り戻したッ!
―――力を一点に、ちくしょぅッ!やるしかねぇッ!!!
「う・・・ぐ・・・うぉぉぉぉぉぉぉッ!」
竜牙は光のパワーを最大限に発射して、ぐぐぐっと体を動かしたッ!
「無駄なあがきよ。おまえの刀では俺の髭は斬れんよ」
刀をチャ・・・キ・・・ッと構えた。そして湧きあがった聖なるパワーを一点に集中させる。髭に逆らっていた力が抜けて姿勢を崩しかけるがかまいやしないッ!一か八かッ!生か死かッ!
刀の切っ先に光がうまれたっ!そして、前方にそれは破裂したッ!!!
「ぶごろぉぉっぉぉぉぉぉぉッ!あッ!あにぃぃぃぃっひぃぃぃっぃぃいッ!?!?!?!」
一瞬あとには、顔の半分が吹き飛んだ鯨丸が、どくどくと顔面血だらけであるッ!
いや、それだけではないッ!後ろでぐへぐへ笑ってたザコ共なんか、もう体そのものがふきとんで、跡形もないッ!
一撃必滅の必殺剣、ラストシャイニングッ!
竜牙もその威力にはおどろいて、ぼっとしてしまった。
だがすぐに正気に戻って、
「形成逆転だなッ!」
と、ニヤリと笑うと、魔たちをめった切りにしたッ!それはもう滅多切りだッ!総司令官がやられて、魔たちはすぐに退散した。
血だらけになりながらもへとへとで、荒い呼吸の竜牙だけがそこに残った。
「おぉぉぉ・・・。あんた、あの鯨丸をやっつけてくれたのかッ!さすがは聖天様ッ!ありがとうッ!本当にありがとうッ!」
「やったぞ!これで街は平和だぁッ!」
ワアアアアと、町人の歓声があがった。
「うるせええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!」
竜牙は叫んだ
「・・・なぁにが平和だよ。てめぇらの命を今まで守ってきたのはどこの誰だよ。誰に守られて、これまで生きてきたぁッ!!!!!!!」
それは、大聖天静空その人だった。
「守ってもらってることも忘れたクソ野郎共がッ!・・・俺は聖天じゃねぇ・・・てめぇらは今から皆殺しだッ!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃッ!」
竜牙がギラリとにらむと、町人たちは逃げ出した。それを追いかける竜牙ッ!もうへとへとで素早くは動けないッ!だが、一般人をぶち殺すくらいよゆうだッ!
だがしかしッ!
「やめろッ!やめるんだッ!」
正気にかえった聖天の仲間たちが駆けつけて、竜牙の体をおさえつけた
すさまじい戦い。取り残された竜牙。そして、下半身だけの大聖天静空に聖天たちの大軍もぼっとしてしまった。
虎麗は耐え難き衝撃に魂が抜け落ちた。
「ふざけんなッ!俺はぶち殺すッ!皆殺しだッ!」
竜牙はあばれた。だが、はねのける力はなかった。
―――・・・竜牙は五神武をかたわらに、夢にうなされるのであった・・・




