仮説 と 確実
救済という意味の言葉に視線が集まる中、女子13番丸山野乃花が呟く。
「私たちを救うって・・・本当なの?」
「ああ、本当だ。君たちを助けに現実世界からここへ飛んできたんだ」
すると腰のあたりを手で抑えながら和也が立ち上がって、言った。
「この状況から一体どうやって?」
「俺たちはかつてこの『真と嘘』を体験してそして生き残った生還者だ。俺は道原修也、こっちは佐竹美穂さんだ」
美穂は軽く頭を下げる。
「ここへは電波を使って飛んできた。そして君たちを救う手段も同じ電波だ」
「電波・・・だと?」
「そうだ。そしてあくまで仮説だが、このゲームにおいて嘘をついたら死ぬっていうのはこの電波によるものだと思う」
「電波?」
「ああ、電波だ。脳に対して強力な電波を送る。すると脳はその電波に従わざるを得なくなって、例えば『心臓発作』という行動を強制する電波を送ったとすると、脳自身が心臓発作を起こすよう体内に命令する。そうするとその人は自然と死んだことになるだろう?
そして俺たちも現実世界からここにくる時に電波を脳に送り込ませた。詳しくは俺の親父が知ってるが、それでここにこれたんだ」
「それで・・・じゃあ電波は誰が送ってんだよ」
「それはわからない。だがもし電波が原因だとしたら、それを拒否すれば確実に助かるんだ」
和也はさらに質問を重ねる。
「拒否って・・・そんな事どうやってするんだよ」
すると修也はノートパソコンを取り出してあるプログラムを起動させた。
そして修也を中心に、全員が円を描くようにして集まった。
「これから俺の親父が作ったプログラムで、全員の脳を眠らせる。電波を一切うけつけないようにするんだ。その間意識はなくなるが、死ぬことはない。そして残った俺は適当に嘘をついて、脳が従う前に送られる電波を辿って電波の発源地を突き止める。もし辿りついたら何らかの形でそこに異常を起こす。そしたら空間自体が消えて電波をうけつけない君らは強制的に現実世界に追い出されるってわけだ」
全員がまだ理解に追いついていないが、和也だけが質問返しした。
「おい待てよ!いまのって全部仮説を元にした作戦だよな?それに作戦に穴がありすぎる。もし修也が何もできなくて死んだら終わりじゃないか」
「・・・最悪はそーなる。だがそれで終わったら意味がない。もし俺が死んだら美穂が活躍する。俺と同じ方法じゃなくて、別の手段があるんだ。でもそっちの手段はここにいる人間の半分しか生還できない。だから最終手段として考えている」
「修也くん。私は信じてるよ。修也くんが皆を救うんだって」
「ああ。必ずそうしてみせる。心配してなくていい」
そしてキーボードをカタカタと素早く叩き、準備を整わせた。
「なぁ修也。どうして確実に助かってたはずのお前が俺達を命をかけてまで助けようとするんだ?」
和也の問いかけに修也は一度キーボードを叩く手を止めた。
「少し手遅れだったかもしれないが、俺と同じ悲しみを味わって欲しくない。全く関係のない人であろうが、人間であることには変わりない。だから救いたいんだ。もう大事なものを失って欲しく・・ないんだ」
修也の頭の中でかつての仲間たちが浮かび上がった。
最高の親友であった信二。
1年経った今でも忘れはしない。
そして最後の最後で修也の事を想って、自らを犠牲にして救わせた恵。
ほかにも関わった全員が仲間だ。
失うことの悲しさを誰にも味わって欲しくない。
全ての準備を終わらせ、カーソルを【開始】のところへ持っていき、軽くクリックした。
【このプログラムの形式は不明です。本当に起動しますか?】
はい、のところでクリックした。
【起動中5%】
自分がどうなろうと皆を救いたい。
皆が助かるならそれでいい。
【起動中30%】
死ぬことに恐れはない。
ただ仲間のために戦いたいんだ。
【起動中80%】
修也はゆっくりと息を吐いた。
【起動100%】




