襲い来る脅威!! 危機回避の為の政策提言 Act.2
その翌日の朝も、登城を果たしていつものように執務室前へと転移した。
ノックをして名乗るとすぐに、入れとの声がかかる。
「セズシルバス!」
中に入ると挨拶をする暇もなく名を呼ばれた。
顔を上げるといつになく自信に満ち溢れた顔の魔王ジョセフがそこにいる。
「兵士の、訓練相手を引き受けるというのはどうだろう?」
語尾は疑問形で上がり調子になってはいたが、断られるはずも無い良案だとでも言うように、どこかフフンと自慢げだ。
宰相セズシルバスは、その顔にムカつきを覚えるよりも呆れ果てた。
「どうもこうもありません。そんなこと、認められるはずが無いでしょう。貴方の相手が出来る程のものは訓練などに参加してはおりません。貴方は、魔区の治安を守る兵士たちを潰す気ですか?」
寸分の間も無く返された言葉に、敢無く魔王の自信は撃沈した。
訓練場の兵士たちに『的』として提供するのが、日々の業務に一番差し障りのない方法ではあるが、例え、簀巻きにでもして素性を隠したとしても、攻撃を受けていればいづれ簀巻きの皮は剥がれる。
仕える主に幻滅し、気味悪がって城を去っていく者も出るかもしれない。
そう内心で結論付けた魔界の宰相セズシルバスは、その日も仕事に取り掛かっていった。