栄華に生きる偉大なる歩み 其の一歩
一般人には見慣れない不可思議なものでごった返したその一室は、いつ何時も、何やら不気味な雰囲気を漂わせている。
まともな感覚を持つ常人なら遠巻きに扉を眺める程度のその一室。
しかし、その部屋はある種の者達にとっては輝けるユートピア。
夢を現実とする、誇るべき作品の詰まった、素晴らしき我城なのである。
今、その城……もとい一室では、縒れた白衣を身に纏い、目の下に真っ黒な隈を作った者たちが、一画に集まって密やかな笑いを交わし合っていた。
「部長!遂にやりましたね!!」
「あぁ、これで……、此れで!!少ない研究費で遣り繰りしていく苦悩とはおさらばだ!!!!」
高らかに発せられたその声音は、魔王城理科学研究部、部長のものである。
その顔は、晴れやかに笑っている……のだろうと、長年、同じ研究者として共に歩んできた仲間達には分かっていた。
例え、笑みを形作るその眼の下に、色濃い疲れが現われていようとも。
例え、笑みを形作るその口元が、蓄積された疲労によって、引き攣り気味であろうとも。
彼らには分かっていた。
アレは、晴れやかに笑っているのだと。
当然である。
何十年という月日を、同じような顔をして共に笑い、共に泣いてきたのだから。
分からない訳が無い。
此処は、魔王城、理化学研究部、研究所。
一般人には見慣れない不可思議なものでごった返したその一室は、いつ何時も、何やら不気味な雰囲気を漂わせていた。
まともな感覚を持つ常人なら遠巻きに扉を眺める程度のその一室。
しかし、その部屋はある種の者達にとっては輝けるユートピア。
夢を現実とする、誇るべき作品の詰まった、素晴らしき我城なのである。
今、その城……もとい研究所に居るのは、縒れた白衣を身に纏い、目の下に真っ黒な隈を作った研究者たち。
彼らは、密かに推し進めていたとある研究開発が成功した事を喜び、部屋の隅で囁き合っていたのである。
もっとも、囁き声であったのは最初の内だけであり、もう既に、『声高に』と表現しても過言ではない程の声量になってはいたのだが……。
まあ、気にする事は無いのだろう。
まともな感覚を持つ常人は、近寄ろうとさえしないのだから……。
研究部員たちは、虚ろな目をして笑い合う。
見た目とは裏腹に、心の内は晴れやかに。
中でも部長は、長年の悩みからの解放と、心血注いで開発してきたとある装置の完成に、湧き出る歓喜を抑えきれないようであった。
――――ふはは、ハハ、ハァーハッハッハッハッハ!!!!
魔王城理科学研究部研究所に、研究部部長の笑い声が響き渡る。
研究部員のアルワス・テーナは、同じ研究所に所属する身として、その、ちょっと他人の振りをしてたい部長に言葉をかけた。
「あの、部長。なんかその高笑い、悪役みたいなんでやめてください」
引き攣り顔の部下の苦言も、今の彼には通じなかった。
――――ハァーハッハッハッハッハ!!!!
魔王城理科学研究部研究所に、研究部部長の笑い声が響き渡る。
目の下には黒い隈。草臥れた白衣。ぼさぼさの髪。
――――ハァーハッハッハッハッハ!!!!
血走った眼。臭う白衣。顔に張り付くピンクの髪。
――――ハァーハッハッハッハッハ!!!!
今の彼こそ、マッドサイエンティストと呼ぶに相応しい。
彼は腰に手を当て高笑う。
片足で、自身の椅子を踏みつけて。
「ハァーハッハッハッハッハ!!!!遂に、遂にこの私の偉大なる研究が――――」
魔王城理科学研究部研究所には、研究部部長の高笑いがいつまでも響き渡る……かに思えたが、同じ研究部に所属する研究部員、アルワス・テーナによってその笑い声には終止符が打たれた。
ゴツッという鈍い音を最後に、騒がしかった研究所には『惨劇の後』という名の沈黙が訪れたのである……。
『この小説は2ヶ月以上更新されていません』
っていうアレ、あまり付けたくないのです。
付けないように頑張りますね!