満腹竜の息吹は何処? グルメを廻る旅の四食
『探し物にはうってつけ』なオレの宝玉であるが、目下の重要事項である「【金の鳥】探し」において、その能力は全くの役立たずである事が発覚した。
オレの宝玉は、オレが見た事の無いものを探すときには、その使用に条件が付く。
対象の外見的特徴を3つ、オレが思い浮かべられなければならないのだ。
オレが金の鳥について知っている外見的特徴は2つ。
「鳥」である事と、たぶん「金色」であることだ。
オレは、宝玉で見つける事を諦めた。
どっちかというと夜行性で、暗闇でも余裕で周りが見えるオレは、それでも諦めずに、山の中を一晩探し続ける。
草木を焼き払い、空を睨んで、一応土にも潜ってみた。
途中見つけた二頭蛇を頬張りつつも、蟻の子一匹たりとも逃さぬ集中力で辺りの気配を探り、竜人としての野生の勘を働かせる。
……が、金色の鳥など全くと言っていい程見つからなかった。
オレを嘲るかのように、金色の朝日が眩しく輝く。
むかついたオレは、天に向かって炎の息吹を噴き上げた。
そして、オレが諦めかけた頃、視界の端に見た事のある鼠色がチラついた……朝日では無い金色も!
ガバッとそちらに顔を向ける。
前に居るのは見た事のある鼠色頭。
そいつが、持っていたのはッ――――
「――っ!おっまえ!!ナニ持ってんだよ!?」
目の前を歩くロッグジェグバが持っていたのは、正に、探し求めていた金の鳥!!
オレは叫ぶとロッグジェグバの元へと駆けた。
「あぁ、これか?こいつはついさっきイキナリ空から降って来たんだ。丁度、武具の素材集めをしていた所でな。どうだ?この金ピカ具合なんか結構良さそうだろう?」
そう言って、ロッグジェグバは金の鳥を掴んだ右手を持ち上げた。
掴まれた鳥の足は、少々焦げて欠けている。
――クソッ!勿体ない!欠けてなけりゃあ、もっと食い分増えただろうに!!
暫く、『超珍味!!な幻の魅惑食材【金の鳥】』を凝視していたオレだったが、その言葉の意味するところに気が付くと、肝を冷やして絶句した。
――信じられないっ!!
『超珍味!!な幻の魅惑食材【金の鳥】』を、武具の材料にするだと!?
オレはなんとか気を取り戻すと、ロッグジェグバ相手に交渉を試みた。
「ロッグジェグバ、悪いがそれは、オレにくれ」
「ん?何故だ?オレはこいつで鎧を造ってみたいんだが」
――やばいな、ロッグジェグバの奴、金の鳥が何かも知らないで武具にする気満々だ。
金の鳥が五十年に一度、市場に出るか出ないかという幻の高級食材だと教えれば、ロッグジェグバも鎧なんかにはしなくなるかもしれないが、それだと確実に取り分が減る!!
オレは焦った。
なんとか、ロッグジェグバに金の鳥の価値を知らせず、コイツの魔の手から魅惑食材を救出してやらなけばならない。
未だ存命中でロッグジェグバに足を掴まれ、逃げる事の出来ない鳥は、憐憫を誘えそうな音で一声、ケルーと鳴いた。
「……ロッグジェグバ。実は、勇者の事なんだが……」
オレは、顔を見られれば見破られるかもしれないという懸念と、少々の疾しさから、ロッグジェグバから顔を逸らして続けて言った。
「あいつ、オレがちょっと目を離した隙に大怪我を負っちまって……、それで、なんか滋養の付くもんを食わせてやりたいんだ」
前半部分は、別に嘘ではない……が、勇者に珍味を食わせるつもりは微塵も無かった。
「……そうか、わかった。こいつは持っていけ」
ロッグジェグバは神妙な面持ちで一つ頷くと、あっさり珍味を渡してくれた。
「勇者の男はそんなに酷い怪我なのか?何なら、こいつも持って行くと良い」
そう言って、ロッグジェグバはきっちりと封のされている小瓶をひとつ投げて寄越した。
「なんだ?薬か?」
「ああ。エンドヌッデスの目玉粘液と、ケルグェスジャラの脾臓なんかを混ぜたやつだ。とりあえず、怪我に良い」
「ふーん。そっか、まあ、もらっとくわ。ありがとな」
オレは小瓶を懐にしまうと、金色の鳥を片手に意気揚々と下山した。
これで、デルク編終わりな訳ではありません。
ここで終わったら不自然ですものね。
食いしん坊将軍まだ食う気です!
朝・昼・晩とおやつで四食。
五食というと、
あれか?夜食か!?
太るぞデルク!
でも憎いことにこのデルク、太らないんですよね~。
ドラゴンって多分、胃もデカいんだろうなぁ。 そして、消費も半端ないんでしょう。きっと。