表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/36

満腹竜の息吹は何処? グルメを廻る旅の三食



 向かった先では一人の男が地に手を突いて、力無く項垂れていた。


 青ざめた顔には絶望が浮かんでいる。


 そんな事にはお構いなしに、オレは訊ねた。



「なぁ、『超珍味!!な幻の魅惑食材【金の鳥】』ってなんだ?」


 男は放心状態で、オレの問いなど聞いちゃいない。


 虚ろな目をして一ミリたりとも動かなかった。



 代わりに、男の絶叫に集まっていた野次馬の一人がそれに答える。


「アンタ、【金の鳥】を知らないのかい!?金の鳥っていやぁ、幻の超高級食材だ。全ての食通の憧れさぁね。」


 会話を聞いてた野次馬その2が、興奮しながらそれに続いた。


「おう、調理しなけりゃ只の鳥だが、優れた料理人がその腕を振るやぁ、如何様にも化けるっちゅう魅惑の珍味【金の鳥】!どんな味覚音痴でも、どんな肥え舌野郎でも、そいつを使った料理を食やぁ天にも昇る心地だとか!一生の内で一度でもそいつを食えりゃあ僥倖よ。あんた、金の鳥がいったいどうしたって言うんだい?」


 そいつは、最後に叫んだ男にそう訊いた。



――そんなに美味いもんだと言うなら、是非ともオレも食ってみたい!




 未だ死んだ目をした男が口を開くと、野次馬同様、そいつの話にオレも耳を傾けた。



「お、おれは、あのエレミア国の宮廷料理人ベベスさんの弟子で……。商の国のオークションで、金の鳥がたった1羽だけ出品されてて……、なんとか、骨だけ競り落としたから、ベベスさんがそいつをスープにする筈だったんだ。あ、明日のファットコンテストが終了したら、会場の客全員に配るつもりで……」



 オレは、「骨」という単語に少々嫌な予感がした。



「ベベスさんって、あの有名なベベスさんかい?前回のファットコンテスト優勝者じゃないか!」


「『筈だった』って……。まさか、アンタその【金の鳥】をどうにかしちまったのかい?」


 すると、男は更に青ざめカタカタ震えながら呟いた。


「そこの調理台の上に置いてたのに、ちょっと目を離した隙に無くなって……、うぅ、おれ、ベベスさんにあわす顔がねぇ……」



 見ると、先ほど苛立ち紛れに骨をちょろまかした調理台……。



――なんてこった!あの骨、只の骨かと思ったら、そんな幻の珍味だったとは!調理されりゃあ、絶品料理になるなんて……。ちゃんと仕舞っとけよ!オレ、只の骨のまんまで食っちまったじゃねぇか!明日になればオレも絶品料理で食えたのに!!



 オレは、何としてでも、調理されたら絶品だと言うその幻の【金の鳥】の、『料理』を食いたくなった。



「よし、オレがその鳥を捕まえてきてやる」


 オレは決意も顕わにそう言った。



「は?アンタ話は聞いてたかい?幻の食材だって言ったろ?市場に出回るのなんて、五十年に一度あるかないかなんだ!」


「王侯貴族の連中にあたって回りゃ、持ってるやつも居るかもしれんけどよ」


「捕まえるって、そりゃ、無理ってもんだろ?」


「あんた、金の鳥の事だって、今知ったばかりじゃないか!」


 野次馬その1~その4が口々にそう言ってくるが、オレにとって重要なのは、金の鳥が捕まえられるかどうかじゃない。


――何としてでも、金の鳥料理を食うことだ!!



 そう言ってやったら、やつらは尊敬の目でオレを見てきた。



「あんた、漢だ!」


「兄貴って呼ばせてくれ!!」



 そんな声を背に受けて、オレは金の鳥を捕まえるべく、猛然と何処かに向かって駈け出した。




 因みに、度々都合の良いものしか見えていない魔界の将軍デルクバレシスは気付かなかったが、彼の勢いに呑まれて尊敬の念を抱いたのはたった数人で、その場の大多数の人々は、訳の分からん彼の理屈に呆れた視線を寄越していた。




 その数分後、その場にはエレミア国の宮廷料理人であり、ファットコンテストの前回優勝者である噂のベベスさんが現れる。


 彼は、幻の珍味を失くした弟子に、軽い調子で言葉をかけた。


「気にするな。骨ぐらい失くなったって、俺の腕にかかりゃあ何のスープも絶品だからな!」


 その場の者は皆、彼の度量の広さに感嘆し、デルクの事など忘れるのだった。





――農の国ファットムロンダの北にあるタセローグ山。



 鳥だって動物だ。動物って言ったら、やっぱ街よか山とかに居るもんだろ。


 そんな理屈で、オレは近場の山に来ていた。


 早速、『超珍味!!な幻の魅惑食材【金の鳥】』を探し始める。



 草木を掻き分け、空を見渡し、一応土も掘ってみた。


 途中見つけた蜂の巣を頬張りつつも、蟻の子一匹たりとも逃さぬ集中力で辺りの気配を探り、竜人としての野生の勘を働かせる。


 ……が、やっぱり全然見つからない。




――宝玉を使ってみるか。


 オレの宝玉は見たいものを映すことが出来る。


 探し物にはもってこいだ。


 オレは胸元に手を突っ込むと、宝玉を取り出した。



 宝玉で映し出すとは言っても、宝玉そのものに映って見える訳じゃない。


 宝玉を握った俺の脳裏に、見たいものは映るのだ。


 【金の鳥】の在りかを視る為に、オレは両の瞼を閉じた。



 対象の【金の鳥】について、その特徴を、出来得る限り、思い浮かべる。





――ところで、【金の鳥】ってどんなだ?





 【金の鳥】を、探し始めて数時間。



 日も暮れかけて、辺りが暗くなり始めた頃、オレはちょっとした問題に行き当たった。







 彼、いったい何食、喰う気なんでしょうかね?


 後で胸焼け起こすの私なのに。



 進行具合ですが、とうとう最終話に手をつけてしまいました!


 けれどもやっぱり、まだ中間書いてない。



 携帯で見た時のレイアウト。ここしばらく、ほわほわとした、茶色トーンになっておりました。

 あれ、実はバパムメレのイメージカラーで御座います。

(アンバー、バーントアンバー、オフホワイトで構成されていたのです)


 読み難かった様なので、初期設定に戻しましたよ~。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ