満腹竜の息吹は何処? グルメを廻る旅の一食
ユニーク4桁!!
今日の深夜から今朝に読まれた方が千人目。
今回は、大人気な異世界トリップものですよ~。
キーワードに入れてみようかな?
魔区外の料理はどれもウマい!
魔区のものと比べると、肉も魚も柔らかく、些か噛みごたえのない事に戸惑ったが、これはこれで旨かった。
噛めばさっぱりとした肉汁が口の中に広がるのだ。
食材からして、魔区のものとは少し違うようで、四百年生きていて初めて目にする料理もある。
こちらもこちらで地域性があるらしく、酒場や宿屋で噂を聞けば、例え魔区から遠ざかろうと、勇者を連れまわして食いに向かった。
「なあ、俺ぁ、魔界に行かなきゃならないんだが……」
勇者の男は、バパムメレの【女神のお告げ】を、一応は信じたようで、魔区への道から外れると、決まり悪げにそう言ってくる。
宿屋一階の食堂で、骨付き肉をバリバリ食いつつ向かいの勇者を見返した。
出会った当初は、骨まで食うと、ギョッとしていた勇者だが、この半年で慣れたらしい。
約半年前、魔区へと勇者を案内すべく、オレが魔区外まで迎えに行くと、勇者は拘留されていた。
知の国エレジェンクスの東の町セゼガ。
その街の警備隊詰所に隣接された拘置所1階の牢獄に、勇者は居た。
どうやら勇者は恐喝をして、町の警備隊に捕まっていたようだった。
これでも、オレは竜人だ。
生まれながらに宝玉を持つ竜の性質を受け継いで、オレも宝玉を持っていた。
竜の宝玉には力が宿っていて、それぞれで違うが何らかの効果を持っている。
オレの宝玉は見たいものを映す事が出来、これを使って勇者の現状を把握したのである。
――まあ、罪を犯したんなら償わないといけねえよな?
本音を言えば、罪だか償いなんかはオレにとっちゃどうでもいいが、そう結論付ける事で、俺は暫しの遊興……否、魔区外探索期間を得る事にした。
暫く、町のそこらの食いモンを片っ端から食い倒し、魔区外料理に舌鼓を打つ。
そして十日を過ぎた頃、町の料理を粗方食いつくしたオレは、次の町に向かわんと、拘置所の壁をぶち壊し、なかなか出て来ない勇者を脱獄させたのである。
勇者は名前を……なんつったかな。まあ、勇者で良いだろう。
目の前に座る勇者は、だいぶ前に食事を終え、今は麦酒片手につまみを食っている。
因みに、オレの奢りだ……魔王の金だがな。
よく解らんが、使命感を発揮したのか勇者が決まり悪げに、そう言えば、
「おまえ、相手は魔王だぞ?今のまんまで勝てると思ってんのかよ?」
と、勇者にはそんな風に言ってやり過ごしてきたのだが……。
「今、何処にいらっしゃるんです?」
――宰相にバレた。
その日の遅く、2階の宿泊部屋に戻って直後のことだった。
窓の隙間から吹き込む風に、宰相の声が聞こえて来たのだ。
そういや、勇者を連れまわしてもう半年。
勇者が居たのは、大陸東側の魔区から最も遠い西側の知の国ではあったが、隊を率いるわけでもない気軽で身軽な二人旅。
最短ルートで馬でも使えば、そろそろ魔区に着く頃だ。
……寄り道しなけりゃの話だが。
オレは、あの町からの魔区への道筋で、最短東ルートではなく、大回りの南ルートをとっていた。
もちろん、多くの料理、ひいては多くの国に行き合うためだ。
無論、寄り道だってしまくっていた。
寄り道がバレたとは思ったが、あまり怒らせない為、少々滞在位置を誤魔化して答える。
「あ、あ~、商の国辺りだ」
この「辺り」というのが重要だ。オレは嘘を言ってはいない。
相部屋の勇者は既に寝ており、普通の声で話した。
「農の国ファットムロンダの南地区アビンサテラでしょう」
バレていた。
「うッ、知ってるなら聞くなよ」
「とにかく、貴方は、案内をしてくださいね。寄り道などせずに」
こいつの声は、聞いてるだけで心臓に悪い。
「わ、わかった。そっち行きゃあいいんだろ!?」
「ええ、寄り道はしないでくださいね」
さらに、釘をさす宰相に、了解を告げる事で会話は終わった。
どうやら宰相には、滞在している位置はバレバレだったらしい。
次の日から早々に、魔区へと向かう事にした。
宰相は、オレでもやっぱり恐い。
アレは、……怒らせるべきではないだろう。
しかし、此処は農の国ファットムロンダ。
別名【食の国】とも言われている。
オレは、美味いもんを食うのが好きだ。
そんなオレは、経費はすべて魔王の金で済ませられるこの旅中に、出来るだけ多くの魔区外料理を食っちまおうと、情報収集を怠ってはいなかった。
此処、ファットムロンダでは、毎年、秋に食の祭りが開かれており、2年に一度、王都では世界中の料理自慢な名コック達が集い、その腕を競い合う【世界料理大会ファットコンテスト】が開催されるのだ。
その開催は一週間後。
『 一週間 』
この街からなら、北に向かえば王都に行けるが、東に進めば次の国へと入れる期間。
オレは悩んだ。
魔界のデルクさんの人間界旅行。
まぁ、異世界トリップ(和訳:旅行)ですよね。ちゃんと。
期待を大きく裏切ること請け合いですが。
次回は2月5日の0時頃に投稿します。