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飛び交う剣舞の打ち合わせ ニ合


 現れたロッグジェグバに、本を投げ出し、魔王は駆け寄る。


「これか?」


 ロッグジェグバの抱える布包みに、早くも目が釘付けである。


「あぁ、こいつが、頼まれてた勇者の剣だ」


 そう言って差し出された細長い布包みを、緊張で強張った手で何とか受け取り、はらりとその布を解く。


「どうだ?なかなかの出来だと思うんだが」


 涼しい顔をした宰相の隣で、魔王ジョセフは絶句した。




 その剣は、刀身が緩く湾曲し、鍔元から切っ先にかけて幅広になりながら延びていたが、先を斜めにカットする事で、その鋭さを保っている。


 魔王ジョセフが想像していたのは、絵本にあるような真っ直ぐな十字型の剣だった。


 基本の形からして、イメージとは全く違うが、これだけだったら、まだ良かった。


 問題はその先である。



 その刀身は、ギラギラと黄金色に輝き、柄の上部には牛の目玉が埋め込まれていた……。



 拳大はあろうかというその目玉は、白く濁ってはいたが、ヌメヌメとしたその表面が、時折、刀身の黄金を映して煌めく。


 そこから伸びる炎を模した彫刻が、鍔の役目を果たしている。


 柄は尻尾の裂けた一匹の二頭蛇を捩って固めたもので、柄の両端はビビッドカラーな赤と青が綺麗な螺旋を描いていた。


 ふたつ頭の蛇が共有する腹の部分は、派手派手しい紫で、握りやすくする配慮なのか、ここに捻じれは無く、少々押しつぶしてあった。


 柄尻では、首まで捻じれた赤と青の蛇たちが互いを飲まんと噛み合っている。




 固まる魔王を満足げに見やり、ロッグジェグバは解説を始めた。


「注文通り、持つ者の力を上げる光り輝く魔法剣だ!名をエンドヌッデスという。こいつは持ってる奴の攻撃力を20倍に底上げし、目玉の粘液には、体力・気力・精力・魔力を増強し、疲労回復や治癒速度の高速化といった効能がある。戦闘中でも、ちょいと舐めりゃあいい。3分と経たずに効果が出るだろう」


 髭を剃る時間も惜しかったのか、口髭だけを伸ばしている普段と違って、頬や顎も無精髭に覆われている。


「なにしろ、歴史に残る一芝居だろうからな。ちょいと、腕を張って材料の採集から手掛けてたら二月以上も掛っちまった。どうだ?柄なんか、極上の二頭蛇だろう?イイのがなかなか見つからんくてなぁ、そいつに出くわすまで一月も山ん中歩き回っちまった」


 そう言うと、ロッグジェグバは、照れ臭いのか、痒いのか、ごつごつとした大きめの手で、ガシガシとその鼠色の頭をかいた。


 確かに、極上の二頭蛇だ。


 二頭蛇は大抵一色のものが多く、色彩が多い程ランクの高いものになる。


 質は、その大きさと鱗の艶、発色の良さで決まるが、この柄の蛇ならどれも特上に当て嵌まるだろう。



 さらに、尻尾の先まで二つに分かれているものは希少性が高い。


 普通の一色二頭蛇の相場と比べて、およそ60倍程の値段がつく。


  革製品に加工せずとも、売れば、20人規模の一部族が余裕で一冬暮らせる額だ。



 一生をかけて探しても、見つかるかどうかと言ったところの蛇。


 とてもじゃないが、探した期間が一ヶ月だけとは信じたくない。



 見るものが見て、それを聞けば、血涙を流してロッグジェグバの幸運を呪うことだろう。




 思えば、ドッドの造る品の中には、市場には上がらないほどの稀少品素材が使われていることが度々ある。


 今までは、腕と勘の良い猟師達にコネでも有るのかと思っていたが、それらも今回のように、自ら採って来ていたと考えられる。


 ……俄には信じがたいが。



 蛇皮には興味が無いから、これについてはどうでもいいが、このままでは価値ある稀少素材の多くが、ドッドの悪趣味に染まる。


 早急に何か対策をたてる必要があるだろう。






 標準人間型にして、凡そ10000人規模の収容が可能なだだっ広い謁見の間にいるのは、たった5人。


 魔王ヴェルディルガ・ジョセフと宰相ウィーズ・セズシルバス。



 鍛治師ロッグジェグバ・ドッドと、扉脇の衛兵二人。



 暫し、誰もしゃべらず、沈黙が降りる。





 日に焼けたロッグジェグバのその顔は、はにかんでいるのか口元が少し歪んでいた。


 それを見た魔王陛下の口元も、文句言い難さにやはり少々歪んでいる。


 予想外の懸案事項は出てきたものの、予想通りのこの事態に、宰相セズシルバスは素っ気なくも無反応だった。





 扉脇のベテラン衛兵達は、心頭滅却して空気となる事に慣れていた。


 魔王陛下の周辺で、奇怪な事は度々起こる。



 魔王陛下がここ暫く、何処に行くにも絵本を小脇に抱えていようと、


 ロッグジェグバの悪趣味振りに、更に磨きが掛かっていようと、


 会話から察せられるに、何故だか知らんが、陛下が芝居を打つ気でも。


 更には、あの宰相閣下がそれを黙認されようとも。



 兵士二人は、誰に言い触らす訳でもなく、唯、空気となって、其処に佇む。



 合言葉は、


 「キニシテハイケナイ」






 大のお気に入り小説が完結してしまいました!

 祝うべきか、嘆くべきかという複雑な心境です。

 加えて徹夜のお蔭でハイテンション!!


 記念と勢いで本日2度目の投稿を果たしました!!


 嗚呼、後4個分しか続き書き終わってない……。

 私は、思いついた所から書いて置いておくタイプです。

 真ん中書いてませんが、終わりの方2個分は、もう書いてしまいました。


 更に、最終話の後書きまで既に書き終わっている始末。

 なので、私が途中で息絶えない限り、この小説は完結することでしょう。

……どんなに更新速度落ちようとも。

 ほんとは、二週間単位で更新するつもりで、これが掲載されるのも、皐月頃のはずだったのに。


 ナニこのスピード。


 そろそろ、のんびり更新になるかと思われます。

 皆様お達者でぇ~


○Oo。.(T¬T)/~~~



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