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飛び交う剣舞の打ち合わせ 一合



 件のお茶会から約三ヶ月、ロッグジェグバ・ドッドは仕上がった剣を手に魔王城を訪れていた。



 前回の帰り際では、巨人族のガギャ・ダラに捉まり散々だった。


 他の三人にも『迎え』が来ていた処を見ると、宰相はさぞかし貸しを作れたことだろう。



 巨人族のガギャ・ダラ兄弟には、以前から弟子にしてくれと煩く付き纏われていたが、あんな奴ら、養える訳がない。


 何しろ巨人族なだけに図体も食欲もハンパ無いのだ。


 奴らの暑苦しい性格に付き合うのも苦手だ。


 結局奴らを振りきって、家まで帰るのに2週間かかった。



 ロッグジェグバは、宰相のように転移などという気の利いた術は使えない。


 己の魔力と魂を、金属に練り上げて鍛えるだけだ。


 それでも、各街に設置してある転移紋を用いれば、魔王城から家まで三日程で済む。


 それが2週間もかかったのだ。


 ウンザリもするだろう。



 今回も、何かないとは限らない。


 布に包まれた作品を、落とさぬようにしっかり抱え、聞こえてくる足音に耳を傾けながら謁見の間に向かった。




 一方その頃、謁見の間では、玉座に座った魔王陛下が、ロッグジェグバの到着を、今か今かと待っていた。


 知らせが入ったのは五日前。


 勇者の剣の漸くの完成に、魔王は浮きたつ心を抑えつつ、そわそわと、入口へと視線を走らす。


「漸く、よ~やく、これで計画を進められる!!」


 鼻息荒く、興奮している魔王ジョセフに、傍らに控えた宰相は素っ気なくも、そうですかと返しただけだ。


 それでも魔王は気にしない。



 魔界の鍛冶師ロッグジェグバ・ドッドの技術は、他の追随を許さぬ程であり、それにより生み出された魔具は、素晴らしい効果を持つ。


 魔区で唯一の鍛冶師であるから、魔区一であるのは言わずもがなだが、魔区外を含めても随一の腕前であると断言できるだろう。




 期待に胸を高鳴らせ、傍らの絵本の表紙を見やる。


 表紙の絵には、光り輝く剣を掲げ、魔王(……だという黒い怪物)に立ち向かう勇者の姿が描かれていた。



 そんな魔王に、物言いたげに、眉をしかめるのは魔界の宰相セズシルバスである。



 子供向け絵本を小脇に抱え、暇さえあれば、何度でも読む己が主君。


 魔王を退治した勇者の逸話が書かれた本を、期待に満ちた眼差しで見詰める魔王陛下。



 どちらも厭だ。


 しかし、口に出すのも癪に障り、そのまま黙って控える事にする。



 それほど待つことも無く、扉脇に控える兵は、鍛冶師ロッグジェグバ・ドッドのおとないを告げた。





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