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遊び女の品定め 演じる役者は三枚目?



 お茶会から4日目の朝、魔王城に、紅い薔薇の封蝋が押された黒い封筒が届けられる。


 特徴的なその手紙はリーリートゥからのもので、それは魔王に宛てられていた。



 魔王ジョセフが肉を前にした仔犬の如く、目を輝かせてそれに飛びついたのは言うまでもない事かもしれないが、朝に届いたその手紙を、魔王陛下が封切ったのは、夜も遅くの深夜を過ぎて、朝日も昇ろうかというそんな時刻だった。




 朝、一目でリーリートゥからと分かるその手紙を片手に持って、やって来たのは魔界の宰相セズシルバスだった。


 傍目にも分かりやすく反応を示した魔王陛下に、彼は言う。


「陛下、リーリートゥから今朝、手紙が届いておりましたが」


 飛びつく勢いで執務机から駆け寄った魔王陛下に、尚も続ける。


「此処3日程、心此処にあらずといった体で、文字をまともに見る事すらも出来なかった陛下には、手紙を読むなどという高度なテクニックは、もちろん、備わってはいませんよね?仕方が無いので、これは私が預からせて頂きます」



 こうして魔王は、人参を目の前に吊るされた馬車馬の如く、働く事になったのである。


 4日分の仕事を一昼夜で終わらせたその執念は、常に、仕事に対して発揮して欲しいものだ。


 魔界の宰相セズシルバスは、大した期待も込めずに、心の内でそうぼやいた。




 手紙の中身は予測の通り、勇者の決定通知とその特徴についてであるらしかった。


 人間にしては結構強く、体力がありそうとのことだ。


 四六時中、遊び回っている様でいて、リーリートゥは昔から、仕事が早くて的確である。


 あの4人の中で唯一、まともな仕事が出来る者として、宰相の中では印象が良かった。




 頼みもしないのに、興奮気味に内容を伝えてくる魔王によれば、



 勇者は、エレミア国の武術大会で5回の出場経験があり、毎回上位3位以内に入るつわものらしい。


 傭兵を生業にしており、その強さは、魔区外では結構有名なのだそうだ。


 がっしりとした肩に太い腕をした男で、腰に帯びた太めの長剣を扱っている。


 利き手は右だが、左でも剣を振るえるよう鍛えた節があり、無手でもそこそこ戦えるらしい。

 魔術の類の素養は無し。


 逞しい胸板は好みだが、少々ガニ股なのが頂けない。


 茶色の髪に焦げ茶の瞳の31歳、独身男。



と、いった者に勇者は決まったようである。




 ガニ股という点において、リーリートゥ同様、少々不服を感じたようではあるものの、許容範囲であったらしい。


 魔王は早速、勇者の特徴を伝えんと、ロッグジェグバに手紙を書いた。





 筆を滑らす魔王ジョセフはきちんと執務机に着いている。


 広い執務机のその上には、リーリートゥからの手紙が開かれたまま、置きっぱなしになっていた。


 美しい曲線が特徴的なその文字列は、紛れもなく彼女の筆跡である。


 その手紙の最後の方には、追記があった。





PS


 勇者探しをしていたらぁ、結構好みな爽やか美青年を見つけちゃったの~。


 栗色の髪に若草色の瞳をしていてぇ、声をかけたら真っ赤になって照れちゃってぇ、すごく可愛いのよぉ。



 暫くは彼と楽しみたいからぁ、何かあっても呼び出さないでね。





 貴方の愛しいリリトゥより




 親愛なる魔王陛下サマへ

 生涯変わらぬ忠誠を込めて






「遊び女の品定め 演じる役者は何枚目?」


 この副題、作者的には満足の逸品です。


 歌舞伎で、「一枚目」は主役、「二枚目」は美男役、「三枚目」は道化役の事なんだそうで、



 此処で、「?」の回答を致したいと思います!



問1「遊び女の品定め 演じる役者は主人公?」


A.彼女の探している勇者役はこの物語の主人公ではありません。



問2「遊び女の品定め 演じる役者は美男子?」


A.カッコいい爽やか青年は役者には選ばれませんでした。

 勇者役はどうしようもないオッサンです。格好良くはないと思います。



問3「遊び女の品定め 演じる役者は道化役?」


A.勇者役の彼は、とことん、どうしようもないオッサンです。ギャグ担当にもならない事でしょう。

 打診したら「誰がなるかッ!」と怒られそう。

 しかし、茶番に付き合わされている様は、ある意味、道化と言えるかも……。




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