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「❤️彼女の妹 彼女の親友 Ⅰ」黒のストッキング姿の長身美少女の彼女の妹が突然部屋に上がり込んだ夜。机の下で絡みつく白い脚、迫るゴスロリ。  作者: ⚓フランク ✥ ロイド⚓
第2章 彼女の親友

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第17話 姉ちゃんの研究課題

《《木曜日 放課後》》


 放課後、また二人は中央線に乗った。二人とも、電車の中で「量子革命」を開いた。並んで座って、黙って読む。


 四谷の坂道を上りながら、凜花が言った。


「遥、ボーアの補完原理って、どういうこと?」

「光は波でもあり粒子でもある。どちらか一方では説明できない。両方の側面が補い合って、初めて全体が見える……というのが補完原理よ」

「矛盾したものが、両方同時に本当?」

「量子力学ではそう」


「……姉ちゃんと悠真も、補完原理かな」

「どういう意味?」

「姉ちゃんは引き出しに蓋をする人。悠真は引き出しをぶち壊そうとする人。矛盾してるけど、両方本当のことを言ってる」

「……凜花、それ、すごいこと言ってる」

「そう?」

「ボーアとアインシュタインの論争と同じ構造よ、それ」


 凜花が少し黙って、また歩き出した。


「遥、私、物理学科に行ったら、ちゃんと勉強できる?」

「できる。でも、数学が相当できないといけない」

「どのくらい?」

「線形代数、微積分、複素関数……高校数学の先にある世界」

「また、増えた……」

「また増えたって、教養課程の必須科目だよ」

「わかってる、わかってるって……まず合格しないといけない」


 悠真の部屋のドアを開けた。彼はまた教科書を広げて唸っていた。今日は量子力学のノートが三冊、テーブルに並んでいる。


「悠真」と凜花が言った。

「なに」

「補完原理って、ちゃんと説明して」


 悠真が顔を上げた。凜花の目を見た。昨日と何かが違う目だった、と私も思った。


「……量子革命をどこまで読んだ?」

「第五章。ソルベー会議のところ」

「一日で第五章まで読んだのか」

「面白いんだもん。説明して」


 悠真が教科書を閉じた。ノートを一冊取り出した。


「まず、光の話から始める。光は波か、粒子か……」


 凜花がダイニングの椅子を引いて、前のめりに座った。私も隣に座った。悠真が話し始めた。


 ヤングの二重スリット実験。光を壁の二つの穴に通すと、干渉縞ができる。波の証拠だ。でも、光を一粒ずつ打ち込んでも、干渉縞ができる。一粒の光が、同時に二つの穴を通る。粒子なのに、波のように振る舞う。


「一粒が、同時に二つの穴を通る?」

「通る」

「それって……」

「観測しようとした瞬間に、どちらか一方の穴を通ったことになる。見ていない時は、両方を通っている」

「見てないと、両方?」

「両方」

「見た瞬間に、一方に決まる?」

「決まる」


「……悠真、それって」

「なに」

「私が姉ちゃんのミネソタを見ていない間は、姉ちゃんの中に何があるかわからない。でも、見た瞬間に決まる……シュレーディンガーの猫と同じ?」

「……量子力学を人間に当てはめるのは、厳密には正しくない」

「でも、違う?」

「……詩的には、違わないって言ったよね?」


「凜花、昨日から量子力学と彩花お姉さんを結びつけてばかりいる」と私が言った。

「だって、そう見えるんだもん」


 悠真がノートにペンで何かを書いた。テーブルに置いた。


 波動関数 Ψ


「これが量子力学の基本だ。シュレーディンガーが謎の愛人と山荘に籠もって発見した方程式」

「エロスの爆発で!」

「そう。この波動関数が、粒子の状態を記述する。観測する前は、全ての可能性が重なり合っている。観測した瞬間に、一つの状態に決まる……これを波動関数の収縮という」

「収縮」

「そう」

「姉ちゃんのミネソタも、波動関数の収縮待ちなんだ」

「凜花……」

「私が合格したら、収縮する。答えが一つに決まる」


「……キミは非常に物理学に向いてるかもしれない」悠真がペンを置いた。

「本当に?」

「直感が良い。数式より先に、本質を掴もうとする」

「数式も覚える!」

「覚えなくていい。アインシュタインも不得意だった。数式は道具だ。本質を掴む直感の方が大事だ」


 私がノートを覗き込みながら言った。


「悠真さん、じゃあ、量子もつれを説明して」


 悠真がまたノートにペンを走らせた。


 二つの粒子が一度相互作用すると、どれだけ離れても繋がり続ける。一方の状態を観測すると、瞬時にもう一方の状態が決まる。光速を超えて。宇宙の果てまで離れていても。


「光速を超えて?」と凜花。

「情報が伝わるわけじゃない。でも、相関が瞬時に確定する」

「……それって」


 凜花がテーブルの上の「量子革命」を手に取った。


「アインシュタインが『不気味な遠隔作用』って呼んで、死ぬまで認めなかったやつ?」

「そう」

「でも、本当にある?」

「ベルの不等式の実験で証明された。アインシュタインが間違っていた」


 凜花が本を置いた。


「アインシュタインでも、間違える」

「間違える」

「天才でも?」

「天才でも」


 しばらく三人とも黙っていた。


 凜花が静かに言った。


「ねえ、悠真。姉ちゃんの化学って、何の研究なのかなあ……」

「知らない。彩花は研究の話をあまりしなかった」

「なんで聞かなかったの?」

「……聞けばよかったな」

「私も聞いたことなかった。でも、今は知りたい」

「なんで?」

「姉ちゃんが悠真を置いてNYに行くくらい好きな化学って、何なんだろうって。物理学がこんなに面白いなら、化学はもっと面白いのかもしれない。姉ちゃんが見ている世界を、私は一回も見ようとしなかった」


 私が静かに言った。


「合格したら、ミネソタの話と一緒に聞けばいい。化学の話も」

「うん」と凜花が言った。「二つセットで聞く。ミネソタで何があったか。化学の何がそんなに好きなのか」


 悠真がグラスに水を注いで、テーブルに三つ並べた。何か考えている。


「ミネソタの話は、本人にしかわからないが、彩花の化学との絡みの話は、他の人間でも聞けるかな?」

「どうやって?」

「彩花の同級の化学科の学生を知ってるんだ。彼女に聞いてみよう」

「彼女?」と凜花が顔をしかめる。悠真が無視する。彼がLINEでメッセした。通話可能。


「もしもし、明美?」明美。悠真の口から女性の名前が出た瞬間、凜花の顔が変わった。私は知らないふりをした。

「明美!」と凜花が小声で言う。

「凜花、シーッ!」と私が小声で返して、凜花をつねった。

「あのさ、彩花の研究課題って知ってる?え?本人に聞けって?あいつの性格知ってるだろう?言わないよ……え?なんだって?なんなんだ、その課題は?明美も詳しく知らないの?……調べてくれるって……ありがとう……今度奢るよ……じゃあね」

「遥!『今度奢るよ』だって!キィ~!」

「凜花、うるさい……悠真、お姉さんの研究課題ってなんだったの?」


 悠真がノートにメモしたそれを見た。


『性ホルモンの管理物資との生成と性差の縮小に関しての考察』


「何のことでしょうか?」

「ぼくにもわからないよ。明美が調べてくれるって」

「悠真!明美って誰よ!随分親しそうだわね!キィ~!」

「凜花、うるさい!黙ってて!」


 30分ほどして、明美から電話があった。悠真は何気なくスピーカーフォンモードで私たちに聞こえるようにしてくれた。


「おおよその彩花の課題の内容がわかったわ。でも、電話じゃ説明できないから、明日直接会いましょ。資料をプリントしておく。東京駅丸の内がわの中央改札!何時がいい?」

「じゃあ、七時頃?」

「オッケー!じゃあねぇ~」ガチャ。


 凜花が明美の会話を聞いて、悠真を睨みつけた。私もちょっと心配だなあ。



※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

※飲酒喫煙シーンが書かれてあります。

※性描写を含みます。

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