第11話 不可逆反応
《土曜、夜20時過ぎ》
レギンスには、足首まで覆うトレンカタイプと、ソックスなしの2種類がある。
私は断然、ソックスなし派だ。だって、トレンカだと足の裏の部分がダメになったら全部ゴミになっちゃうでしょ? 陸上部員として、ウェアの消耗にはシビアなのだ。
とはいえ、生身の足首が丸見えなのは、今日の「作戦」的にはちょっとパンチが足りない。だから私は、蛍光イエローのレギンスに、あえてボリュームのある白のルーズソックスを合わせてきた。
パツパツのナイロン生地と、ルーズソックスの弛んだニットの質感。このコントラストが、悠真みたいな脚フェチの理性をじわじわ削るはず……。
私は、ルパン三世の峰不二子がルパンを誘惑する時みたいに、悠真が座っているダイニングチェアに片脚をかけた。
悠真の鼻先に、私のレギンスに包まれた膝が迫る。胸元には、ルーズソックスの白い塊。
「『朝から晩まで』よ?つまり、朝が来るまで。……凜花は今日、ここに泊まるんだからね」
「え……?」
悠真が呆然と私を見上げる。その間近な視線を感じて、私の心臓がまた冬季練のダッシュ後みたいに暴れ出した。
「彩花姉ちゃんは泊まるとは思ってないだろうけど。ママには、親友の遥の家に泊まるって言っておいたの。アリバイは遥が証明してくれる。完璧でしょ?」
私はさらに一歩、椅子にかけた脚に体重を乗せて、悠真の顔に自分の股間を近づけた。
「どう、悠真?ゴスロリを脱がすのも楽しいだろうけど、この汗臭いレギンスとルーズソックスを脱がすのは、もっと楽しいかもよ……って、やっぱり私、相当汗臭いよね!酸っぱい臭い……恥ずかしい!」
我に返って、急に顔が火照る。いくら「胃袋を掴む正妻作戦」を完遂したからって、女子高生としてこの匂いはどうなのよ。
「はぁ?ぼくにレギンスの脚を擦りつけて、今さら何言ってんだよ」
「……ねえ、正直に言って。男子って、こういう汗だくの女子の匂いってどう思うの? 嫌い?」
「……その匂い、なんていうか。凜花の匂いがムンムンで、香水よりもガツンとくるよ。悪くない」
悠真が鼻を鳴らすようにして言った。
……悪くない。
その一言で、私の中のテストステロンがまた沸点を超えた。
「そうなの?ホント?うっれしい!あのね、あのね……」
「今度はなんだ?」
私は悠真の肩に手を置き、耳元で密やかに、でも確信犯的な告白を落とした。
「このスポーツトップはスポブラタイプだから、ブラはしてないの。レギンスもクロッチ付きだから、アンダーもなし。……私、今はノーパンなんだよ。どう?」
「……下はスッポンポンだと言いたいのか?」
「だって、脱がした瞬間に『ブラもパンツもありません!』ってなった方が、驚くでしょ?」
「何を今更……」
悠真が吐き出すように言った。その声に、驚きよりも「慣れ」の色が混じっているのを聞き逃さなかった。
「あ!『何を今更』って、何よ!私に慣れちゃった感が満々!ムカつく!」
「なんなんだよ、一体……」
「……女心がわかんない人だね。……甘えたいの!ジャレたいのよ!」
昨夜、彩花姉ちゃんにマウントを取られ、遥に中途半端に慰められた私の心は、もう限界だった。
「彩花とは、ずいぶん違うんだな」
悠真の口から、最悪な名前が出た。
「こら!こういうシチュエーションで、姉ちゃんの名前を出すな!デリカシーのない奴!」
「……それで、凜花は突っ立ったまま、ぼくに脚を押し付けてどうしたいんだ?」
悠真の呆れたような、でもどこか熱を孕んだ視線。
私はレギンスの膝を彼の胸にぐりぐりと押し当て、少しだけ上目遣いで彼を見つめた。
「……お姫様抱っこで、ソファーベッドに運んでくれて。……優しく、脱がしてくれたらいいな、なんて」
「やれやれ……」
悠真は溜息をつきながらも、私の腰と膝裏に手を回した。
宙に浮いた瞬間、ルーズソックスが重力で少しズレた。
《嗅がれちゃう!》
「さて、お姫様、ソファーベッドに到着しましたが……」と悠真はフワッとベッドに私の身体を着地させた。「どうしましょうか?」
「まずはソックスを脱がす!」
「ハイハイ」
悠真が私の足首を掴み、白のルーズソックスをゆっくりと引き抜く。片手でソックスをブラブラさせて後ろへ放り投げようとしたから、私は慌ててそれを止めた。
「投げちゃダメ!」
「どうするの?」
「……えーっと、嗅ぐのよ、匂いを。両手で握りしめて鼻に当てて、嗅いでみて!それで、感想を一言」
我ながら何を言ってるんだと思う。でも、今の私は悠真のすべてを試したかった。
「やれやれ……。姉妹は似るものなのか?」
「似るってなによ?」
「さっき、君は『姉ちゃんの名前を出すな』って言ったよね?」
「これは別シチュです!何よ、似るって?」
悠真は溜息をつき、私のソックスを鼻に押し当てたまま、私にとっては驚くような話をした。
「……彩花がさ、脱いだパンティーを嗅いで、『ねえ、私の匂い、どういう匂いか言ってみて』って、真顔で迫ってきたことがあったんだよ」
「あの、レーセー、レイテツな姉ちゃんが!?」
「そう。凜花みたいなジャレ合いじゃなくて、学術調査でもするかのような真剣な顔でさ」
衝撃だった。あの完璧な次女が、悠真にそんな歪な甘え方をしていたなんて。
「……で、どういう匂いだったのよ?」
「凜花、実の姉とのことを知りたがってどうするんだ」
「いいじゃん、教えなさいよ!」
「……凜花よりも軽めの、でも、ちょっと酸っぱい匂いだった」
「じゃあ、美咲姉ちゃんは?」
「……言うの?」
「言うの!」
「……重いというか。凜花よりもフェロモンの匂いがずっと強くて……」
「変態!悠真の変態!姉妹三人の匂いを嗅ぎ分ける変態!」
「言えって言ったのは君だろ」
「……う〜ん、姉妹三人も変態なら、悠真も変態。私たち、もうおしまいだね……」
《絶対零度を溶かす熱》
レギンスを剥ぎ取られ、スポーツトップも脱がされ、私はついに、悠真の目の前で真っ裸になった。
悠真が気まずそうに照明を消そうとするのを、私は鋭い声で制止した。
「明かりはそのままで。毛布もいらない。今日は、凜花のすべてを、よぉ〜っく見てもらうんだから」
悠真は呆れたように肩をすくめ、自分も服を脱ぎ始めた。膝立ちでパンツ一丁になった彼の股間は、もう隠しようがないほどに猛り狂っている。
私は起き上がり、迷わずにその膨らみに顔を寄せた。
(AVで見たんだから。やり方くらい、分かってる……!)
私はパンツの上から、彼の熱を直接舐めとるように舌を這わせた。悠真が「……っ、凜花!?」と驚きに声を上げた。
パンツを下ろし、露わになった「それ」を、私は大口を開けて口に含む。
「……っ、ああ、凜花……」
喉の奥を突く熱い感触。
(昨日までは、これが彩花姉ちゃんの中にいたんだ。火曜も、水曜も、木曜も……)
そう思うと、嫉妬の炎が私の舌をさらに執拗に動かさせた。
「……ああ、ダメだ、凜花!出ちゃう……!」
「モゴッ、ムグッ……」
私は離さなかった。悠真の腰が大きく跳ね、私の口の中に、熱い、ドロリとした液体が何度も注ぎ込まれた。
私はそれを飲み込まず、口の端を拭ってから、悠真を上目遣いに見上げた。
「……おいしくないね」だって、おいしくないもん。でも私は、彼の残った熱を丁寧に、慈しむように舐め取った。「一回出したから、次は長いよね?」
私はニヤリと肉食女子の笑みを浮かべ、今度は自分が仰向けに寝転んだ。
「さあ、今度は私の番。偏差値が上がるまで、終わらせてあげないんだから」
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※飲酒喫煙シーンが書かれてあります。
※性描写を含みます。




