4話
どう考えてもおかしい。
春咲さんの席を眺めながらそう思った。
雄太から春咲さんについての噂を聞いてからずっと春咲さんを観察していた。授業中も、休み時間も、噂が本当なのか確かめるために目で追い続けていた。
そしてその結果、春咲さんに関する噂は嘘なんじゃないかという方へ考えが傾いた。
男好きな女だと言うには、春咲さんはクラスのどの男子にも興味を示してなかった。興味どころか、視線すら向けていなかった。
休み時間は机に突っ伏しているだけで、授業中も黒板を見るだけ。男子をチラリと見るような素振りすらなかった。
あの噂、どう見ても嘘っぽいだが。
そう考えながら春咲さんの観察を続けていた。
そんな中、春咲さんは急に席を立って教室を出ていった。トイレに行くのかな。と思ったが何分経っても春咲さんは戻ってこなかった。どこに行ったんだろう。と疑問に思った。
そんな中、前の席の雄太が振り返った。
「おい、晴翔。一緒にお昼食べようぜ」
雄太は目の前で自分の弁当を振りながら言った。そして自分の机をくっつけようとした。俺は慌てて手を伸ばし雄太を止めた。
「待って。俺、一人で食べるから」
「今日も?」
机を動かしていた雄太の手が止まった。
「最近ずっと一人で食べるね。何か理由でもあんのか」
「いや...特に理由はないが」
俺はそっと視線を逸らした。それでも雄太の視線が痛いほど刺さってきた。
適当な言い訳が思い出せなかった俺は、慌てて弁当を持ち、席を立った。
「とにかく今日も他のやつと食べな」
「おい、ちょっと」
背後から呼び止める声が聞こえたが、俺は無視して教室を出た。
たくさんの生徒で賑わう廊下を抜け、階段を上って屋上で向かった。
屋上には誰もおらずがらんとしていた。俺は適当な場所に腰を下ろして持ってきた弁当を一人で食べ始めt。あ
一人で食べると、会話する必要もなくて誰かと一緒に食べるよりずっと早く食べれた。そのため十分もしないうちに食事を終わらせた。俺は空になった弁当箱の蓋を閉じてポケットから薬を取り出した。
「あんなり飲みたくないよな」
どうせ薬をきちんと飲み続けても病気が治るわけではなかった。そもそも病院での治療を断ったのも、無駄なんだから。何をやっても死ぬという結果は変わらないから、治療を拒否したのだ。
それでも欠かさず薬を飲んでいるのは、母さんのためだった。母さんに少しでも安心してもらうため、薬を飲むのだった。
「苦っ」
錠剤が舌に触れ、苦味が口いっぱい広がった。口の中で溶けきってさらに広がる前に、急いで水で流し込んだ。
義務のように薬を飲み終えた俺は、そのまま立ち上がって手すりにもたれかかった。
「平和だな」
日差しは暖かく風も心地いい。寿命のことさせなければ、心が穏やかになる電気だった。
そうして屋上で適当に時間を潰している時、ふと思った。
「そういや春咲さんはどこに行ったんだろう?」
教室を出てから一度も見かけてなかった。廊下で春咲さんに似た人すら見かけてなかった。
「それより、あの噂は一体」
「なっ、何でここに人が」
一人で小さく呟いている中、突然背後から女の声が聞こえた。
この時間に屋上に来る人なんていないはずなのに。
俺はすぐに振り返った。
「…….えっ、春咲さん?」
そこには驚いたような表情をした春咲さんが立っていた。




