43話
いつもと変わらない風景。
俺は教室に座って窓の外を眺めながらため息をついた。
「もう春も終わっていくんだ」
気がづけばもう五月だ。あと二、三周間もすれば夏になるだろう。ってか、今も春にしてはかなり暑いから、予想より早く春が終わってしまうかもしれない。
「俺の最後の春ももうすぐ終わるんだな」
余命一年。いや、もう一年もないか。いずれにせよ、これが俺の人生で最後の春ってことは変わらない。そう考えると、自然とため息が溢れた。
正直、残りの寿命についてはあまり考えないようにしていtあ。でも「死」に関わることだから、考えたくなくても頭に浮かんでしまうのは仕方がなかった。
「おい、晴翔」
教室に一人浮いたように座っている俺に、雄太が手を振りながら近づいてきた。彼は前の席に座ってすぐ後ろを向いた。
「何そんなに考えてたんだ。彼女のこと?」
「いや、そんなんじゃないけど。してないとは言えないかも」
実は春咲さんのことも悩んでいた。どうすればいじめを止められるのか。どうすれば学校中に広がっている悪い噂を一気にひっくり返せるのか。昨夜すごく考えてみたけど、かなり難しい問題だった。
「お前、何かいい案ないか」
「なんの?」
「春咲さんを助けるいい方法」
「あ〜ないな」
雄太は何そんな当たり前なことを聞くんだ、と言わんばかりに答えた。
「期待した俺がバカだった」
やっぱり自分で考えた方が良さそう。
「あ、でも一つ思いついた」
「なに」
「大勢の前で、お前が春咲の彼氏だって印象づけるんだ」
「は?」
ちょっと理解が追いつかなかった。
「確実に噂を広めるなら、一人一人にコツコツ言うより、大勢の前で衝撃的なことを言った方が効果的だと思う。目撃者が多いほど噂に信憑性も増すからな。それに、お前が春咲の彼氏って十分インパクトあって興味を引く話題だから、できるだけ多くの人の前で発表すれば、多分一日もかからず学校中に広まると俺は思う。そしたら一段階成功じゃないかな」
「じゃその「大勢」をどうやって集めるんだ」
「それは…お前がなんとかしろよ」
雄太はさっと視線を逸らして口笛を吹いた。
やっぱりこいつに頼るんじゃなかった。
少し後悔し始めた。
「あ、それよりさ、昨日俺が雛に春咲のこと」
「あんたが高橋だよね?」
雄太が何か話している途中、別の声が割り込んできた。聞き慣れない声に俺は声がした方へ顔を向けた。見慣れないようで、見慣れた顔が目に入った。
石川か。なんでここに?
今の状況にちょっと頭についていかなかった。
石川は鋭い眼差しで俺を見下ろしながら言った。
「ちょっとついてきてもらっていいかな」
「ん?」
石川の声に、ますます状況がわからなくなった。




