42話
これ、一体どういうこと?
瞬間目を疑った。どうしてあの二人が一緒にいるのか、いくら考えても理解できなかった。
「なんであの二人が…」
「お、春咲さんじゃん。おはよう」
混乱している中、前に立っていた男子が手を振りながら近づいてきた。高橋以外に私に先に挨拶してくれる人は久しぶりで、少し緊張した。
でも、あの人は…。
昨日、高橋と一緒にいた人だ。確か名前は山田…雄太?だったっけ。
山田くんは私の隣に立って、前から知り合いだったみたいに親しく話しかけてきた。
「俺のこと覚えてる?」
私は黙って頷いた。すると、山田くんは満足げな笑みを浮かんだ。
「いつ来たんだ?」
「さ、さっき。それより、あの二人はなんで一緒にいるの?」
私は高橋の方を指差しながら尋ねた。山田くんはチラッと高橋の方を見て答えた。
「あ、あれ? 俺もよく知らない」
山田は肩をすくめた。
「朝、学校に来て高橋と話してたら、いきなり石川が高橋に用事があるって連れていっちゃった。それで、今あの状況になったわけ」
え? どういうこと?
さらに訳わからなくなった。石川が高橋に用事? なんで?
考えれば考えるほど、わからなくて混乱した。
いや、今はそれより
「早く高橋を助けないと」
「ん? なんで」
私の独り言に山田くんは首を傾げた。
「だって、高橋みたいに優しい人が石川に何かされたら大変だから」
石川が高橋に悪口を言うかもしれない。もしかしたら手を出すかもしれない。そんなの、全体に見たくなかった。だから早く高橋をあそこから連れ出したかった。
「どうすれば」
「ちょっと、お前今なんて言った?」
突然、山田くんが慌てたような顔で言った。
「高橋が優しいぃ? それどういう意味?」
「優しいじゃん。ちゃんと話も聞いてくれるし、心配もしてくれるし、私のこと信じてくれたんだ」
「…もしかして俺の知ってる高橋と春咲さんの知ってる高橋って別人か? 俺の知ってる晴翔は絶対そんなやつじゃないんだけど」
山田は本気で理解できないという顔をしていた。
「何言ってるのよ。それより早く高橋を助けないと」
「そんな必要はない」
山田はきっぱりと言った。
「晴翔は春咲さんが思ってるようなやつじゃない。むしろ、どこかイカれてるっていうか、正常じゃない。だから、そんなに心配しなくていいぞ」
一体どういうことなの、と問い返そうとした、その瞬間だった。いきなり中央の方から鋭い大きな声が響いた。聞き慣れた声だった。
この声は、石川の…
私は中央に目を向けた。石川が顔を真っ赤にして高橋を指さしながら何かを怒鳴っていた。あんな石川、初めて見た。いつも余裕たっぶりで、静かに相手を追い詰めるような怖い人なのに、あんなふうに取り乱している姿は見たことがなかった。
高橋は? 高橋は大丈夫?
私は高橋に視線を移した。高橋は表情ひとつ変えず、何事もないかのように、ただ黙って石川を見つめているだけだった。
平気なの…?
私だったら怖くて震えていたと思う。きっと涙も出るはずだった。だからこそ、あんなに落ち着いてそこにたっている高橋に驚いた。
やがて石川は何かを大声で言い捨てて、舌打ちでもしそうな勢いでその場を去っていった。状況が終わったとわかると、周囲の生徒たちも徐々に散っていった。
一体何があったんだ。
まだ状況を飲み込めず、私はその場にぼんやり立ち尽くしていた。その時、高橋と目が合ってしまった。
高橋は私を見て、少し笑いながら手を振りこちらへ歩いてきた。
「春咲さん、いつ来たんだ」
「高橋」
私は高橋をチラリと見ながら言った。
「一体何があったのよ。どういsて高橋が石川と」
「あ、それがさ…」
高橋は少し困ったような顔をした。
「実は今朝、石川が来て…」




