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39話

「高橋…」


 彼の顔をまともに見ることができなかった。

 どうしてここに。私を止めようとして…お願いだから、やめて。

 心の底からそう願った。しかし高橋は私に一歩ずつ近づいていた。


「そこは危ないから、早くこっちに」

「いやだ!」


 思わず大声を上げてしまった。


「もう限界なの。全部いやだ!」


 感情が高ぶって目から涙がこぼれ落ちた。


「私がいじめられる姿、高橋だけは見られたくなかった。普通の女の子に見られたかったの。だから嘘までついて隠してきたのに」

「……」

「もう耐えられない。私についての噂も人々の視線も友達からのいじめも、もう無理だ。もう楽になりたい。だから私を…止めないで」


 そう言って私は再び虚空に顔を向けた。

 高橋きっと私に失望しただろう。私のことが嫌いになったに違いない。

 そう思うと、さらに死にたくなった。私は目を閉じて何もにあ虚空へと足を踏み出した。足を支えるものは何もなくてそのまま前へ体が傾いた。

 このまま落ちるのかな。やっと楽になれるーー


「死ぬなっ!」


 そのsyん間だった。後ろから何かに強く引き戻された。驚いて目を開けると、腕が目に入ってきた。高橋の腕だった。高橋が落ちないように後ろから私を抱きしめていたのだ。

 しかし私にとってそれは邪魔だった。私は必死にもがいて、高橋が私から手を離すようにした。


「離してぇ! もう生きたくないの」

「俺が君の味方になる」


 高橋の言葉に、頭を一発殴られたようだった。

 味方になる?

 聞き間違いだと思った。だって味方になるっていうのは、私と関わるっていう意味だったから。この学校中にそれを望む人なんて一人もいないはずなのに。

 頭がぼーっとしている中、高橋は言葉を継いだ。


「俺と付き合おう」

「いっ、いきなりどういう」

「俺が君の彼氏になる。俺が君の味方になるから」


 いきなり付き合うなんて、訳がわからなかった。一体何を言ってるのか、全く理解できなかった。

 そう混乱する中、高橋が続けて言った。

「だから……死なないで」


 さっきと違い、高橋の声はかすかに震えていた。彼の表情は必死で、本気で私が死なないことを望んでいるのが伝わってきた。だからこそ、余計に混乱した。

 私がいじめられている姿を見たら、きっと距離を置くと思っていた。避けられると思っていた。なのに、そんなふうに言ってくれるなんて。思いもよらなかった。

 私があまりにも悲観的に考えすぎてたのかもしれない。あんな顔で生きて欲しいと言ってくれる人がいるのに。

 私は抵抗をやめ、おとなしく高橋に尋ねた。


「どういうこと、なの?」

「とりあえずそこは危ないから、こっちに来て」


 高橋の言葉に従って私は手すりを超えて彼のそばに立った。そして彼に尋ねた。


「付き合うってどういう…高橋!」


 その瞬間、高橋が突然ふらついて倒れそうになった。私は慌てて彼を支えた。

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